ニュージーランドの教育実習は余裕?
ニュージーランドで教育実習ってどうなの?なんてあまり気にしたことないかもしれませんが(笑)海外保育士を目指している人たちに向けて書いてみました。ニュージーランドだけに限らず、西洋文化圏であれば共通しているところがあるはず!
ちょっとだけ自己紹介。
ニュージーランド現地の有資格保育士(Qualified)として働いている純ジャパ。もともとは派遣保育士から始まり、無資格保育士(Unqualified)だったこともあります。その当時ありがたいことに数十園で働かせてもらい、ニュージーランド保育を学ばせてもらいました。これまでに学生ビザ、ワーホリビザ、ワークビザを経由して、遠回りしながらも永住権を取得。そこからまた数年、ちょっとだけ出世して主任(Team Leader)を任せてもらっています。最近では指導教官として、ニュージーランド現地の教育実習生を持たせてもらうようにもなりました。
新入りの保育士さんを指導する立場になったことで「ニュージーランドの保育士として何が求められているか」について改めて考えさせられました。私自身、まだまだ精進しているところです。それも含めて(忘れてしまう前に)記録としてまとめてみました。
教育実習の期間
意外かもしれませんが、ニュージーランドの教育実習は日本よりも長い傾向にあります。所属大学にもよりますが大体は4週間を4回ほど。それぞれ異なる園、異なる指導教官にお願いすることになります。残念ながら給料は出ませんが、もともと勤務している園(home centre)であれば給料をもらいながら教育実習を受けられます。
1日あたりの実習時間数は大体7時間くらい。開始時刻は自分の都合で変えることもできますし、残業させられることもなく終了時刻ぴったりにみんな帰っていきます。園内に残っているのは、園内Wi-Fiを拝借している実習生くらい(笑)
教育実習の評価基準
実習生の評価基準は所属大学によって異なります。大学によって独自の評価基準があるようですが「Teacher Standards」という教育省が定めている評価基準に沿っているものがほとんど。
実習生は自分自身でどの評価基準に集中するか決めることができます。実習ごとにすべての評価基準を満たす必要はありません。合計4回の実習を通して、最終的に満たせば良いというシステム。
ちなみに「Teacher Standards」とは、
Te Tiriti o Waitangi partnership
Professional learning
Professional relationships
Learning-focused culture
Design for learning
Teaching
のことを言います。詳しくはこちら。
これらの評価基準は教員免許更新のときも参考にするものなので、ニュージーランドで有資格保育士(Qualified)として働くための必須項目とも言えます。これらは更に細分化されていて、合計30項目に分かれています。
教育実習の記録
日本のものと比べるとめちゃくちゃ簡単です。ほとんどの場合、1週間ごとにA4用紙1枚分のレポートを提出するだけ。それも大学が枠組みを用意してくれているので、書き方に困ることはありません。前述した評価基準を満たすことできた、という証拠を自分で書き上げる感じ。
他にもいくつか補助的な書類もありますが、記録を残すために埋めるだけ。日案や週案を書くことも滅多にありません(指導教官によりますが)日本ほど書類に追われることはなさそう。
教育実習の流れ
◎ 事前準備
ほとんどの場合、実習生が担当してくれる園を探すことになります。電話でアポを取ったり、メールしたり、園まで直接来たりと人によって様々なので決まった手順はなさそうです。
園長先生から許可がもらえたら指導教官が決まります。園長先生自身が指導教官になることも少なくありません。そのあと大学教授(もしくは事務員)から連絡があり、教育実習の流れなどについて説明があります。基本的にはメール、ウェブサイトの説明を読むだけ。
◎ 実習直前
教育実習が始まったら、まずは指導教官と実習生が話し合って方向性を決めます。前述したように、評価基準は実習生が決めることができるので、そこで意見を聞いて問題がないかどうか確認します。ここで他の評価基準を選択するように求めることもできますが、基本的には実習生のやりたいようにやらせることが多いようです。
