東京とソウルは715マイル/ミンヒ
写真を撮っているとき=会いたいひとと会っているとき
僕は生きていることを実感します
ミンヒさんは韓国から留学で日本に来ている学生さんで
撮影会モデルのアルバイトをしています
この日はソウルの高校で着ていた制服を身にまとい
はじめましての撮影です
ミンヒさんはモデルのキャリアは半年ほどですが
僕には僕のモデル選びの尺度があって
実力あるベテランだからいいとか
写真をよく知っているからいいってことでもありません
僕の感性の波長ってつねに変化しているんです
そのときの周波数でチューニングして
フィットするひとがそのとき会いたいひとなんです
そのインスピレーションを大切にしています
でも
若い女の子を撮っていると
おじさんが若い女の子を撮っているということで
偏見を持たれがちです
仕方ないことかもしれないなと理解はしていますが
写真を愛好するひとからもそう見られるのは悲しいです
ひとを撮っているんです
ちゃんと写真に写っているひとを見てほしい
そこにそのひとがいるって
すごく素敵なことだと思うのです
僕はことし
ポートレート界隈で結構ネガティブな思いをしてしまって
一時は撮るのも嫌になりかけていたのです
SNSなんか全部やめちゃおうかな、なんて
「いつから写真を始めたんですか?」
ミンヒさんから聞かれました
13歳の頃に登校拒否児童で母親に引き取られ
アメリカ旅行に出してもらったこと
そのために初めて一眼レフを買ってもらったこと
撮った写真を勇気を出して学校へ持って行ったら
クラスメイトたちが見てくれて
いっぱい友達ができたこと
気がついたら毎日学校に通っていたこと
そんな話をミンヒさんにしながら
僕は原点に戻ったんだなと感じました
あの頃撮影の練習になるからとカメラ店の撮影会に
クラスメイトと参加しモデルさんを撮りました
人間なんて
ましてやモデルとカメラマンなんて
いつ会えなくなるかわからないじゃないですか
だから撮影はつねにそのときの「一度」なんですよね
たとえ十回会っても百回会っても一度きりなんです
一度きりの繰り返しなんです
少年時代のあの日
撮影会で撮ったやさしいモデルのお姉さんとは
あの日一度しか会っていません
でも撮った写真の中で笑顔でいてくれる
その笑顔がずっと心に残っているんですよね
そんな儚い刹那を
写真って
残してくれるじゃないですか
「今日はミンヒさんとお会いできてほんとうによかった」
そんな気持ちが少しでも
写真にうつっていたら嬉しいです