音声燻製(3作品目)【毎週ショートショートnote】
僕は超能力者だ。いわゆる予知能力を使える。
毎日お昼前に『燻製』の香りを鼻に感じると予知が始まる。
予知は母の声が『音声』で聞こえてくる。
「今日の夜ご飯はハンバーグよ」
「今日の夜ご飯はラーメンよ」
僕はこの能力を『音声燻製予知』と勝手に名付けた。
だが、今日の夜ご飯を予知できるだけの超能力なので、恥ずかしくて人には言えない。
さらに、いつもたいした夜ご飯でもないので、恥ずかしくて人には言えない。
たまに、夜ご飯が3日連続カレーというのも、恥ずかしくて人には言えない。
小学校低学年の頃に『音声燻製予知』が発現し、僕は今18歳。10年以上この能力のお世話になっている。
なんでもない超能力なのかもしれないが、毎日母の声を聞けていてそれが当たり前だった。
今日もいつもと同じように『燻製』の香りを感じた。
だが、今日は『音声』がなかった。
それ以降ずっと『燻製』の香りは感じるが『音声』は聞こえなかった。
僕は固く目を瞑るだけしかできなかった。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※ちょっと暗めのショートショートです。
※本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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