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「AIと著作権に関する考え方(素案)」の解説(一般向けver)

1.はじめに

2023年12月20日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会から、「AIと著作権に関する考え方(素案)」(以下「素案」)が公開されました。
あくまでも素案であり、今後の議論やパブリックコメントにより変更される可能性がありますが、少なくとも一定の方向性は示されたといえます。
素案は、今後のAI開発・利用や著作権者に大きな影響を与える可能性があることから、その内容を知ることは重要ですし、問題点・疑問点があればパブリックコメントで意見を述べれば、回答により明確化されたり、改善する可能性もあります。
本記事は、素案について多くの人に知ってもらうことを目的としています。その目的の関係で、一般人の方向けの解説となっています。法律専門家向けの解説は別の機会にしたいと思います。
素案は19頁の文書ですが、意外と内容があるので、本記事ではまず概要を説明し、詳しい内容は項目ごとに別途記事にしていければと思います(本記事の読者が多ければですが)。

2.素案を理解するための基礎知識

素案は、AIの開発や利用において、他人の著作物の利用が著作権侵害となる場合と、著作権侵害の場合にどのような責任を負うかについての文化審議会(文部科学省設置法第29条によって設置された審議会)の考え方を示したものであり、政府の公式見解といってよいものです。その見解に法的拘束力はありませんが、裁判所が判決を下すまでは、実務は素案を参考に動かざるをえないことになります。
AIの開発や利用においては、他人の著作物を利用することがありますが、著作権法30条の447条の5の「権利制限規定」と呼ばれる規定によって、著作権者の許諾なしに利用できる場合があります。
著作権法30条の4は、他人の著作物の利用が「非享受目的」の場合には、「著作権者の利益を不当に害する場合」を除いて、著作権者の許諾なしに利用できると規定しています。
また、著作権法47条の5は、他人の著作物について、情報の所在検索や情報解析に利用する場合に、その利用が「軽微利用」であれば、原則として、著作権者の許諾なしに利用できると規定しています。
そこで、AIの開発や利用について、著作権法30条の4や47条の5が問題になるわけです。
なお、素案では、主に著作権法30条の4について検討しており、47条の5については条文をなぞった程度しか書いていないので、本記事では著作権法30条の4について取り上げます。以下、著作権法のことを「法」といいます。

3.素案の構成

素案は、生成AIに関する著作権の論点について、学習・開発段階と生成・利用段階に分けて検討しています。また、AIのアウトプットの著作物性を別の項目立てで検討しています。素案のアウトラインは以下の通りです。

(1)学習・開発段階
 ①検討の前提・議論の背景
 ②「非享受目的」の該当性
 ・「情報解析の用に供する場合」と享受目的が併存する場合について
 ・検索拡張生成(RAG)等について
 ③「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の解釈
 ・30 条の4ただし書の解釈に関する考え方
 ・アイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることについて
 ・情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物の例について
 ・学習のための複製等を防止する技術的な措置を回避した複製について
 ・海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて
 ④侵害に対する措置について
 ・著作権侵害が生じた際に、学習を行った事業者が受け得る措置
 ・著作権侵害が生じた際に、権利者による差止請求等が認められ得る範囲
 ⑤その他の論点
 ・30 条の4に規定する「必要と認められる限度」の解釈
 ・AI 学習を拒絶する著作権者の意思表示について
 ・30 条の4以外の権利制限規定の適用について

(2)生成・利用段階
 ①著作権侵害の有無の考え方
 ・類似性
 ・依拠性
 ・依拠性に関する AI 利用者の反証と学習データについて
 ②侵害に対する措置について
 ・差止請求として取り得る措置について
 ③侵害行為の責任主体について
 ④その他の論点
 ・生成指示のための生成 AI への著作物の入力について
 ・権利制限規定の適用について
 ・学習に用いた著作物等の開示が求められる場合について
 
