モカ入り卒業式【毎週ショートショートnote】裏お題
『モカ入り卒業式』は香り高く素晴らしい卒業式であった。それと同時に苦みのある悲しい卒業式でもあった。
「やはり、いいですな。モカは」
「いいですな」
「ところで、ブルーマウンテンはどうなった?」校長が心配そうな顔で教頭に尋ねた。
教頭はじっと校長の目を見て「ブルーマウンテンはもう全然ダメなようです」と答えた。
「そうか。キリマンジャロはどうだ?」校長はコーヒーカップに入ったモカを見つめながら尋ねた。
「キリマンジャロも厳しそうです」教頭は自分のコーヒーカップを強く握り、少し震えている。
「そうか。そうなるともうモカに頼らざるを得ないんだな」
「その通りです。もう、モカだけです……」
「つらいな……」
「つらいです……」
校長はモカを口に含んだ。
「先生~今までありがとね~モカ美味しかったよ」
二人が声の方向を見ると、卒業生が遠くから手を振っていた。
「卒業、おめでとう!」
校長と教頭は声を揃えて返事をした。そして、全力で手を大きく振った。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※ 意味不明SFショートショートです。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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