クローン病の私が『食べることと出すこと』を読んで
人間にとって毎日当たり前のように繰り返している食べることと出すこと。
それがある日突然思うようにできなくなったらどうなるか。
想像することはできるけど、実際に経験してみないと分からないことは多くあります。
この本は、潰瘍性大腸炎の著書が病気になって経験したことや考えたことをまとめた病気の記録。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。
同じように消化管の粘膜に炎症が起こるクローン病とならんで、明確な原因が不明で根治できる治療法がないため、難病に指定されています。
この例えが適切かどうかは分からないけど、めちゃめちゃひどい口内炎みたいな炎症が腸の粘膜にたくさんできていることを想像してみてください。
潰瘍性大腸炎やクローン病は10代や20代と若い年齢で発症することが多く、完全に治ることがないためそこから何十年も病気と向き合っていかなければなりません。
受験や就職など大事な時期に発症することが少なくないということ、見た目は健康そうに見えるから誤解されやすいという側面もある厄介な病気です。
私はクローン病を大学6年生の時に発症(診断されたのはその一年後)して、クローン病による腹痛や発熱や貧血に耐えながら国家試験を乗り切りました。就職は体力と気力が持ちませんでした。
この本では潰瘍性大腸炎を発症した著書が、病気になって体に起きた異変や感じたこと、周りとの付き合い方の変化などを、様々な文学や映画の一節を引用しながら切実に綴られています。
私もクローン病で驚くほど同じ経験や思いをしてきたので、まるで自分の経験をなぞるように読むことができ、苦しかったことや悲しかったことを思い出して泣けてきました。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、家族にさえきちんと理解してもらうことが難しい病気だと思います。自分自身も試行錯誤を繰り返しながら毎日病気と向き合っています。病気になって離れていった人も少なくありませんが、支えになってくれた人もたくさんいます。
もし十数年前のクローン病を発症したばかりの自分に声をかけることができるとしたら、そんなに悲観することはないよ、と伝えたいです。
病気になって諦めた夢もあるけど、新たな目標もできました。病気になって、自分を大切にすることの意味に気づきました。自分を大切にできないと、他者をも大切にすることができないということ。
この本は、いま見えている物事の背景とか、見た目に捉われないとか、大切なことは見えない部分にもあるということを気づかせてくれるとても良い内容でした。
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