木村夕子(牧師・司祭・パン屋)

(宗)日本聖公会 北海道教区 司祭(牧師) 紋別、札幌、旭川、留萌の教会と付属施設の幼稚園・保育園・国際青年寮で牧師として勤務し、乳幼児から老人まで人生の大切な時に寄り添い共に泣き笑いして、神の愛と救いの喜びを分かち合う 平日は夫のパン屋で女将業 花壇や畑の作業が趣味 札幌市出身

木村夕子(牧師・司祭・パン屋)

(宗)日本聖公会 北海道教区 司祭(牧師) 紋別、札幌、旭川、留萌の教会と付属施設の幼稚園・保育園・国際青年寮で牧師として勤務し、乳幼児から老人まで人生の大切な時に寄り添い共に泣き笑いして、神の愛と救いの喜びを分かち合う 平日は夫のパン屋で女将業 花壇や畑の作業が趣味 札幌市出身

マガジン

最近の記事

伝えることば

 あなたの考えは?そう聞かれて喉が詰まった。それは神学校に入った時の事です。急に私は言葉を失っていました。いえ、日常生活は普通に出来ていたと思います。しかし勉強には苦労しました。課題図書の漢字が古くて読めず漢和辞典を購入して、それでも内容が理解できない。神学とは神の言葉の学問であると教えられ、すまし顔の裏に本心を隠していたあの頃。自分の言葉が話せなかったし、やっと出した言葉が通じない事が多かったし、心から話せる相手が欲しかった。  小説家で文学者の高橋源一郎はラジオで次の事

    • バラおばちゃんの喜び

      • 星を見る人は

        2020年 2月 北海の光  早朝からの鮭釣に備えてテントを張ったオホーツク海側のキャンプ場で目を上げると、水平線の際から空一面に星がぎっしりと詰まっていた。あまりの数の多さに息を呑んだ。 2018年9月6日、午前3時8分に北海道胆振東部を襲った地震で、道内全域が停電したブラックアウトに襲われたあの日の夜、自宅の玄関先で天の川を見た。震源地では大惨事であることを案じながら、逃れることの叶わない闇の中で空一面の星を見た。星を見るより他に出来ること、したいことがなかったように

        • ”小鳥食堂パン屋の店先にオープン” 毎年厳寒期のみ開催しています。果樹園で拾った落ちリンゴながら、小さいリンゴは歯ごたえあり。大きいリンゴはふわっとした食感。品切れに注意しながら、早朝もできる限り対応しています。春に山の食料が採れるまでは、どうぞおいでくださいませ。

        マガジン

        • 北海の光 掲載メッセージ
          4本
        • 聖公会新聞 掲載メッセージ
          11本

        記事

          敵を愛するなんて・・・。でも敵が意外な相手なら?

           青春の入り口が平成の始まりだったので、昭和のこどもらしく親にぶたれた記憶がはっきりとある。こどもの頃は、注意されたことを一回で身に着けられる人が不思議で、うらやましかった。私は忘れっぽくて、マイペースで、腰が重い。きっと落ちこぼれ感が強いこどもだったと思う。何度言われても母の注意を行動に移せないので、よく平手やげんこつをもらった。そろそろ手が飛んでくる頃合いかもしれないと、首をすくめつつ正座で長い説教を耐えていたことも度々だった。 だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬

          敵を愛するなんて・・・。でも敵が意外な相手なら?

          スタート・ゴール・新しい時

          2009年 12月 聖公会新聞  イルミネーションの光景が随分と目に馴染んできたが、先日遠方に暮らす信徒さんとの別れ際に「どうぞ良いお年を」と挨拶を交わした。教会の暦は既に新年を迎えたが、生活カレンダーは今年のカウントダウンに入っている。年賀状の事を気にしながら今年の出来事を回想し、新しい年に向けて何らかの目標を思い浮かべたりする。時の流れは年々加速するように感じられる中、仕事は時間に追われずにこなしたいと願うのだが、結果は惨憺たる現状だ。  新年を迎えるのは喜ばしい事で

          スタート・ゴール・新しい時

          光と影 等しく愛おしい

          2009年 11月 聖公会新聞  久しぶりに大型ショッピングセンターへ行ってみると、既にクリスマスの雰囲気が漂っていた。そうだった、保育園の職員会議でも、教会委員会でも、クリスマスの計画を話し合ったのだ。もうすぐクリスマスを迎えるのだ。北海道のホワイト・クリスマスは、なかなかロマンチックだ。電飾が灯った教会のツリーの周りには、カメラに向かって微笑むカップルや、喜ぶ子どもの手を引く親子の姿がある。息も凍るほどの寒い夜も、教会の中は暖かく、明るく、穏やかで人々の笑い声に満ちてい