(3)生成物の著作物性について
 
このアウトラインを見ただけでも、お腹いっぱいという感じですが、以下で、素案を要約したものを紹介します。なお、要約は(当然のことながら(笑))ChatGPTを利用しています。

4.検討の前提・議論の背景

平成30年改正の趣旨: AI開発においては、著作物を含む大量のデータを用いた深層学習などが広く用いられており、これに伴う著作物の利用に関して、法第30条の4による権利制限規定が設けられている。この改正の主な目的は、技術革新による大量情報の収集・利用を促進し、イノベーションを創出することであり、著作物の市場に大きな影響を与えない場合に個々の許諾を不要とすることにある。

法第30条の4の解釈: 法第30条の4は、著作権者の利益を通常害しない場合を対象としており、解釈する際には平成30年改正の趣旨や条文の趣旨を踏まえる必要がある。

議論の背景と再整理の必要性: 生成AI技術の進展と普及に伴い、法第30条の4の適用範囲に関する具体的な問題が増加している。この条文は、生成AIだけでなく、技術革新に伴う著作物の新たな利用態様に柔軟に対応するために設けられたものであり、生成AI特有の事情についての議論が必要である。

【筆者コメント】30条の4の解釈にあたっては、同条項が修正された平成30年法改正と条文の趣旨を踏まえるべきという、法律家としては常識的な考えが述べられています。

5.「非享受目的」の該当性

情報解析の用途と享受目的の併存:  法第30条の4によると、著作物を情報解析のために使用する場合は、その著作物に表現された思想や感情を享受する目的がない(=非享受目的)と見なされる。しかし、情報解析の用途と享受目的が同時に存在する場合には、法第 30 条の4は適用されない。

AI学習と著作物の利用:  AI学習において、著作物を情報解析のために使用する場合、これは非享受目的と見なされる。しかし、もし学習データが著作物の内容をそのまま出力する目的で使用される場合、または特定のクリエイターの「作風」を模倣する目的で使用される場合は、享受目的が併存すると見なされ、法第30条の4の適用外となる。

検索拡張生成(RAG):  RAGのようなシステムが著作物を含むデータを検索し、その結果を要約して回答を生成する場合、これは非享受目的の利用行為とは見なされず、法第30条の4は適用されない。しかし、法第47条の5に基づく「軽微利用」の範囲内であれば、著作物の使用が許可される可能性がある。

著作物の複製や公衆送信: RAG等のためにベクトルに変換したデータベースの作成に伴う著作物の複製や公衆送信は、準備行為として権利制限規定の適用を受ける可能性がある。

【筆者コメント】
・享受目的と非享受目的が併存する場合については法第 30 条の4は適用されないという見解が示されてます。この見解はAIの学習・開発にかなり制約となる可能性がありますし、理論的にも検討する余地があると思います。
・特定のクリエイターの作風を模倣する目的で無断でプロンプトに著作物を入力する場合には、享受目的があるので、法第 30 条の4は適用されないことが明確に述べられています。
・RAGが著作物を要約して回答を生成する場合は、享受目的があり、法第 30 条の4は適用されないとされています。要約するRAGはRAGの一部に過ぎないので、ここでRAGを取り上げて記載するのは少し違和感があります。

6.著作権者の利益を不当に害することとなる場合

法第30条の4のただし書きの解釈:  法30条の4ただし書きは、著作物の種類や用途、利用の態様を考慮し、著作権者の利益を不当に害する場合には、権利制限の適用を除外している。これは、著作物を情報解析などの非享受目的で使用する場合に適用される。

アイデアの類似性:  アイデアや作風が類似しているが、既存の著作物との類似性がない生成物は、著作権侵害にはならない。ただし、特定のクリエイターの作品のみを学習データとしてファインチューニングことで、その作品群の影響を強く受けた生成物を生成する場合、その作品群には、表現のレベルにおいても、表現上の本質的特徴があると評価でききる場合もある。

情報解析用データベース:  情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物を複製する行為は、著作権者の利益を不当に害すると考えられる場合があります。これにはオンラインで提供されるデータやAPIも含まれる。

