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半分ろうそく【毎週ショートショートnote】

「とうちゃん、これ」娘が千円札を一枚手渡してきた。

「どうしたんだ、これ?」

「あの棚にあった『半分ろうそく』を町の質屋で売ってきたよ」

「……」

「あのろうそくはもう使いかけで半分になってて売れるかわからなかったけど、質屋のおばちゃんは綺麗だからと言って千円で買い取ってくれたよ」

「そうか……良かったな……」

「これで少し食べ物買えるよ」

「そうだな……」

「どうしたの?あの『半分ろうそく』売ってまずかった?」

「いや……売ってしまって問題ないよ。ありがとな」

「良かった!」娘はぱあっと笑顔になった。

そのとき、黒電話が鳴った。

チン、ジリリリン、ジリリリン

電話を取ると質屋だった。

「あんたの娘がろうそくを売りに来たよ。大事なもんなんだろ。店にあるから早く取りに来な」俺は後で取りに行くと伝え、電話を切った。真っ赤な夕焼けが差し込んできて室内に燃えるような赤が染まっている。

「お前はどうして先に……」手にした妻の写真は赤くぼやけていた。


(410字)




たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※仕事、仕事!


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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深遠 たた
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