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全国の点字ブロックがスマホで案内をしゃべったら
【パンダナビとは?】
パンダナビは、筆者が発明したコード化点字ブロックの愛称です。
点字ブロックのタイルの突起に黒いリングをはめて、個々のタイルを区別できるようにします。
視覚障害者がスマホで読み取って、案内情報を取得します。
【概要】
日本で発案された点字ブロックはとてもよく考えられており、白杖で歩く人たちにとっては命綱となっています。
ですが、タイトル写真に見るように、分岐があったとしても、これが改札口に向かう分岐か、券売機に向かう分岐か、知りようがありません。
そこで、分岐点にあるタイルの、25個の突起のうちの8個に対して黒いリングをはめて、ユニークなパターンを形成することにします。
それを歩行者が持つ端末(スマホ)で読み取って、音声で案内情報を提供するわけです。
【横断歩道の停止線をパンダタイルにすると】
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写真のようにパンダタイルを設置すると:
① ここがどこの交叉点かわかる
② 杖が触れなくても停止ポイントが見つけられる
③ 横断するとどこに行くのか分かる。
④ およその横断方向が分かる。
【符号化の要点】
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25の突起のすべてを使うと2の25乗通りの情報がエンコードできます。
本提案では、外周に5個配置して基準マーカーとし、残りの3個を内側の9個の突起にはめることにします。
9個から3個を選ぶ場合の数は84になります。
【文末動画リンク参照】
【情報量より確実性を優先】
マークが見えない人は、このタイルにスマホを向けることができません。なので、普通に歩いていて検出できるよう、余裕(redundancy)が重要になります。
黄色いタイルに配置された大きな黒い丸はとてもコントラストが強く、判別が容易です。
【なぜ84通りのパターンで足りるのか】
通常、スマホは位置情報を取得しており、建物内であっても、100m程度の誤差で位置が知れます。
つまり、この範囲に同じパターンのタイルが重複しなければ、タイル間の混同はおきないわけです。
【タイルに関するデータはクラウドサーバーにおく】
このサーバーには全国のタイルに関するデータが格納され、歩行者からアクセス、参照することができます。
タイルデータとしては、緯度と経度、パターンのID、パターンの向き、そのタイルに関連づけられた案内情報が含まれているとします。
【タイルの登録】
どんなすばらしいアイデアでも実現にコストがかかるようでは普及しません。
本提案では、既設の点字ブロックに黒いリングを接着して、スマホで撮影しながら音声で案内文を吹き込むだけで登録が終わります。(後記)
音声認識された案内文は現場からサーバーに送ります。1タイルあたり15分、材料費は100円程度に納められそうです。
【この方式の長所】
・既設の点字ブロックにはめるので位置合わせが不要
・黒いリングは非常に目立つ
・黒いリングは安価
・靴底は突起にあたるのでリングには触れず、リングは摩耗しない
【誰でもできるタイルの設置と登録】
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パンダタイルを設置する作業は簡単なので、説明を受けたボランティアなどが作業できます。
業者に発注するのに比べてはるかに低コストでできるので、普及が期待できます。
【点字ブロックは公共インフラ】
公共の設備に特定のアプリだけが使えるようなしかけを付与するのは説得性に欠けます。
よって、パンダタイルおよびサーバーは公共の財産とし、視覚障害者に限らず、誰もがいろんな目的で使えるようにするべきでしょう。
この観点から、すべてのパンダタイルやサーバーのデータはパブリックドメイン、誰もが無料で使えるようにします。
また、リング検出に関する画像処理のソースコード等も、パブリックドメインとして公開します。
【経路誘導について】
パンダタイルは、言ってみれば交叉点に立つ方向案内板であり、それだけでは経路誘導はできません。
また、点字ブロックはどこまでも続いているわけではないので、どこへでも案内できるわけではありません。
経路案内は他の歩行ナビアプリに任かせ、それらのアプリが現在位置を正確に把握するための基準として活用するのが望ましいと考えます。
【まとめ:日本じゅうの点字ブロックをスマホでしゃべらせる】
日本の点字ブロックは世界に誇る視覚障害者のためのインフラです。
この、日本中に敷設されている点字ブロックに黒いリングを付けて、それをスマホのカメラで読み取り、音声で案内させる、という構想です。
リングを付けたり、案内情報を登録する作業は、かんたんな説明を受ければ誰にもできます。
行政とNPOなどが連携して、日本中の点字ブロックがしゃべるようになったらどれだけすばらしいでしょう!
【参考】
パンダナビに関する特許出願
特願2021-123394(歩行者用音声案内システム:P2224SBT)
【参考動画】
タイル登録アプリのデモ
https://www.youtube.com/watch?v=VG7bHkp9R6I
実際の交叉点でのデモ
https://www.youtube.com/watch?v=uE7r3WYeqo4
多言語に対応できることを示すデモ
https://www.youtube.com/watch?v=rm7niFt2CHA
リングを並べてエンコードする原理の説明とデモ
https://www.youtube.com/watch?v=VEF8N1HALbo&t=16s