技術的な措置の回避:  AI学習のための著作物の複製を防止する技術的な措置を回避する行為は、著作権者の利益を不当に害すると見なされる可能性がある。

海賊版の利用:  海賊版や権利侵害複製物をAI学習のために複製することは、著作権侵害を助長する可能性があり、AI開発事業者やサービス提供事業者には、このような行為を避ける責任がある。

【筆者コメント】
アイデアや作風が類似しているが、既存の著作物との類似性がない生成物は、著作権侵害にはならないことが明確に示されています。もっとも、これは著作権法における基本的な考え方で、アイディアを真似ただけで著作権侵害だと主張するのは世間の誤解によるものです。
・もっとも、特定のクリエイターの作品を学習データとして使用する場合、表現のレベルでも、その作品群の表現上の本質的特徴があると評価できるばあいがある、としています。これはRoLAなどであるクリエイターの作品と似た作品を生成する行為は、作風をまねたものではなく表現をまねしたものであり、著作権侵害になり得るという指摘ともいえます。この点については、アイデアと表現を区別する著作権法の基本的考えとの整合性について議論が必要と思われます。
・「情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物を複製する行為」が、著作権者の利益を不当に害すると考えられるとしている点については、平成30年改正の立法趣旨にも見られた見解であり、旧法47条の7からも同様のことについて言われてきたので、この点を確認したものといえます。
・もっとも、「情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物を複製する行為」が具体的に何を意味するかという点や、それ以外の場合はどのような場合がただし書きに当たるかという点については検討が必要と思われます。

7.侵害に対する措置について

著作権侵害の場合:  法第30条の4が適用されず、他の権利制限規定も適用されない場合、AI学習のための複製は著作権侵害となる。この場合、著作権者は損害賠償請求、侵害行為の差止請求、将来の侵害行為の予防措置の請求、刑事罰を求めることができる。

損害賠償と刑事罰:  損害賠償請求には故意または過失の存在が必要であり、刑事罰には故意の存在が必要である。

将来の侵害行為の予防措置:  著作権侵害の対象となった著作物が、将来においてAI学習に用いられることにより、侵害行為が新たに生じる蓋然性が高い場合は、著作権者は将来の侵害行為の予防措置として、AI学習に用いられる学習用データセットからの当該著作物の除去を請求できる。

学習済みモデルの廃棄請求:  通常、AI学習により作成された学習済みモデルは著作権侵害の対象とはならないと考えられる。しかし、学習済みモデルが著作物と類似性のある生成物を高確率で生成する場合、著作物の複製物として評価され、廃棄請求の対象となる可能性がある。

【筆者コメント】
「学習済みモデルの廃棄請求」の部分は法解釈として自然に導かれる結論ですが、いままであまり論じられていなかった点なので、明確化されたことは望ましいといえます。

8.著作権侵害の有無の考え方

類似性の判断:  AI生成物と既存の著作物との類似性は、生成物自体が既存の著作物に類似しているかどうかに基づいて判断される。この判断は、人間がAIを使わずに創作したものと同様である。

依拠性の判断:  従来の裁判例では、作品が既存の著作物に類似している場合、その作品を制作した者が既存の著作物の表現内容を認識していたかどうかによって依拠性が判断されてきた。AIの場合、開発のために利用された著作物をAI利用者が認識していない場合でも、類似した生成物が生じる可能性があり、これは依拠性の判断に影響を与える可能性がある。

AI利用者が著作物を認識していた場合:  AI利用者が既存の著作物を認識しており、AIを利用して類似したものを生成させた場合、依拠性が認められ、著作権侵害が成立する可能性がある。

AI利用者が著作物を認識していなかった場合:  AI利用者が既存の著作物を認識していないが、AIの学習用データにその著作物が含まれていた場合、依拠性が認められる可能性がある。ただし、AIが学習に用いられた著作物をそのまま生成しないような技術的な措置が講じられている場合は、依拠性がないと判断される場合もある。

