怪人制御冷や麦【毎週ショートショートnote】裏お題
とある地域のとある山の中。
『冷や麦の怪人』と呼ばれる老人が住んでいた。
その老人は冷や麦用の小麦を自家栽培している。
自家栽培された小麦は門外不出の品種で独自の品種であった。
老人はその小麦を全国の味のわかる人達だけに小売をしている。
そして、年に一度だけ、その老人が作った小麦で、その老人自身で調理を行った冷や麦が日本でも一握りの食通だけに提供される。
それは『怪人制御冷や麦』と呼ばれていた。
私はこれから初めて『冷や麦の怪人』が調理した冷や麦をいただく。
小麦の香りが部屋を満たしている。
作務衣を着た老人が冷や麦を提供してきた。
「まずは、つゆをつけずにそのままどうぞ」
「いただきます」
私はすこし震える手で冷や麦を口に運んだ。
「こ、これは……」
「本当にこれは冷や麦なのか」
ざわめきがまわりから聞こえてくる。
その冷や麦を口に入れた瞬間、口の中で小麦が実ったようになる。
『怪人制御冷や麦』を食べた客達はみな、私を含め、頭を垂れていた。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※つぶやきで済ませるつもりが、有料記事を読んで、触発され、ばばばっと書いてしまいました。オチは特になしです。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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