カフェ4分33秒【毎週ショートショートnote】
カフェ店員がコーヒーを2つ運んできた。
僕はキリマンジャロ、君はモカ。
良い香りねと君は言って小動物のように鼻をクンクンさせている。
「小動物みたいに嗅ぐな!」と僕は笑いながら注意した。
窓から気持ちの良い風が吹いてきた。窓際に座っている君の髪はなびき、髪の香り、君の笑顔、コーヒーの香りは特別なモーニングセット。
僕はその特別を感じた瞬間に、涙が出てきた。
泣いてるの?と彼女が僕に聞いてきた。
「なんでもないよ。ちょっと目にゴミが」と僕が答えると、なんかベタなセリフねと彼女が微笑みながら答えた。
「今日は会えて良かったよ」と僕が続けて言うと、君は照れながらコーヒーを一口飲んだ。
「4分33秒でございます」店員がやってきた。
ふっと見ると彼女はもうそこにはいなかった。
その瞬間、窓からの風が僕の顔をそっとなでた。
またね、と彼女の声が聞こえたような気がした。
ここ『カフェ4分33秒』は亡くなった家族に4分33秒だけ会うことができる場所。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※僕もエモいのにしました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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