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晩翠怪談 第4回 「黒変化」「幽霊夢」「どん兵衛チャレンジ」
■黒変化
イベント関係の仕事をしている織乃さんが、仕事で地方の旅館へ泊まった時のこと。
割り当てられたのは、広い和室の一人部屋だった。
仕事を終えた遅い時間に部屋へ入ると、すでに布団が敷かれていた。
翌日も仕事だったので手早く温泉に入り、浴衣に着替えて布団に潜る。
翌朝目覚めると、着ていた浴衣は、なぜか真っ黒い着物に変わっていた。
いつのまに着替えたのか、あるいは着替えさせられたのか。
まるで記憶になかったが、部屋のドアにはきちんと鍵が掛かっていたし、室内に荒らされた形跡なども見られない。
唯一、就寝前に着ていた浴衣だけが、どこを探しても見つからなかった。
生地の質感や全体の拵えから判断するに、自分が着ている黒い着物こそが他ならぬ、就寝までに着ていた浴衣のような印象である。
着替えを済ませ、黒い着物を持ってフロントに事情を説明しに行くと、宿のスタッフも黒い着物が「当館の浴衣で間違いありません」と言う。
それははっきりしたものの、浴衣が黒く染まった理由については、依然として不明のままである。
「何が起きたんでしょう?」と尋ねると、「分かりません」と低い声音で返された。そのうえで「弁償してください」と言われてしまう。
応じる義務などないので突っぱねたのだが、宿のスタッフは最後まで不服そうな様子だった。
その後、やはり仕事絡みで二度ほど同じ旅館が手配される機会があったのだが、織野さんは気味が悪くて別の宿に泊まったそうである。
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