依拠性に関する反証:  AIを利用して生成された生成物が既存の著作物に類似していた場合、被疑侵害者は、既存の著作物が学習データに含まれていないこと等を反証する必要がある。

【筆者コメント】
・依拠性については認識説がとられており、既存著作物を認識していただけで、既存著作物をプロンプトに入力しなくても著作権侵害となり得ることが述べられています。この見解は依拠性を広く認める見解ですが、議論はあるもの一つの見解としてはあり得るとは思います。
・依拠性について、既存著作物が学習用データに入っていた場合に依拠があるとの見解が示されています。この見解も依拠性を広く認める見解であり、様々な議論がなされています。一つの見解としてはあり得るとは思いますが、ずいぶんと思い切った見解が示されたとは思います。
・もっとも、「 AIが学習に用いられた著作物をそのまま生成しないような技術的な措置が講じられている場合は、依拠性がない」とされており、依拠性が広く解することに対して、何らかの歯止めをいれたいというのは理解できますが、その理論的根拠がどうなっているのかが興味深いところです。

9.侵害に対する措置について

侵害に対する一般的な措置:  著作権侵害が認められた場合、侵害者は差止請求、損害賠償請求、及び刑事罰を受ける可能性がある。差止請求は故意及び過失の有無に関わらず可能だが、損害賠償請求と刑事罰には侵害者の故意が必要である。

AI利用者の認識に基づく措置:  AI利用者が侵害に関連する著作物を認識していなかった場合、通常は故意や過失は認められず、差止請求のみが適用される可能性がある。しかし、不当利得返還請求により、著作物の使用料相当額の返還が求められることもある。

利用行為ごとの判断:  生成と利用の場面それぞれで故意や過失の有無についての判断は異なる可能性がある。生成時の複製が権利制限規定の範囲内であっても、利用時には著作権侵害となる場合があるため注意が必要である。

差止請求としての措置:  生成AIによる著作権侵害があった場合、権利者は新たな侵害物の生成や既に生成された侵害物の利用行為に対する差止請求が可能である。また、侵害物の廃棄請求も可能である。

生成AIに対する措置:  生成AIの開発事業者に対しては、侵害物を生成した生成 AI の開発に用いられたデータセットがその後も AI 開発に用いられる蓋然性が高い場合には、生侵害物を生成したAIの開発に用いられたデータセットからの侵害物の廃棄を請求できる。また、生成 AI による生成によって更 なる著作権侵害が生じる蓋然性が高いといえる場合には、生成AIによる更なる著作権侵害の予防に必要な措置を請求することも可能である。

【筆者コメント】
この部分は基本的に学習・開発段階と同じです。なお、生成AIの開発事業者に対して一定の場合に侵害物の破棄請求や予防措置を取れるとしている点は留意が必要です。

10.侵害行為の責任主体について

責任主体の一般的な考え方:  従来の裁判例によれば、著作権侵害の主体は、物理的に侵害行為を行った者のほか、特定の状況下で物理的な行為主体以外の者も規範的な行為主体として責任を負うことがある(規範的責任論)。

AI生成物における責任主体:  AI生成物の生成・利用が著作権侵害となる場合、物理的な行為主体であるAI利用者だけでなく、生成AIの開発者やサービス提供者も著作権侵害の行為主体として責任を負う可能性がある。

事業者の責任:  特定の生成AIを用いて侵害物が高頻度で生成される場合、事業者が侵害主体と評価される可能性が高まる。また、事業者が生成AIの開発・提供時に類似物の生成を抑止する技術的手段を施していない場合も、事業者が侵害主体と評価される可能性が高まる。

技術的手段の施行と責任:  事業者が生成AIに対して類似物の生成を防止する技術的手段を施している場合、事業者が侵害主体と評価される可能性は低くなる。AI利用者が意図的に類似物を生成しても、事業者が適切な技術的手段を施していれば、事業者の責任は低くなると考えられる。

