君は本当に吉祥寺だったのか?
「誰やねん!短冊にエクゾディアなりたいって書いたん!」
ってヤンキー達がイオンで叫んでました。
僕です。
エクゾディアなったら、きっとあなた方の様なヤンキーを恐れることも無くなるのではないかと考え、藁にも(笹にも?)すがる思いで書きました。
神様にお願いしても、仏様に伝えても、流れ星に三回祈ってもエクゾディアになれなかったんで、とうとう織姫と彦星に頼んじゃいました。
その頃、天空世界では…。
「織姫…❤︎」
「彦星…❤︎」
「おりひ…、え、ちょ、まっ、えっ、なに?え?エクゾディア?ちょっともー今いいところやからやめて、しっしっ」
「彦星?」
「あ、いや、気にせんといて。こっちの話やから。それより続き続き!おりひ…、…ちょ…。…ほんま頼むわ。ちょーほっぺ。ほっぺグリグリやめて。見たら分かるやろ?今はちゃうやん。年一回しかないのにエクゾディアに構ってられへんねん。ほらイオンの短冊にお戻り」
って彦星の性欲が僕のお願いを短冊に戻そうとしていないことを祈ります。
ところで、この世にお願い事を言えるところ多すぎませんか?
人間の欲深さを物語ってますよね。
さて、君は本当に吉祥寺だったのか?
そう思わせるのは、ここが吉祥寺だったからなのだろうか。
吉祥寺を、去る。
人生で二番目に長い時を過ごした土地だ。
いい街だった。それは間違いない。
しかし、今になって思う。
君は本当に吉祥寺だったのだろうかと。
常にターンオーバーを繰り返し続けてきた吉祥寺。
古き良き新しい街を目指した吉祥寺。
…しかし、果たして本当に動的平衡状態を保てていたのだろうか。
なんとかその場しのぎでやってきただけではないだろうか。
つまり、既に成れの果てではないのか?
疲れ切っているんじゃないか?
僕の目に映る吉祥寺はそんな状態だった。
つぎはぎだらけなのだ。
人間関係において、大勢の人間に好かれることは、とても大変なことだ。
自分を仮の姿に染め続けなければいけない。
笑顔の上に笑顔を重ねるのだ。
百人に好かれるには百面相にならなければならない。
そうなってくると、どの自分が本当の自分なのか分からなくなる。
こうなってしまうと、もう遅い。
そんな風に、吉祥寺も既に本当の吉祥寺を失いつつあるような気がしている。
大勢の人に好かれようとした結果、何の変哲もない街へと移り変わろうとしているように僕には見える。
僕の好きな人たちは、いつの間にかそんな吉祥寺から離れて行った。
君は好かれすぎないで欲しかった。
君は映えすぎないで欲しかった。
僕の好きな店のいくつかは潰れた、又は長期間の休業へと入っていった。
僕の一番好きだったお店は四捨五入して星二つだった。
とても心地よく、とても愛せた。
気持ちだけは週八回訪店していた。
その跡地にできたお店には、一度も行っていない。
吉祥寺はその身を持って僕に教えてくれた。
決して多くに好かれるな。
尖れ、尖り続けるんだ。薔薇の棘より鋭く、孔雀の羽の様に鮮やかに威嚇し続けろ。
いいか、七十億人に好かれるより、たった一人に愛されろ。…俺も昔はそうだったのかな。
と。
彼は続けて言った。
人の営みが、やけに愛おしいんだと。
人がこの街で営み続ける限り、俺は吉祥寺なんだと。
僕は微笑み、通りかかったハモニカ横丁を見た。
そこにいた人たちは皆、とてもいい笑顔をしていた。
ほんの少しだけ、胸が締め付けられた。
その日は、迫り来る夕闇の中、井の頭公園を散歩をした帰りだった。
お前は、いつか帰ってくるのか?
