壁に少々らっきょう(2作品目)【毎週ショートショートnote】裏お題
壁に少々らっきょうが刺してある。
「お前、これはなんだよ」
「これはらっきょうだよ」
「らっきょうは見たらわかるよ」
「なんでらっきょうを壁に指してるんだ?」
「いやあ、実はらっきょうを自分で漬けてるんだよ」
「おお、すごいな。それで飾ってるってわけか」
「この壁に刺したらっきょうの具合で浸かり具合がわかるんだ」
「杉玉みたいだな。乾き具合とかで浸かり具合がわかるというわけだな」
「まあそんな感じだね。このやり方は他界した父から教わったんだ。父は自分でらっきょうを漬け始めると、何粒かを壁に刺してたよ。この壁に刺されたらっきょうを見ると父のことを思い出すよ」
「そんな思い出があったんだな。ごめんな。俺は壁に刺さったららっきょうを初めて見たからびっくりしたよ」
「それはそうだよな。らっきょう食べるか?」
「お、いただくよ」
らっきょうを瓶から取り出し、二人で食べた。
「ちょっと酸っぱいな」
「ちょっと酸っぱいね」
僕はティッシュで涙をぬぐった。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※どのように描写すると感動的になるのか。それを模索中です。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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