【筆者コメント】
生成AIの場合、開発者・提供者と利用者が異なることが多いことから、利用者が著作権侵害をした場合に、開発者・提供者も責任を負うのかという点が問題になります。この点、素案は原則として開発者・提供者は責任を負わないが、侵害物が高頻度で生成される場合など、一定の場合には責任を負う可能性が高まるということを指摘しています。

11. AI生成物の著作物性

AI生成物の著作物性の整理の意義:  AI生成物が著作権法によって保護されるかどうかを整理することは、ビジネスモデルの検討や著作権者の許諾が必要かどうかの判断に影響を与えるため、重要である。ただし、作品の一部に著作物性が否定される要素があっても、作品全体の著作物性の有無に直接影響するわけではない。

指示の具体性と著作物性の関係:  AIに対する指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、AI生成物に著作物性は認められない。著作物性の判断は、個々のAI生成物について個別具体的に行われ、創作的寄与の程度を総合的に考慮する必要がある。①指示・入力の分量・内容、②生成の試行回数、③複数の生成物からの選択、④生成後の加筆・修正などが著作物性の判断に影響を与える要素として考慮される。

著作物性がないものに対する保護:  著作物性がないものであっても、その複製や利用が営業上の利益を侵害する場合、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められる可能性がある。

【筆者コメント】
・著作物性については、創作にAIを使ったとしても、人間の創作意図と創作的寄与がある場合に認められるというのが通説でした。見解では、なぜか創作意図の部分に触れられていませんが、創作的寄与は総合的判断であるとしたうえで、①指示・入力の分量・内容、②生成の試行回数、③複数の生成物からの選択、④生成後の加筆・修正などの要素によって判断されるという見解を示しました。

12.その他

「その他の論点」については、今回は取り上げませんでしたが、興味深い記載として以下があります。

著作権者の意思表示の扱い:  権利制限規定の立法趣旨からすると、著作権者が反対の意思を示し ていることそれ自体をもって、権利制限規定の対象から除外されると解釈することは困難である。ただし、著作権者がAI学習を拒絶する意思を示している場合、その意思表示が機械可読な方法でなされている場合に限り、法第30条の4のただし書きに該当する可能性がある。しかし、意思表示が機械的に判別できない方法で行われる場合、それだけをもって権利制限規定の対象から除外することは困難である。

著作権者への対価還元:  法第30条の4の趣旨を考慮すると、AI開発のための情報解析に著作物を利用することにより著作権者の利益が害されるわけではないため、著作権法に補償金制度を導入することは理論的に困難であるとされる。

市場における対価還元の促進:  コンテンツ創作の好循環を実現するためには、著作権法の枠内にとどまらない議論として、市場における対価還元を促進することについても検討が必要である。

著作物でないものの流通:  著作物でないものを著作物であると称して流通させる行為は、契約上の債務不履行責任や詐欺行為としての民法上の不法行為責任、刑法上の詐欺罪に該当する可能性がある。この点に関して、著作権法による保護の適切性については、引き続き議論が必要である。

なお、基本的な話ですが、素案には以下の記載があります。

法第30条の4以外の権利制限規定の適用:  AI学習のための複製等に関しては、法第30条の4及び第47条の5以外にも、私的使用目的の複製(法第30条第1項)、学校その他の教育機関における複製等(法第35条)など、他の権利制限規定が適用される場合がある。

13.まとめ

以上、素案の概要を紹介しましたが、従来の考え方に基づくものや、その延長線上にあり違和感のないものも多いですが、一部については疑問がある部分もあります。
本執筆時点は2023年12月ですが、今後、素案は改訂され得ることが予定されているので(来年1月中旬には改訂版が出される可能性がある)、その動向を見守りたいと思います。

AIと著作権法30条の4や47条の5について、もう少し知りたい方は、拙著「生成AIの法的リスクと対策」(日経BP)に詳しい解説がありますの(70~709、146~175頁)、ご覧ください。



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