【ミカタをつくる広報の力学】 #54 記念日は「何をする日か」をPR
前回は記念日の仕組みについて書きましたが、今回は記念日をPRする方法について書きたいと思います。
記念日は単に日付をお知らせしても意味が無いので、「何をする日か」のインフルエンスが必要。PRにおいて普及していく方法についても書いていきます。
※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。
記念日は行動を促すコンテンツ
前回のコラムで、「記念日は行動変容のトリガーになる」という趣旨のことを書きました。
つまり、重要なのは「記念日に何をするか」ということ。
土用の丑の日なら「鰻を食べる日」、バレンタインデーなら「チョコレートを贈る日」というように、ほとんどの記念日には消費活動がセットになっていますが、これはもちろん、丑の日は鰻屋が、バレンタインはチョコレートメーカーが仕掛けたからです。
土用の丑の日に鰻を食べるのは、前回ご説明したような説得力のある科学的根拠が存在するのですが、バレンタインデーに関しては、チョコレートとは全く関係ない逸話から設定されています。
にもかかわらず、どちらも全国的に定着しているのは、行動に意味付けがされているから。科学的根拠でもエモーショナルなストーリーでも、行動する理由に共感できれば良いわけです。
大切なのは、「何をする日か」がイメージできること。
そのイメージ喚起のために、記念日の広告には行動につながる画像が使用されています。
丑の日の広告ビジュアルが、生の鰻ではなく「かば焼き」の画像なのは「鰻を食べる日」だからです。
同様にバレンタインデーの広告も、ほとんどの場合「ハートとリボン」が入っていますよね。この2つのアイテムで「好きな人に贈り物をする日」であることが伝えられるでしょう。
よく聞く「ジューンブライド」も、雨期で低迷する6月の売り上げを何とかしようと、ホテルが仕掛けた広告戦略。
6月に雨の少ないヨーロッパの慣習だったものを輸入したので根拠としては真逆なのですが、「6月の花嫁」というフレーズを使って、時期と行動を一致させた好例です。
いずれも完全な企業側の都合でつくられていますが、記念日と行動を関連付けてコンテンツとしてアピールすることで、「何をする日か」が明確になれば、後は定着させるだけです。
では、記念日を定着させるには、どうしたら良いのでしょうか。
記念日の定着に必要なのは「諦めないこと」
つくった記念日をどうやって定着させたら良いのか。
その方法は、私が知る限りひとつしかありません。
諦めずに、何度も言い続けることです。
記念日というからには定期的に迎えるはずなので、1回目で定着することはまずありません。何回か続けることで「毎年あるんだな」という認識が生まれ、記念日として認知されていきます。
今や国民的行事になったハロウィンも、日本で最初にハロウィンパレードが行われたのは1983年の原宿。
ハロウィン関連商品の発売となると1970年が最初と言われています。
平賀源内が「土用の丑の日」を唱えた頃は、日本で最初の広告なので他にライバルがいなかったので、すぐに認識されました。
現代ではライバルがたくさんいるので、大きな声で、出来るだけ多くの人に、しつこいくらいに何度も言い続ける必要があります。
この手法は主に広告で使われるもので、広告を何度も表示させて繰り返し訴求することで、広告の「フリークエンシー(接触回数)」を上げてブランドの認知を高める手法です。
広告ではフリークエンシーの他にもうひとつ「リーチ(接触人数)」というものがあって、その2つを掛けあわせて、「どのくらいの人にどのくらいの頻度で訴求できたか」を測ります。
広告手法を用いて何度も訴求し、購買行動を起こさせるので「記念日マーケティング」ということになるのだと思いますが、広報PRでは、その手法はちょっと使いにくいですよね。
もちろんPRで広告を使うこともありますが、基本的にはメディアや第三者の口から言い続けてもらいたい。
そのために何するか。
それが参加型イベントです。
記念日のPRには参加型イベント
第三者の口を借りて、出来るだけ多くの人に、何度も言い続けてもらう。
そのためにできることは何があるでしょうか。
ひとつは、記念日に行うべき行動を促すことです。
バレンタインで例えるなら「チョコを贈ろう」、ハロウィンなら「仮装しよう」と呼びかけることが該当します。
広告でも告知をすると思いますが、広報の立場としてはオウンドメディアやSNSで訴求することになるでしょう。
ならば、記念日行動に向けた写真をSNSに投稿してもらうような、参加型のウェブイベントを仕掛けるのが常道でしょうか。
ここで大事なのは、SNSでの情報拡散よりも、記念日の当事者として一人でも多くの人に参加してもらうことです。記念日は、一人ひとりの当事者が支えるものですので、参加者の共感がマストになります。
参加して共感できたら翌年も参加してくれると思いますし、情報拡散してくれる可能性もあります。
もうひとつは、メディアの取材誘致です。
最重要なのは当事者ですが、それだけでは普及が望めないので、メディアによる情報拡散も狙いたいところ。ハロウィンパレードのような画になるイベントをリアルで開催できれば、メディアへの訴求力もあるかと思います。
毎年同じ時期に同じイベントや祭りが開催されるならば、メディア側としても計画的な取材が可能になって好都合ですが、逆に毎年同じような画の繰り返しにならないように工夫する必要も出てくるでしょう。
ウェブイベントもリアルイベントも、当事者が参加することで規模が大きくなっていきます。参加者はそのムーブメントに共感を覚え、メディアはその勢いや規模にニュース性を感じます。
こうした活動を毎年地道に続けることで、記念日の定着を見ることができるのではないでしょうか。
イベントの開催については、またいずれ書きたいと思います。
おわりに
今回は、記念日を行動のためのコンテンツと捉えてPRする方法について書きました。
書いていて気付きましたが、バレンタインはチョコを消費しているのではなく、「チョコを贈る」という行動を消費している。
つまり「コト消費」のためにあるコンテンツなんですね。
ということは、平賀源内は江戸時代ですでに、鰻というモノの消費を丑の日という「コト消費」に変換させていたことになります。
200年以上前にコト消費に気付いていたなんて、尊敬以外にありませんね(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。
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