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前立腺癌2 治療方針編

 約四ヶ月間、様々な検査をした後、治療方針を決めることになりました。

検査結果のまとめ・評価

 検査結果をまとめると、
・腫瘍マーカー
 →PSA値 6.0 ng/ml
・MRI
 →黒い影があるので更に要検査
・生検
 →12検体中1検体で癌確認
 →1/12→左右半分の1/2以下と推定
 →グリソンスコア4+3=7→悪性度は中間
・CT
 →前立腺周辺への転移なし
・アイソトープ核医学検査
 →骨への転移なし

 以上の検査の結果、現状の病期や悪性度は以下のとおりとなりました。

◯病期:T2a/N0/M0
◯悪性度:スコア7(中間)
◯リスク分類:低リスク〜中間リスク


↓病期(ステージ)の詳細はこちら


 ただし、検査の限界についてはちゃんと知っておく必要があります。検査のほとんどは画像診断なので微小の癌は発見しずらいこと。また、生検にしてもサンプル検査なので実際の広がりの程度を正確に把握することは難しいこと。
 癌の程度を正確に知るためには、本当は実際に前立腺を採取して、薄くスライスして、顕微鏡で観察するしかないようです。つまり、術後じゃないとわからない。

治療方針を提案される

 2023年10月3日
 検査結果を受けて、大学病院の先生から提案されたことは、

  • 今週来週すぐに治療しないと危ないという訳ではないが、このまま放置しておくのはお勧めできない。治療はちゃんとした方が良い。

  • 治療方法は、①放射線治療か②摘出手術の二者択一

  • 治療実績はどちらも同程度で、患者毎に事情が様々なので、どちらが良い悪いとは言えない。

  • いずれもリスクが伴うので、仕事や生活面も含めて十分家族で話し合って決めること。

  • 完治を目指す医者の立場からは、癌を直接確認できるという意味で手術が優位だが、患者毎に考え方が様々ある

 後から徐々にわかってきたのですが、この提案は、僕の年齢や病歴、体力なども考慮した上での判断です。

 癌の治療方法は、癌の状況(種類、発生場所、悪性度、広がり程度など)のみならず、患者の健康状態や年齢(余命、後遺症)、体力(手術や後遺症)、仕事、ライフスタイルなど様々なことを総合的に考えて判断することになります。これは、癌が簡単に治る病気ではないということの表れだと思います。治療には必ずリスク(後遺症など)があって、他の病気よりも高いリスクを冒さないと完治しないし、そもそも完治を目指すのかどうかすら自ら判断することになります。
 しかし当事者は、なかなか冷静に判断することは難しいです。どこから考えて良いのか頭がパンクしてしまいます。
 私の場合もそうでした。仕方がないので、まずは先生からの情報を文字化して整理し、妻に相談するところから始めました。もちろんネット情報も溢れていますが、できるだけ事実関係の情報をほどほどに絞って、悩みすぎないように注意しました。ネットの海に潜りすぎるとホントに怖くて危険を感じます。
 妻の知り合いに泌尿器科の看護師さんがいて客観的な生のアドバイスをもらったのはとても助かりました。
 その他、職場でも身内に同様の疾患を患った人がいて、辛い体験談を涙ながらに話してくれたことは心に刺さり、ちゃんと病気に向き合おうとなりました。本当に感謝しています。
 いずれも、僕の体のことをホントに心配してくれて、真剣に話してくれて、とても心強く嬉しく、前向きにしてくれます。

 さて、治療方法の全体像については、国立がん研究センターが運営するホームページにあるこの図がわかりやすいです。

前立腺がんの治療の選択

出典:がん情報サービス 

 私の場合、低リスクまたは中間リスクなので、手術か放射線治療となり、先生の言うとおりですね。

治療方法を考える

 さて、放射線治療と手術で、何が違うのか?
 再発リスク・治療効果については、どちらも同程度ということなので比較しない。
 費用については、どちらも健康保険適用なので高額医療費の限度額申請をすればなんとかなるだろうとして比較しない。
 気になるのは、痛み、合併症、治療期間なので、これらについて比較してみました。

①痛み

 手術は、腹部に小さな穴を数カ所開けて前立腺を取り出すが、全身麻酔をするので、手術中の痛みはない。術後の傷は暫く痛むが、昔のように開腹しないので、痛みは少ない。残る傷跡も小さい。

 放射線治療は、ホルモン注射で癌細胞を小さくした後、体外から X線を照射して癌を破壊するので、痛みはない。

→生まれてこの方、こんな大手術は経験したことがなく、痛みは苦手です。なので、放射線治療の方が魅力的です。ただ、妻曰く、優先するのは痛みより命に関わる事じゃない?と。それはそうなんだけど・・

