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変化し続けるまち港南 歴史から学ぶ、現代のオープンスペース活用とは -品川スタイル研究所 公共空間活用プロジェクト第1回公開会議レポート-

品川駅の東側、改札デッキを通り抜けると目の前に広がるまち、港南。

品川スタイル研究所では、会社員から学生まで幅広い人々が行き交うこのまち町を、どうすればより良くなるかについて考えています。2021年は「みんなで作る次のアクション」をテーマに、専門家の皆さまと公開会議を実施。そして2022年第1回となる今回は、港南エリアの歴史を振り返りながら公共空間活用の活用について語り合いました。

会議参加者


土屋 直亮 氏
渡邊倉庫株式会社(Wビル)開発部

荒木 信博 氏
株式会社丹青社CMIセンター プロデューサー

辰巳 寛太 氏
株式会社アール・アイ・エー 東京本社 開発企画部室長 兼 プロジェクト開発部

古屋 公啓 氏
港南振興会事務局長 港区観光大使

長岡 公一 氏
NTTアーバンソリューションズ総合研究所(品川シーズンテラス)
街づくりリサーチ部 上席研究員 一級建築士

加藤 友教(モデレーター)
品川シーズンテラスエリアマネジメント事務局
株式会社花咲爺さんズ代表

※土屋氏は所要のため 、当日ご欠席となりました。

「公共空間活用プロジェクト」とは?


近年、国内外でアイレベル(Eye Leve)と呼ばれる、通行者の目線の高さに合わせた街づくりが活発になってきています。広場や公道を利用してまちを活性化するこのアイディアは、港南エリアに適しているのではないかと、品川シーズンテラスエリアマネジメント事務局の加藤は投げかけます。

加藤:
港南には品川シーズンテラスのイベント広場をはじめ、様々な企業が共有スペースを開放しているうえに、広々とした広場もある。こういったエリアを有効活用するだけで、歩くだけで楽しいまちになれるのではないでしょうか。この公開会議では、公共空間の活用について、みんなで課題やポイントを整理しながら語り合いたいと思います。

港南にとってオープンスペースの活用が、エリア全体を活性化する1番のドライバーではないか。本企画では3回にわたり、この仮説を軸に専門家や視聴者の皆さんと意見を交わしていきます。

公開会議として目指すゴールは何かを決めることではなく、フラットに言葉を交わしあうことにあります。さまざまな視点から港南を見つめることで、新たな可能性を引き出せれば、他のまちとは違う港南ならではのチャレンジができると考えているためです。

しかし、港南とどのようなかかわりを持っているかは人によって異なるもの。なかには「港南をどうしたらいいと思う?」と急に聞かれてもわからない、という方もいるかもしれません。

そこで第1回となる今回は、港南の歴史や過去の活用事例を、みんなで学ぶところからはじめることにしました。むかしの港南はどんな姿をしていたのでしょうか?長年、港南のまちに住んできた、港南振興会事務局長の古屋公啓氏に話をうかがいます。

むかし港南は海だった? 江南の歴史を振り返る


「実はむかし、港南というまちは存在しなかったんです」

そんな衝撃的な事実から古屋氏のお話がはじまりました。実際に、江戸時代の地図を見てみると一目瞭然。現在の港南エリアはすっぽりと海に埋まっていることがわかります。当時、品川は港町として江戸の暮らしを支えていましたが、明治になると日本で初めての鉄道が品川-横浜間に開通。海路と陸路がともに発達した、交通のクロスロードとして活躍しました。

品川駅の目の前に広がっていた海が埋め立てられたのは、昭和になってからのこと。むかしは「高輪の浜」からとって、高浜町と呼ばれていました。埋立地となった当時、土地の権利を東京都が所有していました。そのため、汚水処分場やと畜場など、人口が増えつづける東京の生活基盤を支える施設が立て続けに建設されていきました。

現在の東西自由通路(レインボーロード)ができたのは平成になってからのこと。そこからは一気に開発のスピードが増し、私たちにも馴染みのあるビル街へと成長したのです。こうして歴史を振り返ってみると、都内の主要なまちと比べても港南の歴史は短く、常に開発と変化が繰り返されてきたことがわかります。

公共空間はどう活用されてきたのか


話は現代に移り、ここからは古屋氏が港南振興会として見届けてきた港南エリアの公共空間の活用事例について振り返っていきます。

前述の通り、港南エリアには多くの公開空地※が存在し、多くのイベントが開かれてきました。なかでも警察署や消防署と共同した防災、安全をテーマにしたイベントは港南口駅前広場をはじめ様々なスペースでの開催実績があります。こうしたイベントは、地域住民、企業、公安からも共感を得やすかったと古屋氏は語ります。
(※一般人が自由に通行や利用できる、ビルやマンションの敷地空間のこと)

