海外保育士は良いことばっかり!でもない?
海外保育士として働いていみたい!という人が最近増えてきた気がします。海外移住が流行っているおかげかも?私の住んでいるニュージーランドでも、日本だけでなく他国からも多くの保育士さんが移住してきています。
ちょっとだけ自己紹介。
ニュージーランド現地の有資格保育士(Qualified)として働いている純ジャパ。もともとは派遣保育士から始まり、無資格保育士(Unqualified)だったこともあります。その当時ありがたいことに数十園で働かせてもらい、ニュージーランド保育を学ばせてもらいました。これまでに学生ビザ、ワーホリビザ、ワークビザを経由して、遠回りしながらも永住権を取得。そこからまた数年、ちょっとだけ出世して主任(Team Leader)を任せてもらっています。最近では指導教官として、ニュージーランド現地の教育実習生を持たせてもらうようにもなりました。
右往左往しながらも、日々幸せを感じながら仕事させてもらっています。保育士として海外移住したことに(今のところ)後悔はありません!だけど冷静になって振り返ると、良いことばかりではありませんでした。苦悩も同じくらいありました。年数を重ねるごとに、見えてきたこともたくさんあります。
海外保育士を目指している人たちに向けて、ニュージーランドの保育士の良いところ(そしてその裏側)について正直に書いてみました。ニュージーランドだけに限らず、西洋文化圏であれば共通しているところがあるはず!
子どもが活き活きしている+野生?
ニュージーランド保育は自由保育が主体です。どこの園に行っても、子どもたちは大抵好きなことをしています。生活を共にしながらも、個性を表現できる場所があることに感動しました。
保育士の役割はどうかと言うと、子どものサポートに頭を悩ますわけです。どう介入しようか、そもそも介入する必要があるのか、介入するとしたら何ができるのか、なんてことを考えながら保育をしています。目の前の子どもに集中できるのはありがたいことだと感じています。
日本では数十人を先生ひとりに任せることもあるので、そうなると子どもひとりに集中するのはなかなか難しいですよね。余裕を持って保育ができるのは、ここで働いていて良かったと思える大きな理由でもあります。
その一方、活き活きとした子どもたちに圧倒されるかもしれません。一歩外に出れば、水遊び、砂遊び、かくれんぼ、かけっこ、遊具遊び、いろんなことが同時に起こっています。もちろん怪我や喧嘩もあります。最初は目が回ってしまうかも?
それに加えて、自由保育に耐性がないと「子どもたちが学んでいない」と感じてしまうかもしれません。数多くのアジア出身保育士がこれに悩んでいるのを目の当たりにしてきました。西洋文化と東洋文化で保育実践は全然違います。これを許容できないとストレスを感じてしまうかも。
プレッシャーが少ない+ゆる過ぎ?
これはニュージーランド特有かもしれませんが、仕事に対するプレッシャーが(日本と比べると)ほとんどありません。遅刻しても叱責されることはありませんし(もちろんそれが続けば信頼を失いますが)よっぽど深刻な失敗でなければ笑って見過ごしてくれます。
その一方、慣れてくるとイライラしてしまうかも。というのも、保育に対する真面目さが足りていないような気がしてしまうから。子どもには背を向けない、先生同士の私語は最低限に、というような「日本保育の常識」はこの国では通用しません。それが嫌になってしまう人もいます。
私自身、そんな葛藤もありました。だけど他人のことで悩んでも仕方ありません。このゆるさが好きで移住したんだろ!と思い直しました。
そもそもみんながテキパキしていたら外国人である自分には仕事がなかったかもしれませんし。ある意味、頑張らない人たちのおかげで自分が輝けているという事実もあるわけで。ひねくれた考えかもしれませんが(笑)これが一番納得できるような気がしませんか?
業務内容が少ない+対応力が問われる?
ニュージーランド保育はそもそもの業務内容がめちゃくちゃ少ないです。現場の先生たちはそれでも「時間がない」と言いますが、慣れてしまえば日本とは比べものにならないくらい簡単。日案も週案もありませんし、連絡帳も書かないのが普通。デジタル化も進んでいるので、子どもたちの記録はアプリなどで共有しています。紙媒体のものに手書きすることも(署名以外)滅多にありません。乳児クラスの場合には多少増えますが、それでも分担するので先生個人の負担は大きくありません。しかも書類のための時間(数時間/週)を作ってくれる園がほとんどです。
活動準備もあまりありません。ここでは自由保育が主体なので、事前に準備することも限られています。代わりに環境整備に時間を使うことがほとんど。それも慣れてしまえば時間はかかりません。季節ごとの活動もありますが、日本と比べると多くないはず。残業も滅多にしません。
その代わり、対応力が評価される傾向にあります。ニュージーランドの保育計画には余裕があるので、計画通りに進める能力はあまり評価されません。子どもの反応によっては計画をガラッと変えてしまうこともあるので、子ども中心の保育を意識しながら臨機応変に行動することが求められます。
ひとりではなくチーム+人間関係が命?
