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9割が知らない!? データガバナンスの新常識(連載②)

はじめに

みなさんこんにちは!
データガバナンスブログ連載第二弾になります。
過去のブログはこちらからご覧いただけるので、ぜひ前回の前提知識も踏まえた上でご一読いただけると嬉しいです!

なお、今回もJohn Ladley氏の著書をベースに筆者の解釈をご紹介していければと考えています。

今回は、データガバナンスを組織に組み込むと最終的にどういった状態になるのか?というビジョンをご紹介した後、そこに到達する上で、考慮しておくべき要素を簡単にご紹介します。

データガバナンスを組織に組み込んだ際のビジョン

データガバナンスを組織に組み込むと最終的にどのような状態になるのでしょうか?
よくある勘違いとして、データガバナンスには何らかの終着点があると思い込んでいることがあります。これは、大きな間違いです。
もちろんこれは、データガバナンスにはゴール(目標)が無いと言う意味ではありません。データガバナンスの最終目標は、「組織内のデータをより良いことに利用できるよう、日常業務として組織に組み込む。また、それを行う共通の場所を作り出すこと」です。
つまり、データガバナンスとは、何か特別なことをするのではなく、企業に溶け込ませることが最終的な目標になります。
なので、データガバナンスはアジャイル開発やDevopsのような、特別な努力は必要ないですが、継続性が重要になります。
継続性には、明確な計画や、データガバナンスやマネジメントが生み出す価値を示すユースケースなどが不可欠です。
※ちなみに、このユースケースについては次回の連載で詳しくお伝えします。

データガバナンスの最終目標が理解できたところで、それを達成するために、考慮しておくべき内容は何か?について解説していきましょう。まずは、データガバナンスに取り組む範囲を決める際、考えるべきことについてです。

データガバナンスの範囲

データガバナンスは前述の通り、企業に溶け込む必要があるものなので、最終的には全社規模で考えるべきです。しかし、いきなり企業内の問題全てを真面目に取り組むのではなく、対応範囲の優先づけをすることが重要になります。
この対応範囲の優先づけを考える際は、以下4つの要素を考慮してみてください。①ビジネスモデル
②ガバナンスされるコンテンツ
③連邦化の度合い
④開発方式

①ビジネスモデル

例えば、グループ会社含めてグローバルに展開する企業の場合、いきなりグローバルにガバナンスを展開するのは非常に困難です。まず成功しないでしょう。
そこで最初は、営業や生産、物流といった業務領域に閉じて進めると良いです。その際、各領域で取り組むべきデータガバナンスやマネジメントの施策が異なれば、それぞれでプログラムを進めていくイメージです。
しかし、注意しておくべき点としては、取り組むプログラムによっては、ビジネスモデルを考慮せず範囲を決める必要もあるという点です。例えば、マスタデータ管理(MDM)を行うのであれば、業務領域に閉じた形で対応するのは相応しくありません。こういった場合は、まず業務領域を問わず本社のマスタデータに範囲を絞り、その後グループ会社に範囲を広げていくといった対象範囲の優先づけが必要になります。

②ガバナンスされるコンテンツ

コンテンツの違いで、データガバナンスのやり方を変えるわけではないですが、ガバナンスする対象のコンテンツをどこまでとするかは明確にしなければなりません。
例えば、マスタデータのみ対象とするのか?トランザクションやサマリデータまで対象とするのか?非構造化データも含めるのか?などです。
この違いにより、各コンテンツの管理における説明責任の配置や、データガバナンスのプロセスをどうするか、などが変わってくるので重要です。

③連邦化の度合い

連邦化とは、中央で集中的に管理するものと、地方である程度緩めに管理するものと優先度に応じて管理の主体や厳格さを分けることを指します。
アメリカは連邦政府ですが、国の法律と、州の法律がそれぞれ存在しており、この2つを持って国を納めています。これを企業のデータにも適用すると考えてみてください。
この連邦化をどこまで適用するかによって、ガバナンスの範囲が変わってきます。
例えば、マスタデータ管理の際、中央で集中的に全てのマスタを厳密に管理していくのか?それとも、組織横断して重要なマスタのみ中央で管理し、それ以外のマスタは、グループ会社や業務領域など個別の領域に管理を任せるのか?といったイメージです。
これにより、中央側でガバナンスする対象範囲はもちろん、ガバナンスの厳しさも変わってくるので、ここは非常に重要です。

④開発方式

ここは範囲と若干違うと思われるかもしれません。しかし、多くの企業で開発標準が存在していないので、ここもガバナンス対象として考慮することが重要です。
例えば、構造化データをガバナンスする際、開発の改善方針をドキュメント化しておく必要があります。ここで言う改善とは、開発サイクルの中に、成果物のレビュを行うためのチェックポイントを設けるなどが該当します。

データガバナンスの土台となる要素

データガバナンスの範囲を決める要素を理解していただいたかなと思われますので、次に、データガバナンスを実施していく上で、土台となる要素を見ていきましょう。この要素は非常にシンプルです。要素は以下3つになります。
①プロセス
②人
③テクノロジー
そうでした、大事なものを忘れていました。上記3つに+αで以下も必要となります。
④データ
では、それぞれの概要についてご紹介しましょう。

