職種もハイプ・サイクルで分析できる
ハイプ・サイクルはご存知でしょうか?米ガートナー社が提唱している、テクノロジーの成熟度と採用状況を示す手法です。ガートナー社が分析した先端テクノロジーの市場への浸透状況をレポートとして提供していいます。
ハイプ・サイクルの詳しい説明は本家に書かれているので、そちらをご参照いただければと思います。
で、このハイプ・サイクル、テクノロジーではなくても当てはまる事象が結構あるのではないかと思っています。特に最近よくそう感じるのが職種についてです。
例えば、データサイエンティスト、VPoE、スクラムマスター、Webマーケター、エバンジェリスト、デベロッパーアドボケイトなどが挙げられます。このような今までになかったような職種は現在進行形でハイプ・サイクルの安定期に向けて浸透している最中だと思っています。
そう思った根拠をそれぞれのフェーズでの現象を見ながら説明していきたいと思います。
黎明期
新しい職種は主に海外から持ち込まれます。外資系の日本法人でそのような肩書きを持った人が活躍したり、海外の動向に詳しい組織がそのような職種を導入したりします。
このような組織では、その職種の役割を非常によく研究していて、その職種を導入することではなく、組織を変革していくことを目的とし、そのための一つの手段として、その職種を導入する場合がほとんどです。
その結果、その職種の活動がその組織のビジネスに良い影響を与え、その成果が外部の目に止まったり、メディアに取り上げられたりし始めます。また、海外の情報もインターネット上や書籍などで徐々に増え始めます。
「過度な期待」のピーク期
情報が増えてくると、自社でも導入しようという流れが出始めます。実際外部の目に触れる情報は、目新しいものに焦点が当てられるため、職種を導入した前提となる組織変革の話は霞んでしまうのがほとんどです。
こうなってしまうと、その職種を導入すれば問題が解決するという「過度な期待」を前提に、職種の導入が進められてしまいます。当然、その職種の需要が高まれば、給与水準も上がっていき、その職に就こうという人も増え始めます。
これにより、職種を求める組織の需要、その職に就きたい人の需要が高まり、その職種関連の市場が盛り上がって行きます。こうなってくると、バブルのような状態となり、本質を見誤ったまま「過度な期待」がどんどんふくらんでいきます。
幻滅期
その職種を求める組織も、その職に就こうとする人も増えるとなると、「過度な期待」をそのままに、双方の質の低下が始まります。本質的なことを抜きに、その職種を導入すれば、当然期待したような成果など出るはずがありません。
そこで一気にその職種に対する批判が始まります。「〇〇という職種は役に立たない」、「結局、日本の企業には不要だ」といった論調が出てきます。「過度な期待」であればあるほど、この意見の力は強くなります。
おかげで、盛り上がっていたその職種の市場は一気に縮小します。あまり考えずにその職種の導入だけを目指していた組織は、その職種の採用を停止し、当然職種に対する需要も減るので、その職種に就きたい人も一気に減ってしまいます。
啓発期
市場が一気に小さくなったとしても、その職種を導入する元々の意味をしっかり理解して、組織変革を進めつつ導入を行ってきた組織にとってはその成果が目に見えてくるのがこの時期です。
そうすると、その職種を導入した事による成功例の数が徐々に増え、単に職種を導入するだけでなく、組織としてどう変わり、新しい職種と既存の職種の関わりをどう作っていくかといった情報が出てくるようになります。
これにより、「過度な期待」から幻滅してしまった組織の中からも、再度挑戦してみようという組織も出てきます。そもそも問題があり、それを解決しようというのですから、解決方法がわかれば、その方法を採用するのは当然のことです。
安定期
その職種を絡めた問題の解決ができた企業が増えれば、徐々にそれに追従する組織も増えてきます。ここまでくると、新しい職種は新しくなくなり、組織の中の一般的な職種となっていきます。
今現在のハイプ・サイクル
このように職種をハイプ・サイクルで分析することができるのではないかというのが私の意見です。その中で、最初の方であげたような職種がどこに位置するのかを考えてみました。
スクラムマスターやエバンジェリストは幻滅期を超え啓発期にはいった感があります。一方、VPoEなどは幻滅期に入っているのではないでしょうか?また、データサイエンティストやWebマーケターは「過度な期待」のピーク期にあると思います。そして、デベロッパーアドボケイトは黎明期から徐々に坂を登ろうとしている所だと思います。
この分析はあくまで私の感覚的なもので、客観的データに基づいたものではありません。特にWebマーケターに関しては定義次第で議論の余地があると思います。
このように、新しいと言われる職種の市場性を分析してみるのも、今後組織を作っていく上で参考になるのではないでしょうか?そして、幻滅期を超えたタイミングで効果を出すことで、他社に対するアドバンテージをつくることができるます。そうするためにも、よく調査をして、職種の導入だけに囚われず、効果を発揮できる組織を作ることがより大切だと思います。
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