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転生ショートショート 私は転生したらヘビになったみたい (続き)
ヘビがとぐろを巻いて休んでいるとお腹が動いた。
さっき丸呑みしたカエルだ。
「アカリ・・・・・・アカリ・・・・・・」カエルが最後の声を振り絞っていた。
ヘビは動揺した。「アカリ」という名前はヘビの転生前の名前だ。
「もしかしてあなたはダイスケ?」ヘビはお腹の中のカエルに向かって問いかけた。
「そ、そうだよ。僕はダイスケだ。アカリかい?君はヘビに転生したんだね。き、き、君に食べられるなら本望だよ」
「そんな、そんな、ダイスケ。今吐き出すからちょっと待って」
お腹の中のダイスケにそう伝えると、アカリは自分の体を思い切り捻りダイスケを吐き出そうとした。
「うう、苦しい。もう僕はだめだ。君の牙で体も貫かれたんだ。もう、このままでいいよ。愛しているからね」
「そんなこと言わないで。ダイスケ。私も愛しているの」
「仮に僕がここから出られたとしても君とは一緒になれないんだよ。君はヘビで、僕はカエルだ」
「きっと大丈夫よ!こないだライオンと人間が仲良くしてるYouTube動画見たの」
「・・・・・・、いや、だけどヘビとカエルだよ。無理でしょ。吐いた瞬間、また食べるんじゃないの?」
「アハッ♪食べないわよ。ダイスケ、だーい好き」
「ふふふ、かぼちゃワインか。転生前、君は背が高く僕は背が低かったね。スペイン料理屋でその話をしたのを覚えているよ。ありがとう。。。。」
「赤ワイン美味しかったね・・・」アカリは声を絞り出した。
アカリは自分自身でダイスケを吐き出すことができないことに気付き、すでにあきらめていた。
「アカリ、最後に名前を呼んで・・・」
「はいな。ダイスケ・・・」
「アカリ・・・ありがとう。愛しているよ。さようなら」
「私もすぐに行きますよ。さようなら」
空は、黒い雲に覆われていて、辺りは、光がほとんどなかった。そして、どしゃぶりの雨が降ってきた。
アカリは、雨からダイスケを守るように、そっととぐろを巻いて下を向いた。
(了)
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