彼は最後に僕に問うた。
僕は無言のまま、夕焼けに灼かれ、黒く焦げかけている空を見上げた。
記憶が走馬灯の様に蘇る。
カレー屋を一緒にやろうと言われたのも吉祥寺だった。
良いお年を、と今まで一言も交わしたことのない彼に言われたのも吉祥寺だった。
毎日すれ違うしばいぬに睨まれ続けたのも吉祥寺だった。
ウインナーコーヒーの美味さを知ったのも吉祥寺だった。
赤い服が出没するのも吉祥寺だった。
初めて自分の畑を持ったのも吉祥寺だった。
大根を作りすぎて、誰かにお裾分けしたかったけど人見知りでできなかったのも吉祥寺だった。
三丁目の夕日を思わせたのも吉祥寺だった。
…僕の東京は吉祥寺だった。
きっと、君は変わり続けるだろう。その度、君は吉祥寺ではなくなっていく。
それもいいと僕は思う。
多くの求めるものに答えるのが人気者の定めだ。
最後の日、僕は早朝の吉祥寺を歩いた。
「こんなに美しい街だってのに、本当にこの街から出ていくってのかい??バカなやつだねぇ。ほら、今ならまだ遅くないぜ?」
差し込む陽が喧しいほどに僕の気持ちを揺さぶってくる。
昨日降り続いた雨は、今日の世界を煌めかせた。
ふと、立ち寄った公園に風が通り抜ける。
その瞬間、大木の下にだけ大雨が降った。
なんとも不思議な光景だった。
差し込む陽が大粒の雨に反射して、まるでこの世のものとは思えなかった。
知らなかった。木はこんな時間に人知れず泣いていたのか。
そう言えば。
鳩が二羽に分身したのも吉祥寺だった。
絵から抜け出したネズミが絵に戻っていくのを見たのも吉祥寺だった。
真夜中に、スポットライトを浴びた猫が踊っているのを見たのも吉祥寺だった。
蝶ネクタイを付けたハクビシンが薔薇を咥えてしゃなりしゃなりと歩いているのを見たのも吉祥寺だった。
まっくろくろすけが床下換気口の隙間から僕を上目遣いで覗いていたのも吉祥寺だった。
吉祥寺では、木も涙を流すのか。
多くの人の創造の糧となっているのは、やはり自分で見たものだろう。
それは、視界に映ったもの然り、夢で見たもの然りである。
しからば、どうして自然から目を離すことができようか。
吉祥寺は、色んな不思議を僕に見せてくれた。
Kichijoji is truly a land of wonders for everyone.
真偽なんてものは、どうでもいい。
大切なのは、鳩は分身するし、絵の中のネズミは抜け出すし、猫は優雅に踊るし、ハクビシンはナルシストにキメるし、まっくろくろすけはでてくるし、木は泣くということだ。
大人はもう、絵本の世界に入り込めない。
だから、現実で絵本の様な世界を見つけるしかない。
失わないためには、そうするしかないのだ。
他人がどう言おうと、自分の目に映るものだけが真実でいい。
それだけで、いい。
僕は海と山のある町に引っ越します。
駅に駅ビルもエスカレーターもないし、駅員もいないという話を聞きました。
とてもワクワクします。
あまり名残惜しくないのですが、まぁまぁ楽しかったです。
ありがとうございました。
【今日の五百住の一言】
アブラカタブラ以上に便利な魔法の言葉をアブラカタブラで作ったら、さすがにアブラカタブラに怒られるかな?
さて、吉祥寺にこれから住まう人に、僕なら何をおすすめするか考えてみた。
僕の好きに偏りすぎているけれど、絶対何がなんでも参考にしてください!
吉祥寺行くならここ、みたいな共通認識は書いていないつもりです。
・住むなら駅遠にせよ!
吉祥寺には新旧入り乱れる素晴らしい邸宅がいっぱいあります。
僕が吉祥寺に住むにあたって、どんなふうに営んでいこうと考えた時に参考にしたのは、宮崎駿監督です。
あの頃、すでに宮崎駿監督の愛する家々は減っているという話を聞きましたが、現在はもっと減っています。
寂しい気持ちもあります。が、しかしまたそれとは違った素晴らしい家がたくさんあります。
住むなら北町か東町、中町(住所に吉祥寺はつかないが!)くらいがいいかと。大金持ちならば南町のあの辺りもいいですよね。
吉祥寺は駅遠に住んでも、駅⇄家の体感時間は思っているより短くなると思います。
素晴らしい街並みなので、散歩してて飽きません。
あなたの好きな家を探してみてください。
ちなみに、宮崎駿監督は、好きな家があったらお邪魔させていただいていたみたいですよ。
あと、あまり教えたくないのですが、あの町のあそこらへんのあの公園は本当に最高です。
もし住んだら絶対に行ってください。あの辺りにあるので。
竹林の間から覗き込む満月が、それはそれはもう、あぁ…、良きかな。
・井の頭公園以外の公園も攻めよ!
善福寺公園と武蔵関公園ですかね。
吉祥寺じゃないですが。
どっちもアヒルボートあったと思います。
ないのは動物園くらいでしょうか?
北町や東町に住んだら、徒歩でもいけます。
あ、そうそう井の頭公園に行くなら、絶対に動物園の年パス買いましょう。
公園エリアはゴミ箱もないし、人も多いので、疲れた時には動物園エリアに入るといいです。
魚が優雅に泳いでいる姿を見ながらベンチに座ると癒されます。
年パス1,600円ですよ。アリエナイ。ホントモウナニモシンジランナイ。
・ソープランドを攻めよ!
もうあれ、風情ですよね。
あれなくして吉祥寺なしですよね。
子供に「あれなに?」って問われたら
「吉祥寺」って言いますよね。
見たことある人なら、分かりますよね。
で、結局あそこは何なんですか?
普通にソープランドなんですか?
行ったことないので、どなたか感想聞かせてください。
・農園に応募せよ!
週一の世話でいいので、畑を続けてみてください。
適当にしていても、しっかり育ちます。地植え最高です。
・不老不死を求めよ!
それは吉祥寺に伝わる、ある伝説から始まる物語である…。
・セレビィを捕まえよ!
