
【ミカタをつくる広報の力学】#61 逆張りのPRを考える
最近「逆張り」のPRを目にする機会があったので、今回は「逆張りのPR」について書こうと思います。
世の中の流れと逆の主張でPRするので、反感を買うことも当然ありますが、敵のいない一人勝ちをつくれる有効手段でもあります。
※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。
世の動きに逆らって目立つ
まずは「逆張り」の説明から。
「逆張り」というのは、株式などの投資において使われる言葉で、「相場の下落局面で買って上昇局面で売る」手法のことです。
つまり、多くの人が「売り」に走る下落局面では「買い」、逆に「買い」に走る上昇局面では「売り」を行う。相場全体の流れに逆らった投資手法を指して「逆張り」と言います。
みんなが同じ方向を向いているときに、一人だけ逆の方向を向いて自己主張しているわけなので、悪く言えば「あまのじゃく」。組織などの仲間内で、空気を読まずに逆張りをやると、当然ながら嫌われます。
ですが、記事露出を狙うライバルが多いPRの世界では、逆張りは自分だけが目立つ有効手段。言い方を変えれば、ブルーオーシャン戦略に似ていると言えるかもしれません。
次は、PRでの逆張りを考えていきましょう。
PRにおける逆張りの事例
ここ最近、原油高や原料高によって、食品を中心とした値上げのニュースが目白押しです。
そんな中、逆張りの値下げを打ち出して、多数の記事になった焼き肉店がありました。事業の是非はともかく、連日の流される値上げ報道の中、かなり目立ったのではないでしょうか。
また、昨年の年末から今年にかけてファストフード業界で起きた「ポテト不足」。大手ハンバーガーチェーンはフライドポテトのM・Lサイズの販売を休止。
物流の海路で水害が起き、原料となる加工ポテトの輸入が困難になって起きた現象でしたが、そのタイミングで逆張りキャンペーンを打ったハンバーガーチェーンがありました。
「ポテトあります!」
ポテトロスに陥った人々を救うべく、ポテト増量キャンペーンを実施して大きな話題となりました。
ポイントは、その企業のポテトは輸入品ではなく、北海道のポテトを使用していたこと。国内産なので物流障害も無く、さらに日本の農産物をアピールする機会にもなったのです。
もう一つ別な例として、バレンタインに「義理チョコをやめよう」という広告を出したチョコレート会社がありました。
多数派か少数派かは分かりませんが、「バレンタインデーは嫌いだ」という女性の声に耳を傾けた結果だそうです。
この広告も、賛否両論はありましたが、大きな話題となりました。
PRにおける逆張りは、大きな潮流の中に隠れた「小さな声を聞く」活動なのかもしれません。
「ネガティブの逆」が勝ちパターン
上記の例からも分かるように、「多くの企業が従っている流れ」に異議を唱えることが逆張りになります。
さらに言うと、この「従っている流れ」というのは、「社会を包んでいるネガティブな空気」でもあります。
ネガティブな空気の要因となっている、値上げや食品不足、仕方なく続けているかもしれない慣習など、不都合な事象の打開こそが、逆張りの勝ちパターンといえるでしょう。
PRはタイミングが重要なので、不都合な事象が起きたときに、即座に対処する必要があります。先述のポテト増量キャンペーンは、ポテトの販売休止が話題となった絶妙なタイミングで実施されました。
バレンタインの例のように、前もって計画を立てることが可能な事象もあります。今年でいうと、しばらく円安が続きそうなので、そのネガティブな空気を打破する企画であれば注目されるでしょう。
同調圧力の中で一人声を上げるのは勇気のいることかもしれませんが、逆にいえば、ライバルのいない勝負になりますので、試してみる価値はあると思います。
おわりに
多勢に対して異議を唱える逆張りは、一人だけ目立つため炎上も頻発します。
ですが、競合同士で足を引っ張り合うレッドオーシャンでの消耗戦よりも、敵のいないブルーオーシャンを攻めていける逆張り戦略の方が、今の時代には向いているのかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。