保育士ひとりでクラスを持つことは稀です。基本的に数人はいるので、プレッシャーも業務内容も大幅に減ります。何か問題があっても何人かで対策できますし、失敗しても誰かがサポートしてくれます。
他の先生たちとずっと過ごすことになるので、人間関係がうまくいかないと地獄です(笑)なるべく誰とでもうまくやっていけるようにしなければなりません。それは優しくする、ということではありません。ある程度の距離感を保って、それぞれの役割を尊重できる関係作りをするということです。
とはいえ勤務時間外のコミュニケーションを強要されることはないので気楽ではあります。子どもだけでなく大人になっても個々の意向が尊重されるのはニュージーランドの良いところ。
パワハラがない+反省しない?
ニュージーランドは西洋文化圏ということもあり、保育士同士であれば年齢がどれだけ離れていても対等程度には扱ってくれます。
上下関係は(一応)存在しますが、理不尽に怒鳴りつけてくるようなパワハラ上司は滅多にいません。たまに嫌味を言ってくる人もいますが(笑)私が出会ってきた保育士さんたちは親切な人たちばかり。
良くも悪くもキツく当たってくるような人は少ないので、注意されていることがわからなかったり、気にしないような人もちょくちょくいます。こちらがどれだけ論理的に正しかったとしても、逆ギレしてくる人もいるので注意しましょう。それも含めて多様性だと思えないなら厳しいかも?
休みを取りやすい+いつも人手不足?
ニュージーランドでは年間4週間の有給休暇がもらえます。ちなみに病欠、忌引を抜いた日数です。基本的にはいつでも休めるし、長期間でも構わないという保育園がほとんど。というのもニュージーランドでは有給休暇に使用期限がないので、会社側からすると「昇給させる前に使い切ってほしい」という意図があるから。
これが学校(+幼稚園)で働いてる場合、有給休暇が「学期休み」という扱いになります。合計すると、なんと年間2ヶ月くらい休みがもらえます!ただし休みが取れる時期は決まっています。
誰もが休める一方で、結果として先生が足りていないことが多々あります。例えば、保育士さんが12人在籍している保育園であれば(単純計算)毎日誰かひとりは休暇を取っていることになります。派遣保育士さんを代わりに入れてくれる保育園もありますが、そこまで多くありません。
給料が良い+他業種のほうが良い?
有資格保育士になれば給料はそこそこもらえます。ざっと日本の倍くらい?こっちの物価が高いのは確かですが、普通に暮らしていて困らないくらいにはあると思います。
しかも!ここ数年で保育士の給与体系がガラッと変わりました。今では小学校~高校の先生たちと同等の給料がもらえる、という日本ではありえないようなことが起こっています。それまでは有資格保育士でさえ最低賃金に近い時給でしたが、人によっては倍近くにまで跳ね上がりました。
ただし頭打ちも早いです。学歴にもよりますが、大体10年くらいで最高給与額に達してしまいます。そのあとはインフレ次第で、民間企業が上がれば先生たちも上がるという感じ。それでも(2024年11月時点の為替で)年収900万円あたりまでは伸びるようです。後追いではありますが、ここ何年かは保育士にとって良い方向に進んでいると言えそう。
とはいえ正直なところ、お金を稼ぎたいのであれば保育士になるのはおすすめしません。ニュージーランド全体で見ると、他業種のほうが断然良い給料がもらえます。IT、医療、工学、金融、不動産など(もちろん役職にもよりますが)儲かる業種はいくらでもあります。その一方、教育業界は人手不足なので仕事が見つかりやすいという利点はあります。
外国人でも働きやすい+差別もある?
ニュージーランドは(オークランドは特に)多文化国家なので外国人でも働きやすいのは間違いありません。求められる英語力も高くはありませんし、とりわけ乳児クラスは実力があればなんとかなります。多様性があることを良しとする文化なので外国人であることが評価されたりもします。
その一方、差別そのものが絶滅したわけではありません。外国人に慣れていない年配の保育士さんもちらほらいるので、悪気もなく人種差別的なことを言ってきたりします(笑)嫌味ったらしい人にも出会ったりしますが、それは日本国内でも同じかもしれませんね!
外国人保育士からすると、ニュージーランドには働きやすい環境が整っています。保育士不足という現状も相まって、そのまま移住することも難しくありません。私自身、ニュージーランドの永住権が取れたのも保育士という職業ありきでした。保育士として海外移住を考えているなら、ニュージーランドはおすすめです。
最後に
海外保育士の良いところばかりではなく、その裏側も知ってほしい!そう思って(長くなりましたが)まとめてみました。
これは「問題があるからやめろ」という意味ではありません。ニュージーランドを含め西洋文化圏で働いていれば、いつかは問題に直面するはずです。そんなとき幻滅してしまうのではなく「問題のあるところには良いところもある」そう感じてもらえたらいいなと願っています。
この記事が少しでも役に立ったら嬉しいです。
ではまたっ