②合併症

 手術すると、性機能障害(勃起不全射精障害)と尿漏れが確実に起きる。性機能障害は、術後すぐに起きて一生回復しない。尿漏れも術後から起きるが、徐々に回復し、大半は数ヶ月間程度で治る。

 放射線治療は、治療中の合併症はないが、20年後に直腸、膀胱で放射線障害がでる可能性がある。

→ 前立腺摘出手術と簡単に言いますが、実は前立腺だけではなく、精嚢も一緒に摘出するし、勃起神経、射精管も切断します。リンパ節を摘出する場合もあります。膀胱下の尿管は一旦切除して繋ぎ合せます。
 性機能障害という言葉だとわかりにくいですが、生物学的に生殖機能が失われることです。具体的には、性的興奮しても勃起しない、いわゆる勃起不全ED、まともなセックスができない、そもそも性的興奮するのかどうかもわからない、射精できない、子供を作れない、ということです。
 妻との関係性に絡むことなので、勇気を出して相談してみましたが、話がぎこちなくなってうまく会話が続しません。これから子供を作るつもりもないし、既にセックスレス状態なので、客観的にはなんの問題もないはずだけど、心のどこかでもやもやして釈然としません。男として大切のものが欠落して終わってしまったとでもいうような寂しい気持ち、精神的な落ち込みは多少なりともあります。"役に立たない"という言葉の意味するところがピッタリかもしれません。
 また、尿漏れについては、尿取りパッドの世話になることが精神的にグッときます。女性にとっては生理用品の延長のようで抵抗感は少ないかもしれませんが、私にとってはちょっとした新世界です。

 一方、放射線治療の合併症は、実感が湧かないので、あまりイメージできません。

③治療期間

 手術は、手術自体が数時間、その後10日間程度の入院が必要。

 放射線治療は、1日数時間×週5回照射。これを約1ヵ月半程度。すべて通院。

→ 手術をしてキッパリ入院する方が、休暇を取って仕事から離れて治療に専念できるのが魅力的です。
 一方、通院する放射線治療は、中途半端に仕事をしてしまいそうで、自分にとっては良くないでしょう。

第三の治療方法

 こんな比較をしている時、職場の同僚から、ふと、本当に二者択一?先端医療のような治療はないの?と言われ、何気なくググったところ、重粒子線治療の存在を知りました。
 ネットで調べ、知り合いに聞いた限り、一般的な放射線治療のマイナス面がなくなって良いことだらけの治療法で、デメリットと言えば、実施できる病院が少ないことくらいに感じ、これだ!と思いました。
 ということで、自宅から通院できて、重粒子線治療をやっている県立がんセンターでお世話になろうと決めた次第です。

重粒子線治療を希望する

 10月18日
 私から先生に治療方針の希望を伝え、結果的には、県立がんセンターへの紹介状を書いていただくことになりました。
 このとき、私が先生に伝えた希望は、放射線治療のうち「重粒子線治療」でした。(ただし、その後、考え直して、結局は手術を選択することになりますが。)

 この時の気持ちを簡単にまとめると、
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 摘出手術は体への負担が大きく、痛み、勃起障害、尿漏れに抵抗感があった。一方、放射線については放射線障害が気になっていたが、重粒子線治療ならば懸念がクリアするのではと期待した。
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手術に変更する

 ところが、最終的に重粒子線治療を辞めて、全摘出手術を選択しました。
 理由は、県立がんセンターの先生と話をして、放射線障害のリスクを詳しく聞いて考え直したからです。

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 重粒子線治療といっても放射線リスクはあり、余命のある55歳にはあまりお勧めしない。
 重粒子線治療のリスク

  • 重粒子線治療といえども放射線治療の域は出ないので、近傍の臓器に放射線障害が出てしまう。

  • 大腸や膀胱は前立腺と薄皮一枚の所にあるので、15-20年後の後遺症リスクが高い。

  • 特に膀胱からの出血は治療方法が無いので生活が大変。膀胱内に溜まった血液は管から抜くしかなかない。

  • 放射線を浴びた細胞は15-20年後に出血する確率が1/20。重粒子線治療はまだ実績がないが、1/40程度まで改善できればいいなという状況。

  • 生涯、自転車に乗れない。

  • 再発時治療で放射線治療が出来ない

つまり、
・余命10年以上
・手術に耐えられる丈夫な身体を持っている
・他に転移していない(限局ガン)
これらの場合は、
前立腺全摘除術がベスト
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次回に続く。

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