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【ミカタをつくる広報の力学】 #33 嘘とニュースとPRの話

今回はエイプリルフールということで、嘘とニュースとPRの関係について書きたいと思います。
フェイクニュースについて分析した、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究も引用して、リツイートの心理と拡散のメカニズムも紹介します。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


フェイクニュースの拡散は6倍速

2018年、米国の科学誌「サイエンス」には、ソルーシュ・ボーソーイ氏率いるMITメディアラボの研究が発表されました。

その研究とは、フェイクニュースの拡散メカニズム

2006年~2017年に投稿された英文のツイートから抽出した2448件の「噂」について分析した結果、リアルニュースの拡散は1000人程度で止まるところ、フェイクニュースではそれ以降も拡散を続け、上位1%においては10万人の規模に達するとのこと。

さらに拡散が1500人に達する時間を計測したところ、リアルニュースはフェイクニュースの6倍の時間を要することが判明しました。

逆にいえば、嘘は事実の6倍の速さで拡散されるのです。


拡散のポイントは「新奇性」と分析

上記の研究では「なぜリツイートするのか」という、感情的な原因に着目。
ツイートに対する感情を、「怒り/恐怖/期待/信頼/驚き/悲しみ/喜び/嫌悪」という8つに分類して、フェイクニュースとリアルニュースにおける分布を比較をしました。

結果、フェイクニュースでは「恐怖、驚き、嫌悪」などの反応が強く出たのに対し、リアルニュースでは「期待、信頼、悲しみ、喜び」などの反応が目立ちました。

この結果に対して研究チームでは、原因がフェイクニュースの「未知なるものへの新奇性」にあると考えて、新奇なものへの好奇心や自分だけが情報を知っているという優位性が拡散の要因になると推測したそうです。

私の個人的見解としては、リアルニュースには評価的な感情が目立つのに対し、フェイクニュースに表れた感情はエキセントリックなものが多く、フェイクの過激さを物語っている気がしました。

事実との乖離が大きく、大勢に迷惑がかかる嘘ほど、よく拡散されるのではないかと。


コロナ禍とエイプリルフール

コロナ禍においても、「お湯を飲むとウイルスが死滅する」などの多くの「噂」が流布されました。
総務省の調べでは、「こまめに水を飲む」を約3割、「納豆を食べる」を約1割の人が、効果があると信じていたそうです。

新型コロナウイルスというもの自体が「恐怖」や「嫌悪」の対象で、デフォルトの心理状態が非日常になる有事においては、フェイクか否かといったニュースの内容にはあまり関係なく、すべてが拡散の対象になってしまうのかもしれません。

そうした理由からか、2020年はエイプリルフールネタを自粛する企業が多かったようですが、今年は盛り返しているようなので、少し楽しい記事が増えるかもしれません。

基本的に、PRジョークのマナーとして「人を不幸にしない」というのは大原則。
「明らかに嘘とわかるネタ」で笑いをとるものや、【エイプリルフール】とはっきり記載するものが多いようです。

PRは常に時代性が反映されるものなので、有事のPRには学ぶところがたくさんありますよ。


おわりに

今回は、フェイクニュースに関する研究とエイプリルフールについて書きました。少し堅苦しい内容になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

まだまだコロナ禍で気分は沈みがちですが、楽しいPRネタを発信していけたら良いですよね。今年のエイプリルフールには間に合いませんが、来年の参考にしていただければと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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