①プロセス

プロセスは2つの要素からなります。1つがケイパビリティモデル。もう1つがワークフローです。どういうことか説明していきましょう。

・ケイパビリティモデル
ケイパビリティとは、組織に何が起こるのか、できるのかを示すものです。
この文脈で言うと、組織のデータに関する目標を達成する上で、やるべきことがケイパビリティモデルとなり、詳細なプロセスを検討する前にここを整理することが重要です。

・ワークフロー
ワークフローは説明しなくてもわかるかもしれませんが、組織内にデータがどのように流れ、組織がそのプログラムにどう関わるかどう意思決定されるかを示しています。

つまり、まずは、組織としてデータの観点でなすべきことを特定し、それを実施するワークフローの詳細化が、プロセスには必要となります。

補足事項:
プロセスに関連する内容として、データガバナンスにおける重要な概念である、プリンシプル、ポリシー、評価指標について補足解説しておきます。

まずはプリンシプルについて。
これはデータガバナンスやマネジメントに対する哲学や思想を表すものです。つまり、データガバナンスやマネジメントを組織に適用することを宣言し、それを実行するための行動についてをガイドするものがプリンシプルです。
これは、後述のポリシーやそのほかデータガバナンスのルールを作成する際の指針となります。

次にポリシーです。
これは、組織に支持され、公式に定義されたプロセスを文書化したものです。もう少し詳しく説明すると、プリンシプルを実行に移せるよう詳細化・成文化したものがポリシーです。これには標準(スタンダード)も含まれています。

最後に評価指標です。
定量的に評価ができないものは管理できません。また、データガバナンスを組織に浸透させるには、その有効性や進捗が可視化できていると非常に効果的です。
逆に定量的に評価できる指標が無いと、データガバナンスはすぐに立ち消えてしまいます。
データガバナンスの最終目標を考えると、評価指標は非常に重要です。

以上が、プロセスとそれに関連する重要な要素になります。

②人

次に人ですが、これは、役割や責任をデザインすることを指します。
例えば、データの管理に対する説明責任を担う役割(=データスチュワード/カストディアン)という役職を設定するなどが該当します。
ちなみに、ここで定義する役割や責任は、IT組織よりも上、もしくは外側に設置しなければなりません。なぜなら、データガバナンスやマネジメントは企業全体で取り組むべき活動なので、ITだけでなくビジネスも主体として取り組まれなければなりません。しかし、IT組織の下に責任を置いてしまうと中々ビジネス側を巻き込むことができないので考慮しておく必要があります。

③テクノロジーとツール

データガバナンスを実施するために必ずしもツールを購入する必要はありませんが、データガバナンスをサポートするためのツールを導入するのは良いことです。
とはいえ、順序が逆になってはいけません。
つまり、データガバナンスを始める前にツール導入を検討しようとしてしまうと、中々データガバナンスもツール選定もうまくいかないので、気をつけたほうが良いです。
ちなみに、ツールとは例えば、プリンシプルやポリシーといったドキュメントを管理するためのツールや、監視統制のためのワークフローツールなどが挙げられます。

④データ

ここでは、データアーキテクチャ(どのデータがどのシステムにあり、どの業務領域の範囲に存在するのか、そしてその責任は誰にあるのか?)を把握することがメインの要素であると解釈しています。
データガバナンスとは、組織や業務の変革を伴うものなので、実施すると、各地で抵抗が想定されます。そのため、あらゆる箇所を同時並行的に進めるのではなく、データアーキテクチャをもとに対象領域の優先づけが非常に重要だと解釈しています。

データガバナンスの成功要因

最後に、データガバナンスを成功させる要因をいくつかご紹介して締めくくりましょう。

・データガバナンスを義務とする
データガバナンスは、情報を使う全てのプロジェクトやイニシアチブ、人の成功やメリットにつながる欠かせない業務とすることを心がける必要があります。

・組織に与える価値を示す
データガバナンスが組織に与える明確な価値を示すことが大事です。データガバナンスには継続性が重要だと前述しました。続けるためにはそれだけの価値がないといけませんので、非常に大事です。

・組織の変革を管理する
繰り返しになりますが、データガバナンスは組織に溶け込ませる活動であるため、組織活動の変革が必要です。データガバナンスの過程で、データは直したいけどプロセスには触れてほしくないといった声が上がることもあります。これら抵抗に対処するため、組織変革の管理は必ず必要です。

・データガバナンスを企業全体での取り組みと捉える
短期的には局所的視点で実施されることもありますが、常に全社視点を踏まえた長期の目線で考えることが必要となります。

以上がデータガバナンスのビジョンや、ビジョンの達成に必要な要素となります。
ぜひ、こちらを皆様なりに解釈いただきガバナンス実行にお役立ていただけると幸いです!
次回も濃く深くお伝えできればと思っていますので、お付き合いいただければ嬉しいです。

それでは!!

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