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アイシングすべき場合とそうでない場合のおおまかな判断の仕方
「アイシングすべき場合とそうでない場合のおおまかな判断の仕方が知りたいです」というご質問、ありがとうございます。
怪我後のアイシングの基本ルール
アイシングは、捻挫や打撲などの応急処置に使われてきましたが、最近ではその使い方が見直されています。
以下は、アイシングを使うべきタイミングと避けるべきタイミングのポイントです。
アイシングが適している場合(怪我直後の24〜48時間)
怪我直後から48時間は「急性期」と呼ばれ、アイシングが効果的です。冷やすことで血管が収縮し、内出血や腫れを抑えられます。
15〜20分冷やして10分休む、を繰り返す方法が一般的です。凍傷を防ぐため、タオルを間に挟むことが大切です。
ピッチング後のアイシングはおすすめしない理由
ピッチング後は、肩や肘の筋肉や関節が疲労しており、体が自然に回復しようとする「修復モード」に入ります。
この時にアイシングをしてしまうと、血流が制限され、体が疲労を回復するプロセスを妨げてしまう可能性があります。
- ピッチング後には、血流を保つことが筋肉の回復に役立ちます。
温めることで血流を促進し、疲労物質を流しやすくする方が、自然な回復をサポートできます。
ピッチング後には、アイシングではなく、肩や肘を温めることで筋肉のリラックスを促進し、アームケアエクササイズや軽いストレッチで柔軟性を維持することが推奨されます。
これにより、回復を早めるだけでなく、次の登板への準備も整えやすくなります。
アイシングを避けるべき場合(48時間以降)
48時間を過ぎると「亜急性期」に入り、この時期にアイシングを続けると、自然な回復を遅らせることがあります。
炎症は体が損傷を治すための反応であり、冷やしすぎると回復が遅れることがあります。
この時期からは温めて血流を良くし、軽い運動で体を動かすことが推奨されます。
「PEACE & LOVE」プロトコルとは?
「PEACE & LOVE」プロトコルは、怪我からの回復をサポートする新しいアプローチです。
従来の「RICE(安静、冷却、圧迫、挙上)」に比べ、体の自然治癒力を活かすことを目的としています。
PEACE(怪我直後の対応)
P (Protect - 保護): 怪我した部分を守り、さらなる損傷を防ぎます。
完全に安静にせず、動かせる範囲で少しずつ動かすことも大切です。E (Elevate - 挙上): 患部を心臓より高い位置に上げ、腫れを軽減します。
A (Avoid anti-inflammatories - 抗炎症薬を避ける): 初期の炎症反応は体が治るために必要なプロセスなので、薬で抑えすぎないようにします。
C (Compress - 圧迫): 包帯やテーピングで患部を優しく圧迫し、腫れを抑えます。
E (Educate - 教育): 怪我の回復方法を正しく学び、無理な治療を避けます。
LOVE(回復期の対応)
L (Load - 負荷): 48時間以降は、痛みが出ない範囲で徐々に動かし、筋力を維持します。
O (Optimism - 前向きな気持ち): 前向きな気持ちが回復を早めると言われています。
V (Vascularisation - 血流促進): 軽い運動をして血流を良くし、体に必要な栄養を届けます。
E (Exercise - 運動): リハビリとしての運動で、可動域を回復させ、再発を防ぎます。
アイシングのまとめ
アイシングは、怪我直後の腫れや痛みを抑えるために有効ですが、48時間を過ぎたら温めたり軽い運動に切り替えましょう。
「PEACE & LOVE」プロトコルは、初期のアイシングを短期間に留め、その後は自然な回復力をサポートするアプローチを取り入れます。
日本では「とりあえずアイシング」という対応が一般的ですが、怪我の状態に応じて柔軟に対応することが重要です。
最終的には怪我の重症度や回復状況に応じて医師やアスレティックトレーナーの指導を仰ぐことが、最も安全で確実な対応となります。
ご参考になれば幸いです!