そのほかにも夏祭りやハロウィンイベントなど、季節に合わせたイベントを多数開催。オフィス街のにぎわい創出として新聞に取り上げられ、街づくりの在り方としても注目されてきました。そんな数あるイベントのなかでも、存在感を放っていたのが、ファミリーロードレースです。このイベントは港南初のマラソンイベントでしたが、未就学児から大人まで幅広い方が参加。地域住民だけでなく、港南エリア外からも参加者が集まり、多いに盛り上がりました。まさにこのイベントは“オール港南”で挑んだ事例だったと言います。

古屋:
イベントを開催した当時は、港南エリアを拠点とする企業が続々と増えてきたタイミングでした。それぞれのコミュニティがばらばらになっていて、それぞれが何をしているのかわからない。そんな状況を打破しようと思い、さまざまな団体を巻き込んで委員会を設立して、企画と運営したのがこのイベントです。
普段足を踏み入れない大学構内をマラソンコースに設定、協賛品は地元企業、マラソン後には食肉市場のある街ならではのミートパーティーを開催するなど。この町でしか味わえないマラソンイベントができたと感じています。
イベントをやるとき、全体を通して大事にしているのは「なぜやるのか」「共感を得られるイベントであるか」というポイントです。それぞれの団体が力を出して充実感を得られる、オール港南として取り組めるイベントをこれからも企画したいと考えています。

カギとなるのは多様性と主体性の在りか


商業施設などの空間づくり事業を展開する株式会社丹青社の荒木信博氏は、歴史に感動したと語りました。そして港南に対する印象が少し変わったといいます。

荒木:
港南は品川の一部エリアという認識でしたが、港南という場所がある種の結節点になっているのかと感じました。そのなかで気になったのが、みんな実際に何を目的に港南に足を運んでいるのか、という点です。仕事や学校で来る方だけでなく、住民はもちろん、市場に通う方もいれば、出入国在留管理局生きのバスを利用する外国人の方もいる。他にどんな人がこのまちを行きかっているのか知りたいですね。ハードウェアとしての町だけでなく、幅広い人を受け入れる多様性のある土壌に興味がわきました。

では、多様性を活かしたまちづくりとはどのようなものなのでしょうか。
まちづくりに関するコーディネート事業を行う株式会社アール・アイ・エーの辰巳寛太氏は自身の経験を振り返りながらこう語ります。

辰巳:
実は、自分が入社して初めての仕事は港南での花見の席取りでした(笑)。そのときに出会った人や、過ごした時間は今でも結構しっかりと覚えています。
どうしても公共空間活用で成果を出そうとすると数値的になってしまいますが、誰か一人でもこういったストーリーを感じられた方がいいのではないかと思っています。そうやって、少しずつまちに愛着を持っていただきたいですね。何をやるかではなく、なぜやるかを突き詰めて、多様性をフォーカスしたいです。

多様な人が行き交う港南だからこそ、まちづくりにも多数の意見が飛び交います。しかし、それと同時にすべての要望をかなえられないことも多いそうです。

古屋:
やりたいことはいくつもありますが、いざ形にしようと思うとスキル不足など様々な課題が出てきて、実行にまで至らないことがほとんどです。「やりたい」から「やらなきゃいけない」まで、港南に関わる人の気持ちが動かないと、なかなか前に進まないですね。地域外からご提案をいただくこともありますが、今日明日だけじゃなくて20年後まで考えられた提案は少ない気がします。こういう時に当事者意識の重要性を感じますね。

企業向けにワークショップを行った経験もある、NTTアーバンソリューションズ総合研究所の長岡公一氏は、“当事者”のなかには、港南にオフィスを構える企業も含まれていることに注目。企業でも横のつながりが課題として挙げられると語り、先を見すえた活動が求められるといいます。

長岡:
わたしたちのような企業は、イベントをやって終わりにしてはいけない。自分たちの想いをカタチにする術を、地域の人たちと作り上げることが大事だと思いました。一時的なイベントだけではなく、何かを日常化して、それを街に溶け込ませるほうが必要ですね。

知ることがまちづくりの一歩


「変化し続けてきた歴史」「多様性を受け入れる土壌」「内側から主体性を発揮する」
さまざまなキーワードが出てきた第1回公開会議。イベント終了後もアフタートークが繰り広げられ、運河や港などの港南らしい風景は他にないポテンシャルであることが取り上げられるなど、次につながるヒントの多い回となりました。

もっと詳しく知りたい!という方はぜひアーカイブにてご覧ください。

品川スタイル研究所では今後もオープンスペースの活用をテーマに公開会議を予定しています。

この会議の目的は何かを決めるのではなく、みんなでフラットに意見を出し合い、港南の未来を考えること。港南に関わる方はもちろん、まちづくりに興味があるという方はお気軽にご参加ください。私たちと一緒に、港南の明るい未来を考えましょう。

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