日銀の財務悪化より物価安定目標未達の方が心配
安倍総理のインタビューを取り上げた記事が日経にありました。
市場関係者や民間エコノミスト等の声に影響されることなく、物価安定目標の達成をお願いしたいもの。
政府・日銀のコミットメント強化、財政金融政策の更なる拡張が必要と考えます。
"日銀による大規模緩和を巡っては、市場機能の低下や日銀の財務悪化といった副作用を懸念する声が強まっている。民間エコノミストの中には、2%目標の達成にこだわらず、金融政策の転換を探るべきだとの意見も出始めている"(引用元の記事より引用)
「市場機能の低下」を言うのであれば、デフレを脱却することで、テーパリングや緩和規模縮小が出来ることは米国を見れば分かることでしょう。
また、日本国債が市場において少ないと言うことであれば、政府・財務省に国債増発(復興財源、教育無償化など使途は様々)を求めてはいかがでしょうか。
「市場関係者」や「エコノミスト」の方々は「ポジション・トーク」をされることもあり得ますので、必ずしも参考にすべき「意見」ばかりとは限りません。(先のご意見は参考にすべきでない、との考えです)
日銀の「財務悪化」を懸念するのは、民間企業と通貨発行権のある中央銀行とを混同したミスリードです。
日銀の財務悪化で、日銀券に対する信認が無くなるのであれば、ぜひ、お手持ちの日銀券(諭吉さんの描かれた紙幣を特に)を私に頂きたいもの。
そもそも、現日銀法には債務超過時の規定はありません。
どうしても「財務悪化」が心配であれば、政府とのボンドコンバージョンをすれば、と前FRB議長のバーナンキが提案していました。
帳簿上の形式的な問題が心配、と言うことであれば、次の記事をご一読されることをお勧めします。
日銀債務超過論の不毛 | 野口旭 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
http://www.newsweekjapan.jp/noguchi/2017/05/post-9.php
"専門家が出口問題をさまざまな立場から論じることは重要である。しかしながら、日銀債務超過論はこれまで、異次元緩和政策を批判し続けてきた一部の論者や、どちらかといえば景気後退局面で利益を得てきた債券業界の関係者がもっぱら喧伝してきた主張である。政策への影響度が格段に強い政権与党の側が、一定の利害を背負ったそのようなきわめて筋の悪い立論に基づいて、現状の政策の早期停止を求めるような「提言」をするとなれば、その見識を問われることになるのは当然である。それは少なくとも、一方の見解に肩入れすることで、結果としてデフレ脱却に向けた政府および日銀のこれまでの努力や成果をないがしろにするものである。"
"「通貨の信認」とは要するに通貨価値が維持できているということであるが、そのために重要なのは、中央銀行が通貨供給を適切に管理することであり、それ以上でも以下でもないからである。中央銀行の損益や自己資本どうであろうとも、中央銀行が通貨供給を適切に管理できなければ通貨価値は維持できないし、その逆も真である。そして、中央銀行の通貨供給調節において、その損益や資本状況が制約になることはない。"
日本政府債務を考えるときに、総額と純額を区別しなかったり、統合政府(政府+日銀を連結)で見なかったり、と、基本的なことを押さえてから考えないと日本政府の財政を過度に心配してしまうことと似ています。
日銀は通貨発行権を持ち、紙幣を印刷することさえせずに、ボタン一つで(?)何兆円もの国債を買うことが出来る中央銀行であることをお忘れなく。
物価目標に関しては、以下の記事に私見をまとめています。ご参考まで。
政府・日銀で物価目標の見直しをせよ | COMEMO
https://comemo.io/entries/2048