主に招かれているアウトサイダーとしての「女性」
2018.12 北海の光 巻頭言
2018年12月1日、日本聖公会で女性の司祭按手20年を記念して、東京聖アンデレ教会で礼拝が行われました。現職の主教5名を含む39名の聖職者がプロセッションに参加し、この内女性の聖職者は韓国からのゲスト3名と、説教者のテリー・ロビンソン司祭を含めて23名でした。女性の司祭たちが祭壇を囲んだ様子は素晴らしかったと何人もの方々が言っておられました。
現在の日本聖公会における女性の聖職者数は、退職者を含めて34名。男性は約310名ですから、やっと全体の1割です。信徒に占める女性の割合は男性よりもずっと多いのに、聖職への道になかなか進めないのは何故でしょうか。
聖職按手に臨んだ際を思い起こすと、私は普通の人間であることの殆どを捨てるような気持ちでした。自ら世界との交流の大半を遮断するイメージです。あの時の自分なりに一生懸命でしたが今振り返ると、私という等身大の人間性の半分くらいをあきらめていたような気がします。それから13年を経た現在、本来の私の姿にだいぶ近づいてきたような実感を持っています。
最も大きな転換点は家庭を持つ身となったことでした。仕事優先・自分後回しを常としていた暮らしが一転しました。休日を自然の中で楽しむ伴侶のおかげで、メリハリのある生活になりました。そして、妻の心情や女性の健康について、子育て中の母親の大奮闘や、社会で経験する女性特有の困難、親の介護などに、より切実な共感を持つようになりました。きっと今後関わる結婚準備会は、家庭を築き運営する事と両者の協調性について等々、より話題が多岐にわたるものになりそうです。結婚後の家庭生活のサポーター的な働きも、関心を持って行きたいと考えています。
そして今、心に神様からの呼びかけを聴き、神様と人々に奉仕する願いを持っている人達にアドバイスをするとしたら、自分らしさの中でこそ、神様が与えて下さる良いものを受け取り、それを分かち合うことができるという事を伝えたいです。
英国から来られたテリー・ロビンソン司祭は説教の中で、「イエス様は一貫して社会の中でアウトサイダー(部外者)とされた人々を仲間に迎え、『恐れるな』と励ましを与えて下さっているのです。」と言われました。
圧倒的に少数である女性の司祭という立場の私自身を、教会のアウトサイダーとして自任した時から、聖書の福音は私をより強く励ますようになりました。「少女よ、起きなさい」と命じられた救いの言葉を聞いて、半分死んでいた私の人生をあきらめずに生きる道を選びたいと思うようになれたのです。アウトサイダーへの福音が私に語られているという実感を重ねるほど、少数者という立場に置かれている様々な個性や特性や背景を持つ人々と共に、この福音に招かれている感動を分かち合う人生にしたいという思いを確かなものにされているように思います。
今年の7月に札幌で行われた「女性」フォーラムの基調講演において、社会の中で沈黙するアイヌのルーツを持つ人々はおよそ10万人であると知りました。他にも性的少数者、人から理解されにくい障害や病気を持つ人々など、世の中でアウトサイダーとされてしまう存在に共感をもって関わるのが、私が持つ女性の司祭としての大切な部分であることを思い巡らしています。
ある司祭の言葉を引用すると、「痛みのみを絆とする」そのような交わりが、キリストの言葉によって共に生きようとする場を身近に作り上げてみたいと考えています。