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短編小説

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#うなぎ

8月2日

8月2日

 あっという間に8月で、いきなりものすごく日中問わずおかまいなしにやぶれかぶれに太陽の光がふりそそいでいる。もはや
 暑い……、し。
 という言葉しか出ない状況下のなかからのマスクという息苦しい布きれ。
 こんなに暑いなか、いちばん元気なのは、ウイルスくんかもしれない。
 土曜日の夕方から直人のうちにいく。天然鮎を持って。鮎を釣るひとにいただいたのだ。
「あれれ、髪の毛切ったんだね。みじかいし」

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うなぎ

うなぎ

 週末に近づくにつれて、直人にあいたくなる。あいたくはなるのだけれど、あうと拍子抜けするほどあいたかった気持ちがすっかりと失せてしまう。
 だから。
 直人がもう泥酔で眠っているだろう時間に故意にいく。たとえば、23時すぎとか、日曜日になろうとしている時間に。
 合鍵を鍵穴に差し込むタイミングでお隣の『ナカタ』さんが車に乗って帰ってきた。ばったりと鉢合わせという偶然。
 直人曰く、『ナカタ』さんは

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