釜揚げ師走【毎週ショートショートnote】
窓の外は星々が輝いている。
「所長、星、綺麗ですね」
「そうだな。いつ見ても星は綺麗だよ」所長は遠い目をして答えた。
「所長そういえば『釜揚げ師走』ってなんですか?」
「それを言うんなら釜揚げしらすだろ」部下の突然の問いかけに、部長はびっくりして飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「あ、よく見たらしらすですね。ところでしらすって何ですか?」
「お前しらすも知らんのか。しらすは魚だよ。小さい魚で、まあいわゆる稚魚っていうやつだな」
「稚魚……魚の子供ですね……それを食べるんですね」
「まあ、言ったらそうだな。俺もしらすは食べたことがないんだがな」
「普通の人だったら食べたことないですよ」
「地球に住めなくなってもう100年だからな。稚魚も何も魚は絶滅してるからな」
「宇宙コロニーにも海はないですからね」
「お、今日のランチは魚風唐揚げだぞ」
「部長は魚風唐揚げ、ほんとに好きですね」
宇宙コロニーはゆっくりと、ただ静かに回っていた。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※疲れがたまっていると、執筆もままならないことに気付きました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートお願いいたします!執筆活動費にさせていただきます。