メガネ朝帰り【毎週ショートショートnote】
「おはよう。メガネ朝帰りだな」俺は父親としての威厳を出して娘に話しかけた。
娘は眠そうな顔でトーストにバターを塗っていた。「なによそれ。昨日友達とオールだったのよ」娘はこちらの顔を見ずにぼそっと答えた。
「あからさまな嘘はつかなくていいよ」と俺は語気を強める。娘が彼氏のところに泊まってきたのはわかっていた。なぜなら、娘はいつもコンタクトをしている。友達と遊んだときはそのままコンタクトで帰ってくるが、彼氏のところに泊まるとメガネで帰ってくるのだ。
「今度一度彼氏を連れてこい。会ってやる」と続けて俺は娘に言った。
「じゃあ、あとで連れてくるわよ」
「あ、あとで?」
「何よ。ダメなの?」
「ダメというか心の準備が」
「じゃあ、心の準備ができたら言ってね。私はいつでも大丈夫だから」
「お前も成長したなあ」俺は以前とは違う娘を見て感慨深くなっていた。
「悪いことはしてないから安心してよね」
窓から見える庭にはひまわりの花が力強く咲いていた。
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たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※どこか旅にでも出たい気分です。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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