ウバめの森の祠みたいなんがほんまにあるんですよ。多分あの周り歩いてたらでてきますよ。GSボール持ってますか?持ってなかったらガンテツさんのとこに行きましょう。
アラサーなら…、わかりますよね?
・乙女は恋せよ!
命短しなので。
・そら豆は皮ごと食べよ!
初めて会った人に真顔で
「皮剥いたほうがいいんちゃう?」
って言われます。(実証済み)
・翼を授けよ!
疲れた時はレッドブル。
・結果にコミットせよ!
モテたい時はライザップ。
・今日は昨日ではないと心得よ!
一日たりとて、同じ地球はないのである。
・兎にも角にもちばりよー。
継続は力なり。
吉祥寺について、何か書こうと考えた時、三行くらいで終わってしまうのではないかと不安だった。
面白いことが思い浮かばなかった。
面白いかどうかはともかく、想いがチョロチョロと湧き出てきたので、それをそのまま書いた、
吉祥寺には山も海もない。広い空はまだある。野生の生き物もあまりいない。
まさに、人間の街だ。人間がそつなく生きていくための街だ。
決して貶していない。むしろ、尊敬である。
目に見えない努力が想像できる。
本当にいい街だった。
僕の吉祥寺愛は全て伝えた。
もう充分だろ?吉祥寺。
そう言えば皆さん、自分が隠れんぼ上手すぎて、鬼に申し訳なさすぎる時どうしてます?
—鼻からぼたもち 第五話—
「ここは…」
気がつけば、僕は夕闇迫る丘の上の公園に居た。
眼下に迫る街並みは、ぽつぽつと灯りを灯し始めていた。
既視感が僕を襲う。
この景色、どこかで見た様な…。
「嫌だ!帰りたくないよ!」
背後から聞こえた子供の泣き声が、僕を現実に引き戻す。
少し遅れて、カラスが夕焼けにさよならを告げる。
微笑ましい我儘に、僕はクスッと微笑む。
僕もそうだったのかな、なんて思いながら。
吹き抜ける風が湿っぽい。季節は夏に向かっている途中だろうか。夏の匂いがこの世界に充満し始めている。
夏はいつも物語の始まりを彷彿とさせる。
しかし、この湧き上がる夏への情熱は、いつも不完全燃焼のまま秋を迎えるのだ。
僕は、そんな青春時代を送った。
「もう置いていくからねー。夕闇様に連れて行かれても知らないからねー」
え?
脳内に電撃が迸る。
ゆうやみ…さま…。
額の汗腺が一気に開く。
まさか。
そんなはずがない。
その名を知っているのは…、僕と…。
「やだ!うわーん、お母さん、待ってよー」
「嘘…だろう…?」
焦点の合わない黒目がゆっくりと右に移動していく。少し遅れて、首が錆びついたギアの様に目線の方向へ動き出す。
振り向いた先に一番星が見える。山の影が虚を映し出している。
「ほらー、もう泣かないの。買い物して帰るよ。手伝ってくれるよね?力持ちだもんねー」
「うん…」
視界の端が去りゆく二人の背中を捉えた。
その瞬間、視界が水面のように揺れ動き出した。
全てが滲んでゆく。輪郭がぼやけていく。全ての境目が失われていく。
「かぁ…」
呼び止めようとする声を、必死に抑えた。
「君の記憶のどこかさ…」
最後に聞こえたカルマの声が脳内で響き渡る。
昂る気持ちは溢れ出す涙となって頬を伝った。
「母さん」
僕は二人に聞こえない小さな声で呟いた。
そこには、幼い頃の僕と、死んだはずの母の姿があった。
次回!!!【あれ、待って。卒業式で特攻服なん、俺だけ?】
次回も見てね!
追伸
吉祥寺へ。
新しい町に降り立ちました。
やっぱりエスカレータもないし、駅員もいない、ホームも一つしかない、駅ビルもないとてもとても小さな駅でした。
山の上に建つ家は、風が抜けていきます。とても気持ちがいいです。
い草の香りは自然と僕を眠りに誘います。
目覚ましは必要ありません。障子から差し込む太陽の光で自然と目が覚めます。夢が逃げていきません。
窓から見える景色は、広い空、緑、学校、緑、カラスです。とにかく抜けています。
渡り廊下からは偉大なる霊峰富士も見えます。
吉祥寺に住んでいた頃の家の広さより1.5倍広いのに、家賃は2割減です。
家の近くに一軒だけ、定食屋さんがありました。
吉祥寺なら1,600円は取られそうな定食が600円でした。
しょば代怖い。
最後の日、あなたの中にある、休日よく並んでいる評価の高い店に行ってみました。
どうしても好きになれませんでした。
何が良いのかも…、わからなかったです。
皆が皆、同じものを好きにはなれないと言うことがよくわかりました。
最後の最後まで学ばせてくれてありがとうございました。
そうそう、そういえば新居の近くにある駐車場にヤンキーが屯していました。
僕はいつエクゾディアになれますか?
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