プロダクト開発のディスカバリーの属人化を解消した話
社内のプロダクト開発のチーム内で、施策の立案や調査などディスカバリープロセスの改善に取り組みました。同じような課題に悩むチームの参考になったら嬉しいです。
この記事は PM Advent Calendar 2024 の18日目の記事です。
これまでの課題
既存プロダクトで新しい機能を検討する際や、既存機能の改善を行う際、施策の目的の整理やそれに先立つ調査、解決方法のアイディア出しなどに取り組みます。これらがこれまで属人的に行われていて、標準的なプロセスがありませんでした。
その結果、以下のような課題がありました。
特定のメンバーに調査や意思決定の負担が偏る
担当者によって調査結果の質や粒度が異なり他メンバーが活用しずらい
調査結果がうまく共有されず、チーム内で認識のズレが生じる
このような課題のもと、チームでプロセスの改善に取り組みました。
プロダクトバックログの改善
改善にあたって、これまでスプレッドシートで管理していたプロダクトバックログをNotionに移行しました。Notionのテンプレートを用いて、施策の目的から開発タスクのリンクまでの一連の情報を1ページに集約し、意思決定の過程を追えるようにしています。
Notionテンプレートの構成はこんな感じです。
- アイディア
- 価値仮説
- ユーザーシナリオ
- 調査
- 定量調査
- 定性調査
- 他社調査
- 要求定義
- 要求事項
- プロトタイプ
- モニタリング項目
- 要件定義
- 受け入れ条件
- 概算見積もり
- PR・マーケティング計画
- 用語
- デザイン・開発
- 子タスク
プロダクトバックログの各アイテムには子タスクを作成し、アイディアの記入や調査、要求定義の作成など、複数人で分担しながら施策の立案を進めます。アイディアの検討や調査の過程が見えるようになったことで、デザイナーからは納得感を持って施策に取り組めるようになったと反応がありました。また、検討中の施策をチーム外のメンバーに共有する際にも、このページのURLを共有するだけで完結します。
他社調査の標準化
施策の検討をする際に、他社の事例を参考にすることがあります。
これまでは、デザイナーや施策起案者がそれぞれのやり方で調査を進めており、以下のような課題がありました。
調査結果が個人に偏り、チーム全体で活用されない
調査結果の使い方について、チーム内で認識のズレが起きやすい
過去の調査結果が散在し、再利用されない
これらを解消するため、週1回の振り返りMTGを実施し、調査手順や成果、改善点をチームで共有する仕組みを導入しました。
調査着手前の計画書作成
調査前に「背景・目的・対象・項目・活用イメージ」を明確化した調査計画書を作成しタスクのテンプレートに追加しました。調査の着手前に共有することで認識齟齬や過剰調査を防ぎます。
調査計画書の作成については以下の記事や書籍が参考になりました。
調査用のFigmaプロジェクトとテンプレートの作成
調査内容をFigma上のプロジェクトに一元化し、テンプレートを活用することで、各メンバーの調査結果を簡単に参照できるようにしました。
ユーザー調査の改善
ユーザーインタビューやアンケートなどのユーザー調査も、これまで属人的に行われていたのが課題でした。ユーザー調査をプロセスの一部として取り入れるために、はじめに読書会を実施しました。
『はじめてのUXリサーチ』をデザイナー全員で読み、ワークショップ形式で気になったポイントや実務での活用について話し合いました。
読書会のアジェンダはこんな感じです
感想をシェア(15分)
導入すると効果がありそうな点(20分)
課題になりそうな点(20分)
読書会の感想や改善点を振り返り(5分)
チームで新しいことに取り組む際は、共通の本を読むことから始めるのがお勧めです。本を元に共通言語ができるため、その後のコミュニケーションが円滑になります。
実際のリサーチにあたってはすでに経験のある2名が主導し調査の計画やドキュメントの作成、リクルーティングなどを進めました。手順は以下の通りです。
調査計画書の作成:事前に調査の背景・目的・対象・手法を明確化
アンケートの実施:リクルーティングを兼ねて既存ユーザーを対象にアンケートを実施
インタビューの準備:ドキュメントや当日の役割分担、ツールなどの準備
インタビューの実施:オンラインでの半構造化インタビューを実施
インタビュー後の分析:上位下位関係分析でユーザーのニーズと行動を構造化
分析結果の共有と活用:チーム内で分析結果を共有しペルソナの言語化や施策のアイディアに活用
ユーザー調査でも事前に調査計画書を作成。調査の目的や活用方法を明らかにすることで、インタビュー項目を無駄なく設計することができます。主導する2名の他に、もう2名はインタビューを実施する際の議事録と、インタビュー後の分析を分担します。 はじめにワークショップ形式で全員で分析を行ったところ、その後の分担でもスムーズに分析を行うことができました。
分析手法としては上位下位関係分析を採用しました。KA法と比較して、ユーザーニーズを構造化する手法がかっちりしているので、初心者でも活用しやすいと感じます。
リサーチ後の分析でつまずきがちなポイントを踏まえた以下の記事がとっても参考になりました。
改善から得られた成果
属人化していた調査プロセスを整えることで、調査タスクの分担が可能になり、効率化が図れました。また、調査プロセスが明確になったことで、その後の要求定義やデザインへの反映も確実に進められるようになりました。メンバーにとっては調査や分析スキルの向上に繋がりました。
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