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その7【いざ、本作業】

 さて、九州に渡って何をしたかというと、大体は同じことを繰り返していたんです。
 複数の作業を同時進行させていたんです。
 なので、やった作業を一回説明すると、その後は、それを滞在している間繰り返しましたという感じになる。

 活動の拠点は基本的に佐賀市に。
 本当は柳川市にしかったけれど、快活クラブがなかったんです世、柳川市には。佐賀市にはありました。食料持ち込み可、シャワー無料、フラット個室あり。本当に助かりました。
 きっと、私だけではなくて。他にも大勢の方が助かったはずです。 職人さんとか、営業さんみたいな方、何人も見ましたもの。
 カラオケとか、ダーツとかの部分での営業には?もあったりしましたが、それでも助かったのは事実で巣。感謝。

 本当はね、真っ先に五島列島へ渡るつもりだったんです。
 渡ってしまえば、件の某所が何処かも目星がつくし、一気に片を付けてしまえると思ったんですよ。
 まぁ、こちら側も小さくない損傷を受けるでしょうが、それでもね何とかなるだろうと踏んでいたんです。
 まあ、「ソレ」のことを侮っていたといたんですよね。
 相手は色々と枷はめられているし、力も限りなく削がれているし、身動きも出来ないし、逃げ隠れも出来ない。だから、何とかなるだろうとね。

 でもね、本格的な作業に入って、真っ先に佐世保に出向いて、丘の上から五島列島を望む形で海を眺めたとき、間違いなく、足がすくみました。反射的にね。
「間違いなく、死ぬな」
 そう呟けば、後ろから「死ぬわね」と麒麟さんの声。

 麒麟さん……諏訪の神さんから預かって参った今回の指南役の方です。別に、俗に言う麒麟の形はしていません。形すらないと思います。
 龍と分類するには神々し過ぎる方でしたので、とりあえず麒麟とさせて頂きました。旅の合間は、コードネーム的に「麒麟さん」で通しましたので、ここでもその呼び名で行きます。

 佐賀平野から西側も、神域階層では紅蓮の炎の海でした。でも、耐えられるレベルでした。私の活動が妨げられるレベルではありませんでした。
 ですが、丘から眺めた海の上は爆炎のレベルでした。その先、五島列島に近付いていくと、もう暴爆の炎が高々とあがっているんです。 あー、これは神霊の域に近い者ほど辛くなるパターンの奴だな、と一目瞭然でした。
 まぁ、正確にはそういう感じのデータと圧を受け取ったというべきでしょうか。私には「そういうものを見て取る」能力はありませんから。例えるならば、光学式望遠鏡と電波式望遠鏡との違いみたいなもの出、私は後者です。
 きっと、人間をはじめとした物体に依存するタイプの普通の生き物には影響がないのでしょうが、体積と質量を持たないタイプには大変に辛い環境です。当然ながら、神域階層に片足を引きずり込まれてしまった私にも辛い。

「その身で感じないと納得しないでしょうからね、黙っていましたが。最初から、彼地に渡らせるつもりはなかったですよ。
 これから進めるのは兵糧責めです」
 と麒麟さんが仰りつつ、私の体内から圧縮状態の龍さんやら匠さんたちを引っ張り出して、解凍に勤しみ始めます。
 龍さんは沖合にまで進むと壁を立ち上げ始めました。
 龍さんの築いた壁は堤防となり、九州側から怨嗟の波が行くことを防ぎ、五島列島側からの紅蓮の波も防ぐ仕様です。そう長く……何十年もは保たないとのこですが、それでも今回の事態に十分対応が可能なのでしょう。
 龍さんはそのまま海上に滞留し、五島列島を囲むように強固で広大な壁を築き、そして維持続けてくれています。
 匠さんは丘の上に櫓状の砦を築き上げています。
 匠さんたちは、この後は私とともに移動し、要所要所で砦を築いて行きました。こちらは、砦と砦とを結ぶ形で結界を作る作業をしてくれていました。九州の西海岸線に沿って、そう北の端は唐津から、玄海、松浦、平戸、佐世保、西海、野母崎、島原と続いて、南端は天草の牛深に至りました。

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