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村上隆が実践するAI創作と作品への導入例:AIは芸術家の「相棒」になるか?


前書き

近年、イラストAIの登場により、芸術家の間で賛否両論が巻き起こっています。AIによって「人間の仕事が奪われる」「芸術の価値が毀損される」といった懸念の声が上がる一方で、AIを創作活動に活用するアーティストも現れています。その中でも注目すべきは、世界的な芸術家、村上隆氏です。彼はAIを積極的に創作活動に取り入れ、新たな表現に挑戦しています。

では、AIは芸術家の仕事を奪う脅威なのでしょうか?それとも、創造性を拡張する新たなパートナーとなりうるのでしょうか?村上隆氏のAI活用法を通して、「AIと芸術」の未来について考えてみましょう。

揺らぐ芸術の定義:AIイラストに対する賛否両論

イラストAIが生成する精巧な画像がネット上で話題を呼ぶ一方で、多くのイラストレーターから「簡単に誰でも美しい絵が描けるようになったら、絵を描く技術や努力の価値はどうなるのか?」といった疑問の声が上がっています。AIは、人間の「創造性」という聖域にまで踏み込んできたと言えるかもしれません。

重要なのは、作品を通してどのようなメッセージを伝え、どのような感情を喚起するかです。AIは、そのための表現手段を無限に広げる可能性を秘めています。

AIは「視覚化」のパートナー:構想を形にする

村上氏がAIを導入したきっかけは、膨大な数のバリエーションを生成し、イメージを具体化するためでした。

絵を描くっていうのは、芸術を行うにあたっては一番不要なことなんですね。僕の仕事っていうのは生き残る作品を作る方なので。

そう語る村上氏にとって、AIは「構想を形にする」ための強力なパートナーです。動画で紹介された「四神図」の制作風景では、村上氏がラフスケッチを描き、それをAIに通して様々なバリエーションの「ウロコ」を生成した説明されていました。AIが生み出した多様な構図や色彩は、村上氏の想像力を刺激し、新たなアイデアを生み出すきっかけとなっています。

特に興味深いのは、村上氏がオープンソースのAIと、自身に特化したクローズドAIを使い分けている点です。オープンソースのAIで幅広いバリエーションを生成した後、クローズドAIで自身の作風を反映させ、独自性を追求しているのです。

「共存」への道:AIと人間の役割分担

AIは、人間には不可能なスピードと正確さで、複雑な作業をこなすことができます。例えば、動画で紹介された「四神図」では、村上氏はAIを使ってウロコなどの細かい模様をAIの補助で制作したとの事。これは、従来の職人技では膨大な時間と労力を要した作業です。

しかし、AIはあくまで「ツール」です。AIには「感情」や「意志」がなく、それらを作品に込めて表現できるのは人間だけです。村上氏も、「概念そのものがアーティストの力量を決める」と語っています。

AI時代の芸術家は、AIを「ツール」として使いこなし、人間ならではの感性や創造性を活かした作品を生み出すことが重要になります。村上氏は、アシスタントと共に作品を制作する体制を築き、AIを効果的に活用することで、より「概念」に集中できる環境を構築しています。

結論

村上隆氏のAI活用法は、AIと人間の「共存」の可能性を示す好例です。AIは、芸術家の創造性を拡張するツールとなり、人間とAIの「共創」によって、今までにない新たな芸術表現が生まれる可能性があります。

AIに対する懸念や議論は尽きませんが、AI技術の進化は止まりません。重要なのは、AI技術の進化を冷静に見据え、そのメリットとデメリットを理解した上で、どのように活用していくかを考えることです。

100年後の未来、美術館に展示されるのは、AIによって生み出された作品かもしれません。そのとき、私たちは「AIと芸術」の関係をどのように捉えているのでしょうか?村上隆氏の挑戦は、私たちにそんな未来を想像させてくれます。

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