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棒アイドル【毎週ショートショートnote】

「神様、どうか私をアイドルにしてください」

私はダンススクールの帰りに空に向かっていつも願っていた。ただ、その日はちょっと様子が違っていた。灰色の雲の中からにゅうっと一本の黒い棒がゆっくりと降りてきた。

「お前の願いを叶えてやろう。だが、お前は棒になれるか?棒になれるんだったらアイドルにしてやろう」

その黒い棒は悪魔だった。

「なります。アイドルになれるんだったらなんにでもなります」

「わかった。お前をアイドルにしてやろう」

私の体が足の先から頭までゆっくりと棒になっていった。

「これでアイドルになれるの?」

「お前はもうすでにアイドルだ。その代わりに前の顔を失い、前のお前を知るものはもういない」

「パパもママも私のことわからなくなっちゃったの?」

「そうだ」悪魔は冷酷にそう告げ雲の中に消えた。

数日後、私はステージに立ち1万人の観客の前で踊っている。

やっとアイドルになれたと思った刹那、観客の中にママの姿。

私は涙が止まらなかった。

(410字)



たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ジャンルにするとホラーファンタジーなるのかもです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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