その9【浄化・霧散化の合間に……私の酷使は続く】
休息日に休めたかというと、そういうわけではない。
根切りと、塔くずしの実行をさせられた。
根切りは、布石と布石とのつながりを断ち切ること。それと、紅蓮の火海を分断してしまうことである。
布石同士はつながりを持ち続けることで、効果を維持する。
なので、そのつながりを何らかの方法で断ち切ってしまえば、布石の効果は薄れてしまう。
もちろん、布石自体を取り除くことが出来るのならばベストである。
しかし狡猾な「ソレ」が簡単に除去できる形で布石を展開する筈はない。
費用対効果を考えたときには、布石の展開が予想され場所を虱潰しに、私が圧縮・粉砕して回る方が手っ取り早いのである。
なので、休息日と、浄化・霧散化の作業が終わった後は、九州をほぼ隈無く縦横に走り抜けることになった。
手始めに、柳川市・佐賀市を起点にして、各方向へ放射状に走破した。
その後は、レイライン(霊脈)に沿って根切りを行い、遠くは阿蘇から幣立神宮を経て、椎葉、えびの、国分(鹿児島県)へと一気に走り抜ける羽目になった。
反転して、別府から日田、九重、阿蘇外輪山巡り、熊本、天草への走破を命じられた時もあった。
そんな感じで、つごう一週間ほどかけて根切り作業行った。
この布石のつながりの断ち切りと同時に行われたのが、炎の海を分断していくという作業だった。
龍さんによって、西方海上に防火堤が築かれ、匠さんたちの活躍により結界壁が構築され、そのおかげで五島列島某所からの紅蓮の炎の供給が止まったことにより、火海の鎮火作業の目処が立った。
その手始めとして、私が行ったのが炎を圧縮・粉砕して回ることである。もちろん、私の力量では火海を面で鎮火させることなど無理である。だが、線状に鎮火することで、ひとつひとつの火海の面積を減らし、後々の本格的な鎮火作業を行い易くしていく。
紅蓮の火海という表現をしてきたが、実体として灼熱の様なモノという方が正しいかもしれない。なので、鎮火作業は地道な冷却をもって行うことになる。
火海を分断することで、一つ一つの鎮火作業に必要な冷却量は少なくてすむ。今後、冷却を行うために叩き起こされる(現段階では既に叩き起こされている筈だが)龍さんたちの負担が小さくなる。
これらとは別途に行われたのが、塔崩しである。
「ソレ」が東方に勢力を伸ばしていく足がかりとして築いていた、塔状の砦を崩壊させる作業である。
崩しの作業は私がしたわけではない。件の麒麟さんである。私は現地まで麒麟さんを運んだだけである。
塔は、佐賀市近郊の山の頂に一つ、飯塚近郊に二つ、岩国に一つとラインで結ばれる形で存在していた。
この砦のせいで、往路では山口から福岡へ渡るという一番ポピュラーなルートを採用できなかった訳です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?