小庭のアボカドーー土壌を破壊する悪魔の果実
1年ほど前、家人が庭に植えたアボカドが思いのほか成長し、すっかり大きくなった。
一方、その周囲の草花たちはすっかりしおれてしまい、噂通りの「悪魔の果実」ぶりを発揮している。
一粒の種がここまで生態系にインパクトをもたらすのだ。
アボカドは脂肪分が多く、「森のバター」と言われているらしい。色合いや風味、舌触りに独特のものがあり、日本でも人気の食材となって久しい。
その原産地は南米であり、はるばる海を越えて運ばれてくる。日本語を母語とする我々の多くにはなじみがなく、そこに暮らす人々の顔が見えない場所からやってくる。
そんなアボカドは水資源を枯渇させ、森林破壊をもたらしているという記事を目にしたことがあるが、我が家の庭でも数年越しにそれが実証されたというわけだ。
なんでもその収益性に着目した麻薬組織がアボカド・ビジネスに乗り出し、地域の生産農家に過酷な労働を強いているというが、庭先でしおれてしまった草花に目にやればそのことがよく理解できる。
しかし一つたしかに言えることは、アボカドにはアボカド的なあり方しかできないということだ。周囲の草花を枯らす代わりに動物たちの一時の養分となるか、そもそも消えてしまうのか。
人間世界で起きていることも同じ話。もし庭先で実がなったら、その種を植える場所は私の中でもう決まっている。