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【ミカタをつくる広報の力学】 #43 経営のミカタになる広報

久しぶりの「社内編」。株主総会真っ盛りなので、経営のミカタになる話です。先週発表されたコーポレートガバナンス・コードESGに関連して、経営と広報の連携について書こうと思います。
ESGは上場企業以外でも関係あるので、少々堅い内容ですが読んでみてください。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


コーポレートガバナンス・コードとESG

「コーポレートガバナンス・コード」というのは、東京証券取引所など株式市場の株取引において、企業の評価を示す指標として、「企業側が気をつけるべき項目」を定めたものです。

似たものに「スチュワードシップ・コード」というものがありますが、こちらは「機関投資家が気をつけるべき項目」で、「コーポレートガバナンス・コード」とは両輪の関係になっています。

機関投資家は出資者に損をさせないように、スチュワードシップ・コードを指標として投資活動を行い、企業もまた自社評価を下げないように、コーポレートガバナンス・コードを指標として経営を行うことが推奨されています。

ザックリ解説はこのくらいにして、ここからが本題です。

昨年(2020年)の3月に金融庁から改訂発表された日本版スチュワードシップ・コードを受けて、先週6月11日に証券取引所(日本取引所グループ)からコーポレートガバナンス・コードの改訂版が発表されました。

今回の改訂で最も重要視されたのが「ESG」です。

「ESG」は、「Environment」(環境)、「Social」(社会)、「Governance」(企業統治)の頭文字をとったもので、企業の長期的な成長を考える視点として投資家の関心を集め、「ESG投資」とも呼ばれています。

近年の「SDGs」や「サステナビリティ」の影響が、投資活動にまで及んでいるということの証明なので、企業のIR部門や広報部門は、「SDGsレポート」「サステナビリティレポート」でPRして評価を上げます。

こう書くと上場企業に限った話に見えるかもしれませんが、未上場企業も他人事ではありません。ESG重視型のベンチャーキャピタルファンドも登場していますので要チェックです。


企業の評価を広報がつくる

かつての企業経営は、商品が売れて事業が順調であれば増益につながり、配当が増えて投資も集めやすい。つまり、企業が儲かってさえいれば、投資家は出資してくれるという時代でした。

ところが最近の経営は、そう一筋縄ではいかないようになってきています。

いくら利益を出していても、従業員に過重労働を強いていたり、協力会社に無理な要請をしていると、すぐにコンプライアンス違反ということでガバナンスを問題視されてしまいます。

こうした「誰かに負荷を強いる商品づくり」は消費者からも嫌われる世の中になりました。

「負荷を減らす」という考え方は、従業員だけでなく地球環境に対しても同様。低炭素社会や循環型社会の実現を目指して開発をすすめる企業が増加しています。

またダイバーシティ(多様性)の観点から、ジェンダーレスユニバーサルを意識した開発も注目を集めています。

このような「SDGsに対して努力している企業」が、文字通り「株を上げている」状態です。

商品やサービスだけでなく、企業全体として、世の中にどのような貢献ができるのか。

パーパスやビジョンといった「思想」、達成に向けて実施している「活動」は、広報で伝えていくしかありません。
その内容が伝わったかどうかで、企業の評価(レピュテーション)が決定し、評価がやがて企業資産となります。

いわば経営そのもの。
広報部門と経営層が直結していなくてはならない理由がここにあります。

だからプレスリリースも、企業と経営者の名前で発表されますよね。


経営と広報は密に連携を

上記のように、これからの経営で重要なのは、社会からのレピュテーションを意識するということ。

株主、従業員、協力会社、得意先企業、消費者、リクルーター、リクルーターの両親、などなど。すべての人に評価される企業を目指した経営が大切になってきています。

そのためには、経営部門と広報部門は密に連携しているのが理想的で、「広報・PRの4つの役割」(ハロルド・バーソンが提唱)でも、経営者に対して社会的な視点からサポートすることを勧めています。

ソーシャルイシュー(社会課題)に基づいた商品開発や制度改革も、着手するほど社会の評価も高くなるので、情報面でのサポートだけでなく、広報部門から経営層への提案も積極的にした方が良いのではないでしょうか。

社会課題や広報活動をあまり重視していない経営層の場合には、最初に書いたコーポレートガバナンス・コードやESG投資の説明をしてみてください。今の時代は、利益よりもサステナビリティが企業評価を左右する、と。

それでも聞いてくれない経営者であれば、こちらが先に財務諸表を理解してみるのも良いかもしれません。特にバランスシート(貸借対照表)には、企業の資産状況が記載されており、「のれん」などの目に見えない資産まで計上されます。

広報活動は成果が分かりにくいのでコストと思われがちですが、企業資産形成のための投資であることを理解してもらうためには必要な知識なのだと思います。「ビジネスにおいては財務諸表の知識があると有利」というのが、私の経験則です。

株主総会の多くがそろそろピークを迎える時期なので、各社の動画を見てみるのも参考になりそうですね。


おわりに

今回は、ガバナンスとかコンプライアンスとか財務諸表とか、かなり堅い内容になってしまいました。「経営に絡んだ話は堅くなりがち」というのは「あるある」です(笑)

ESGに資する広報活動の具体策については、機会を改めて書くことにします。「経営視点の広報」や「広報視点の経営」についてもいずれ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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