道 009 トライアル
テーマパークの仕事に就きたくて色々模索している中で出会ったパレードダンサー。
ダンサーの彼が教えてくれた「オーディション」という雑誌を買ってみるとちょうど関東の大型テーマパークの募集が載っていました。
それも締め切り間近でした。
ダンスを学んだことはありませんでしたが、とにかく履歴書を送ることにしました。彼が言う通り、まぐれで合格できるかもしれないからです。
このチャンスを逃してはいけない。そう思いました。
ところが、よく募集要項に目を通してみると芸歴の記入が必要でした。
地域の催しで小さなステージイベントに何度か出たりしことはありましたが、きちんとした芸歴は何一つありません。
でも、どうしても諦めきれなかったので、同じ頃にステージイベントで知り合った舞台をやっている別の知人に相談しました。
「御堂筋パレードが有名だからそれに出場したことにすればいいよ。もし面接とかで細かく聞かれたら『●●●』という劇団の名前を出したらいい。御堂筋パレードではその劇団が有名やから。それともうすぐ僕らも舞台をやるからその名前も出したらいい。」
と知人はアドバイスをくれました。
今となっては経歴詐称で問題ありなのですが、当時必死だった私はそのまま履歴書に芸歴として記入し、自分のテーマパークに対する思いを便箋一枚に綴って応募先に書類を郵送しました。
振り替えってみると、とても大きな挑戦だったと思います。
何日かしたある日、仕事の帰りに郵便受けを開けてみると大きな封筒が届いていました。それはジェットコースターなどの遊戯具メーカー「トーゴ」の方から届いたものでした。そしてその封筒の下にダンサーオーディションの応募先からの封筒も届いていたのです。
「トーゴ」の封筒を開けてみると、遊戯具などが載った会社のパンフレットと手紙が入っていました。私は感謝の気持ちでいっぱいになりました。
そして期待と不安でオーディションの応募先からの封筒を開けてみると、なんと中には書類審査の合格通知が入っていたのです。
「やった、やった!はったりの書類が通った。オーディションを受けられる!」
その日届いた二つの封書に、私は「偶然」という言葉を感じませんでした。
「これは天が自分にテーマパークという道に進めと示してくれている!」
真剣にそう思ったのです。
010につづく