半分ろうそく(2作品目)【毎週ショートショートnote】
俺は気が滅入るときまって行く場所があった。それは麦畑を抜けた先にある小さな川だ。川の流れを眺めていると、背後から声が聞こえてきた。
「このろうそくを持って行きなさい」
白い髭を蓄えた体格のいい老人が現れ、一本のろうそくを渡してきた。そのろうそくは短く、普通のろうそくの半分ほどだった。
「こ、これは?……」
「これは『半分ろうそく』と言ってな、使えば人にやさしくなるのじゃ。『人を慈しむ心』を持ちたい、そう思ったときに使いなさい」
「お、俺は別にやさしさなんて……」
「これを使うかどうかはおぬしが決めればよい。好きなようにするがいい」
その老人はすっと消えるように立ち去った。
俺は迷わずにその場でろうそくに火をつけてみた。
ろうそくの火が揺らめいている。
あの老人の声が聞こえてきた。
「おぬしはもうすでに人を慈しむ心を持っておる。それは人にやさしくありたいという意志じゃ」
俺は確かにもらったのだ。『半分ろうそく』という一本の気づきを。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※全然まとまりませんでした!
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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