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《物語の終わりは始まり》

 傷つけたかったわけじゃない。告白してきたのは彼女からだったし、今思えば僕もバカなことをしたと思った。彼女は今、目の前でうずくまって泣いている。心が痛まないわけじゃない。それでも僕は…。

 理香と僕は高校からの付き合いだ。もう5年になる。高校時代は俊介と3人で一緒にいることが多かった。俊介は運動ができて、顔も良かった。勉強はだめだったが。理香は勉強も運動もでき、美人だった。僕といえば勉強ができるくらいで、他人にあまり興味がなく、わいわいしてるより1人で音楽を聞いている方が好きなタイプだった。2人と一緒に行動するようになったのはただの偶然で、帰り道が同じだったから。1人で行動するのが好きだった僕は色々な穴場を知っていた。そこへ2人を連れていったことがきっかけだったかもしれない。僕はてっきり2人が付き合っているのだと思っていた。でもそれは間違いで、俊介には彼女がいた。その彼女は学校は同じではなく、たまに放課後電車に乗って会いに来ていた。彼女は彼方という名前で、陸上部だった。俊介とは大会で出会ったらしい。ベリーショートがよく似合うボーイッシュな人だった。4人で行動することもあり、その時にはたまに、理香が切なげな表情をすることがあったのを僕は知っている。

 それから数ヶ月たったある日、理香から告白された。その時に僕の脳裏にはあの時の顔が焼き付いていたが、彼女なりの想いもあったのだろう。その頃から2人で行動することが増えていき、いつの間にか僕の頭から彼女のあの顔は消えていた。だが、記憶とは恐ろしいもので、引き金を引かれれば、湯水の如く溢れてくる。

 きっかけは5ヶ月前のバイト帰り、理香と俊介が手を繋いで歩いているのを見てしまったこと。見た時は理解が追いつかなかった。他人の空似かと思ったが、それは違った。何年経っても知り合いの声は覚えているものだ。記憶の声と2人の話し声が一致した。声をかけようかとも思ったが、やめた。彼女は彼女の想いに正直になったのだ。であれば僕も自分の気持ちに正直になるべきだ。

 ある日、偶然彼方に会った。久しぶりということもあり、話が弾んだ。
「あっ、ごめん。私この後予定あるんだ。また今度飲みにでも行こうよ」
ウインクをしながらグラスで飲むような仕草をした彼方は魅力的だった。
「もちろん。また連絡して」
それから彼方とのやり取りは毎日続いた。毎週とはいかないが、月に2回は会うような関係になり、理香より彼方といる方が楽しかった。ある日彼方が唐突に言った。
「私こないだから一人暮らししてるんだけど、よかったらこれから一緒に暮らさない?」
その言葉がすごく嬉しかった。ただ、お互い明確にしていないことがあった。恋人関係のことは話してこなかった。
「いいの?」
「いいって?あぁ、俊介?やっぱり理香とのこと知ってた?いいよ、あんなやつ。私はあいつの連絡先消したし、もう電話もこなくした」
何もかもが知られている気がした。少し後ろめたい気持ちはありつつ、お互いに曖昧にしてきてしまったことだと自分を納得させた。そして僕の気持ちももう戻る気持ちはなかったし、彼方の言葉で決心がついた。
「ありがとう、準備してくる」
彼方と軽くキスを交わし、そのまま理香の所へ向かった。1つの関係を終わらせるために。

 彼女はうずくまったまま「どうして……どうして……」と繰り返している。僕のことなんて見てなかったくせに。このままでは埒が明かないので、話を強引に進めた。
「今までありがとう。色々とドキドキして楽しかった」
我ながら皮肉めいてるなと思いながら、理香に背を向けて彼方の家に向かった。その移動中、理香への申し訳なさより、これからの生活のことばかり考えてしまい、わくわくした。

 彼方の家に着き、インターホンを押すと、すぐに彼方が出てきた。そして玄関でハグをしたかと思えば「おかえり。そして、これからよろしく」と耳元でささやかれた。部屋の奥の花瓶に僕のあげた一輪のバラだけが差してあるのを見ながら、抱きしめかえした。

【補足】
冒頭と途中にある理香と「僕」の別れ話はどんなことがあったのか、貴方の想像でお楽しみください。うずくまっていると書きましたが、暴力は奮ってないと思ってます。ですが、場合によっては物が飛び交ったなんてこともあるかもしれませんし…想像してください。書こうかとも思ったのですが、隠した方が楽しそうだと思って隠しました笑

最後の一輪の薔薇ですが、花言葉は「一目惚れ」…さて、これでお分かりですか?「僕」の正直な気持ちはそういうことです。

今思えば「僕」に名前つければよかったななんて思ってますが、名前って少し悩むんですよね。主人公ならカッコイイ名前付けたいですが、今までのと被ってたり?それは避けたいんです。いつか今までのキャラクターが出てくる物語を書こうとした時に、同じだと混乱するかと思って…。今回…被ってないよね?大丈夫かな。確認しろよですよね💦
すみませんm(_ _)m

これから俊介と理香はどうなるんでしょうね。「僕」と彼方はどんな生活を送るのでしょうね。
楽しみですね!

今回も読んで頂きありがとうございました!

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