べこクイーン鉄塔【毎週ショートショートnote】裏お題
火星にはとある賢者が住むという。
その賢者は火星開拓時代、開拓初期の頃に入植し、火星の繁栄のいしずえとなった人物。
賢者はベッドで静かに横たわり目をつぶっていた。
地球の気候変動により人類は火星を求めた。
そして、火星のテラフォーミングが成功し入植者の数が増えた。
火星は栄えた。
月日が経ち火星には街ができている。
火星開拓時代の当初の場所はその街から離れたところにあった。
小高い丘の上にそれはあった。
居住用建物が1棟、4つの足がついた高床式の水耕栽培用のタンクとその上には簡易通信用アンテナの鉄塔が立っていた。
それはあたかも牛のように見えた。
だが、火星地表の酸化鉄を浴び長い月日を経てそれらはすべて赤色になっていた。
街に住む入植者からは『べこクイーン鉄塔』と呼ばれ、体のいい目印になっていた。
「おばあちゃん、あそこに賢者様はいるの?」
「賢者様はいるかどうか、生きてさえいるかどうかわからないわ。だからこそ賢者様なのよ」
「ふうーん」
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※火星SFにしてみました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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