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佐賀のわらべうた『十五夜のお月さんな』

柳原書店『日本わらべ歌全集』には、<鬼遊び歌 〝人当て鬼〟>として収録されていました!

この記事では遊び方紹介よりも、この歌をどう理解するか? わらべうたを分析する際に、どういう視点をもったらいいか……ということを書いています!



十五夜のお月さんな

(鬼以外のみんなで斉唱)
十五夜のお月さんな 松の影
松からさされて 笹の影 ササヨーイ

(鬼だけの独唱)
あずきささ めささ
とったがりっかんしょ
***
佐賀県 鹿島市
採譜者:陶山聡
歌唱:三原すわ(明治24年生まれ)昭和34年

柳原書店『日本わらべ歌全集』第24巻_佐賀・長崎


遊び方として特徴的なところ

斉唱と独唱があるところは、「こんこんさん」など他の鬼遊びにもたびたび出てくる特徴ですよね。

鬼には単独の役割があり、その箇所は鬼だけが歌う。
動きが歌をつくる、という、わらべうたの原則にかなっていますね、明快です!🤩


「十五夜のお月さんな」では、
歌うときは立つ
・歌ってないときはしゃがむ

という動きもリンクしてくるのが面白い! 

つまり、鬼だけがしゃがんでいる時と、鬼だけが立っている時がある、ということになります。

これが「月が木の影にかくれたり、出てきたり」するという歌詞のなかの景色とも連動しているところが、なんとも美しい遊びじゃありませんか!!☺️


保育の目線だとどうしても〝鬼がひとりで歌うなんて本当?!〟難しすぎる💦という心配が先に立ってしまうかもしれませんが…。むしろその役割をになうことがワクワクの鍵であり、遊びを通してそのちょっとした勇気を体験できることこそ、わらべうたの醍醐味です。

いきなりが難しいのは当然ですので、他のシンプルな遊びから始めていって……やがてはこのような凝った鬼ごっこに到達することを〝目標〟にしていたいものです。

(今日明日の遊びのことだけ考えていると、なかなか目標をもつマインドには至りません。一年先、二年先、そして学童のその先のことまで…! 夢をもって遊びを考えたいものです☺️)



歌詞の考察

月が隠れたり出たりする、ということを、あどけなく面白がっているのだと、シンプルに理解できます。

「さされて笹の影」は、いかようにも解釈できますが、私は〝ささ〟と〝笹〟で韻をふんでる(シャレをいってる)と考えるのが自然じゃないかな?と思います。


ただ「松の影」は、
あれ?なんか元ネタがあるのかもしれない🤔
と、なんとなく引っかかりを覚えたので、かるく調べてみました。

「松の影」は、民謡の『博多節』に出てくるフレーズであることが分かりました。


≪博多節≫

博多帯しめ 筑前しぼり
筑前博多の帯しめて
歩む姿は柳 アリャ
ドッコイショ 腰
お月さんがちょいと出て松の影
ハイ今晩は

トトチンテンチン
主を待つ夜は いつしか更けて
秋というのに 気がめいり
雁の声さえ細り アリャ
ドッコイショ 勝ち
お月さんがちょいと出て松の影
ハイ今晩は

(明治29年頃の福岡民謡)

梁取三義 編『民謡百選集』彩光新書


これは国立国会図書館のデジタルコレクションで見つけました。(便利な世の中になってくれて嬉しい〜😭✨)

民謡であり、お座敷うたであるとのこと。
「松の影」は、舞踊のなかのうごき?とも何か関わりがあるのかもしれません。

民謡とわらべうたとが相互に影響しあうことはよく見られます。佐賀は陸路と海路に恵まれた土地なので、文化の流入がよくあるのだそうです。


明治29年ごろの民謡が、明治24年生まれの三原すわさん(歌唱者)に影響を与えることはありえそうです。これは年代的にも合致します。


とはいえ、考察はほどほどに……

あまり言葉の意味ひとつひとつにつっかかって、まるで〝隠された真実がある〟ように勘繰っていくのは、わらべうたに期待してるものが違うな、と、私は思います……。
(例えば『かごめかごめに隠された真実』とか、『本当は怖いわらべうた』みたいな、センセーショナルな題で人の気を引こうとするわらべうた解釈は昔からあります。)

第一に、子どもは遊びの連続性を高める(楽しく続かせる)ために、リズムと音節のくみあわせに趣向をこらすのです。その視点をもって見ていくことが大事だ、と、私は考えています。

まぁ、意味理解にこだわってみるのも良いのです。大人にとっては意味から入るほうが楽しいんです、よく分かります。

しかし、わらべうたを子どものために使うという目的からはズレるというか……大人の趣味・娯楽のほうに寄ってしまうかな?と思います。
それが遊びの理解によけいなフィルターをかけることは、避けなければなりません。

各自がどういう目的をもってわらべうたを理解しようとしているか? 結局はそれが大事ではないかなと思いました。

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