          独りじゃない実感。

          2009年 10月 聖公会新聞  北海道は、もうすっかり秋。遠くの山々に目をやると、山頂には雪、裾野には紅葉が広がっている。この風景は素晴らしいが。秋はあっという間に過ぎて行く。もうすぐ長い冬が来るのだから備えるようにと、風が告げている。とはいえ、秋は実りと収穫の喜びの季節。旭川市郊外や隣接する鷹栖町、深川市の水田では、黄金色の稲穂が穂先を垂れて刈り入れを待っている。とても豊かで胸が満たされる光景だ。 一方、我が家の菜園では、寒さで赤くなれないトマトがいじけてぶら下がった

          祈り、私の仕事。

          2009年 9月 聖公会新聞  「司祭、お祈り!」呼ばれるところと言えば、お祈りの時。礼拝前、礼拝中、礼拝後、食前、信徒訪問、病者訪問、朝に夕に、ありとあらゆる所で牧師は祈る。祈ることはもちろん歓迎だ。それに、他の誰かと一緒に祈るとことも大歓迎なのだ。中高生のつっかかりながら捧げる祈りに、心の中でガンバレ!と念じながら辿り着くアーメンには、思わず微笑みがこぼれる。一方、信仰歴が長く、お祈りも身に付いた長老たちの祈りには、整った祈りの体裁にも感心するが、それ以上に神様への深い

          連帯を意識する生き方

          2009年 7・8月 聖公会新聞  旭川に来て最初に感激したのは、青く広がる空を背景にそびえる大雪山系のダイナミックな姿である。特に冬、白銀に埋め尽くされた山肌が、くっきりと稜線を浮き上がらせた姿には心奪われる美しさがある。  大雪山には学生時代、ワンダーフォーゲル部の仲間と秋の紅葉が素晴らしい季節に一度登っている。落ち葉に覆われた登山道、頂上付近の歩きにくいガレ場、前夜にテントで友人たちと笑い転げた事など、思い出がよみがえる。初めは気軽な野外活動のつもりで入部したのだが

          つながるあなたの味方です。

          2009年 6月 聖公会新聞  顔見知りになった近所の小学生女子二人。彼女らのポケットには、携帯電話が入っていた。最近の驚きトップ3入りである。確かに電話は大変便利な道具であり、その恩恵は絶大である。そして携帯電話に限らず、電話は時に重要な役を担うことがある。教会と繋がれた電話の向こうで、心の内を蕩々と話し続ける人がいるのである。 この一年間で、未信者からの電話相談を何度か受けているが、いずれも話し手が充分に話し終えるまでには一時間や二時間は必要で、時には三時間を超えること

          つながるあなたの味方です。

          天から落ちた大粒の涙

          2005年 3月 北海の光  誰でも忘れられない経験を持っていることだろう。私の忘れられない経験は、小学校5・6年時の学級担任、K先生の事だ。先生は若く躍動感にあふれた女性教諭である。 先生の誕生日の朝、教室に入ってくる瞬間をねらって、サプライズ・パーティーをすることになった。短い時間だったが、クラス全員で何をするか打ち合わせていた。ところが準備が整う前に「おはよう」と、先生が教室に来てしまった。それまでのにぎやかな声はやみ、教室は一瞬で凍り付いた。 「どうしたの?」と

          流れる汗が土に落ちる時

          2009年 5月 聖公会新聞  5月の連休と言えは、北海道では桜の季節。沖縄では2月に開花するらしいが、その頃こちらは冬祭り真っ只中。日本列島の南北の広がりを実感する。 北海道の春には、勢いがある。木々の新芽がぐんぐん伸び、春の花がいっせいに咲き乱れる。雪は四月上旬にすっかり消えるのだが、だからといって直ぐに花や野菜を植えてはならない。突然の寒波(シバレ)や、季節はずれの雪を警戒する必要があるからだ。 旭川聖マルコ教会には、家庭菜園と呼ぶには広すぎるのでは・・・と感じる

          旅立ちの朝

           札幌での会議中、前任教会のある信徒の訃報が知らされた。80歳を超えてのお一人暮らしで、ここ7年ほどは体調が振るわず、教会でお会いすることは少なかった。 時折お宅を訪ねると、それまで横になっていたにも関わらず、スッと起きあがり、話をするうちに顔色が良くなり、声にも張りが出た。 熱意のこもった話を聞いていると、3時間、4時間経過していることがよくあった。そして、体調が思うようにならず、教会に行けないのが残念だと言い続けていた。  この方の一日は、毎朝4時には起床し、身体を

          神の気配が伝わる

          どこか南の方で桜が開花したとの知らせが届いた。北海道は未だに雪景色。春と冬が隠れん坊する季節だ。うららかな日射しと荒々しい吹雪が毎日入れ替わる。北国では急激な天候の変化に耐えながら、暖かい春の日を心待ちにしている。 先日の吹雪の日、保育園の卒園式が行われた。旭川頌栄保育園では、16名の園児が保育証書を受け取った。子どもたちは緊張で硬くなりながらも、真っ直ぐな瞳で園長先生を見上げ、しっかりと握手を交わして行った。 どの子の顔も、希望と喜びに輝いていた。式の後には生活発表会が