◎ 実習開始
そのあとは教室に行って子どもたちと対面します。序盤はどちらかというと観察に徹することが多いようですが、実習生によってはいきなりグループ活動を行ったりもします。ここは経験次第というところ。とはいえ園それぞれに特色があるので観察しつつ見極めるのが理想。
慣れてきたら徐々に活動を任されるようになります。クラフト、季節ごとのイベント、遠足の同伴など(指導教官の指示のもと)様々なことに挑戦させてもらえるはず。大抵は活動準備も実習時間として計上できます。
さすがに実習生自身の書類作りは実習時間外ですが、指導教官によっては(例外的に)時間を与えることもあるそう。実習は実習、基本的には園に貢献している時間だけが実習時間になります。
◎ 三者面談
最後に担当教授、指導教官、実習生の三者面談があり、そこでの評価をもって教育実習は終わります。指導教官からの評価が大きく反映されるので責任重大。しかも三者面談で新しい課題が見つかったとしたら、それは指導する側にも責任があります。指導が行き届いていなければ、その理由を説明できなければなりません。
例えば、ある実習生は教育理論を理解するように何度も言われていたにも関わらず、それを三者面談のときに口頭で説明することができませんでした。このときメールの履歴、レポートなどがその証拠になります。三者面談は指導教官自身の評価にも繋がるので緊迫した空気になりがち。
実習生たちの傾向
私の働いている地域(オークランド)には、国外からの留学生もたくさんいます。語学学校に通ってからニュージーランド現地の教育学部入学、そして教育実習という流れが多いので実習生たちの英語力は比較的高め。社会人経験のある年配の実習生もめずらしくありません。昇進・転職を目標にしている人たちはモチベーションも高い印象です。
その一方、永住権を取るためだけに幼児教育を選択した人たちもいます。モチベーションも低いので指導することすら困難。指導教官が見ていないところで携帯を使っていたり、子どもたちと話そうともしなかったり、そもそも保育士になりたくない人たちも教育実習を受けていたりします。
だからこそ真面目な学生は重宝されます。人手不足が常な業界なので、教育実習が終わってすぐに仕事が決まったというパターンも結構あります。もちろん教育実習期間中にどれだけ貢献できたかが基準になるので、その園で働きたいと思うならしっかりアピールしなければなりません。休憩のたびに園長室に通っている強者もいました!
指導教官たちの傾向
これもピンキリです。実習生を担当すると報酬がもらえるのですが、これだけを目当てにしている指導教官もいます。しっかりした指導もせずに、書類だけ添削して終わらせるような人もいるようです。日本と同じように掃除などの雑務だけを押し付けてくるような指導教官もいますが、園長先生もしくは大学に相談すれば解決してくれます。
その一方、ちゃんと親身なって指導してくれる指導教官もたくさんいます。でたらめに叱責されることも説教されることも滅多にありません。教育実習生であっても個人として尊重される、というのはニュージーランドの良いところ。教育実習の最後にはお別れ会があったり、涙を流して惜しんでくれるような人もいます。
最後に
日本の教育実習はまだまだ過酷だと聞きましたが、どうなんでしょう。正直なところ、子どもたちの人生に関わる仕事なんだから教育実習は厳しくて当たり前!という老害的感覚にも共感できてしまうんですよね。だけど段々とこの考え方も時代には合わなくなってきてしまったのかなと。保育士になりたいという人も減ってきているようですし、今後どうなっていくのやら。
ニュージーランドで保育士になろうと考えている人たちにとっては気持ちが楽になったのではないでしょうか。全然キツくないので安心してください!英語力に自信がなくてもなんとかなります。自分自身の課題を見つけて、できないことをできるようにするのが実習ですから。学ぼうとする姿勢があればみんな助けてくれます。最初から完ぺきを目指す必要はありません。
この記事が少しでも役に立ったら嬉しいです。
ではまたっ