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逢いたい菜【毎週ショートショートnote】

「逢いたい菜を食べると、誰かに逢いたくなる」そんなキャッチコピーで売り出していた新商品。実際にそれを食べると誰かしらに逢いたくなると、世間では話題になっていた。わたしもひとつ挑戦してやろうと思った。なぜなら、私には逢いたいと思う人がいないからだ。家族ももう他界してしまっていていないし、親戚も何十年と連絡をとらず、友人もみんなこの世にいない。そんな私に逢いたくなる人などいるのだろうか。むしろ面白いと思った。私はそれを買ってきて、おひたしにして食べた。それは小松菜に似たような味でちょっと甘みがあり、なんだか懐かしい味でもあった。その懐かしさがなんなのかは、まったく思い出せないけれども、その味はなんだか郷愁を感じさせるものだった。しかし、結局誰かに逢いたいという気持ちにはならなかった。まあ、そんなものよねと思いながら、私は布団に入った。眠りにつくと、私は父と母の夢を見ていた。朝になって、目が覚めると、涙が出ていた。


(410字)

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※思慕り出しました。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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深遠 たた
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