親露派が陥りがちな「本音と建て前」的な欺瞞。ツイートでのやり取りから
ロシアがウクライナに侵攻してから10ヶ月が経とうとしている。未だ戦闘が終結する気配はなく、ウクライナでは民間人を含め多くの人が亡くなっている。
ロシアによる軍事侵攻は明確な侵略行為であり一片の正義もない。ましてや、ロシア軍による虐殺や略奪や強姦など、どんな理屈があれ絶対に許されるものではない。
日本人の多くもこのような認識を持っているのだが、どうもそう思っていない日本人もまた少なくない。
「他国を侵略するロシアは悪い。でも、ウクライナだって悪い!」
――このように「どっちもどっちだ」的な理屈をこねる輩が意外と多いのでウンザリする。
侵略は悪だとしながら、しかしウクライナも悪い――なんていうロジックなんて絶対に成り立つワケがないのに、偽善全開で侵略は良くないと一応表明するのだから卑怯で腹が立つ。本当はウクライナなんて大嫌いで、ロシアが大好きなんだろ馬鹿野郎がといった感じだ。
今回は、そういった親露的な輩の「本音と建て前」的な偽善が暴かれる様をご覧入れよう。
あるウクライナを擁護する方とロシアを擁護する方との間でなされたTwitterでのやり取りだ。便宜上、「ライナさん」と「ロシアさん」という仮名でお送りさせていただくこととする。
それではいってみよう。
※内容に影響がない範囲で修正しています
――――――
〇ライナさん
親露派とかウクライナ派とか関係なく、ロシアもウクライナも関係なく侵略行為についてYESかNOですか?って聞かれたらなんて答えるんだろう?!
●ロシアさん
NOです! でも、相手から侵略される可能性が高く、事前に手を打つことで相手に勝てそうであれば、侵略してそのリスクを回避します。
その際、目的は相手の虐殺ではないので、平和な解決を求めながら戦いますが、相手がゼレンスキーのように国民の命を無駄にしてきた場合は、酷い有様になります。
〇ライナさん
いいね押そうかと思ったけど、途中から関係ないお話しを出してきたので押せませんでした
なるほど
後でもう一度、読み返してみます
侵略はダメって仰って頂けた事に今は少し安堵しております
●ロシアさん
関係なくはないですね。
物事は単純ではなく複雑です。
〇ライナさん
確かに。複雑にしているのは誰でしょうか?
●ロシアさん
文化、歴史を無視して現状変更を試みてる、NATOやゼレンスキーでしょうかね。
〇ライナさん
では貴方に合わせてみたとして、NATOやゼレンスキーさんに対立したかったのがロシアで、その対立理由は、侵略行為さえ許される訳ですか?!
●ロシアさん
ミンスク合意を利用してウクライナが武力を蓄えていたことを、メルケル元首相がバラしましたよね。 それを防ぐために侵略するのはしょうがないですね。そしてこれは虐殺目的ではないですが、ゼレンスキーのせいで酷い有様になっただけ。
☆別のギャラリーさん
ウクライナが武力を蓄えている
↑
これは国際法で認められている固有の権利です。 それを認めず予防的侵略するのは国際法違反ですね。
●ロシアさん
予防侵略してるアメリカは元気ですよ。
〇ライナさん
貴方は反米思考
それを加えてくるな
ウクライナでどれだけの命が奪われているのか、理不尽なのはどちらか、反米という見方をしないで見て下さい
――――――
以上。
……いかがだったろうか? ロシアさんは侵略行為については明確に「NO!」と言いつつ、「しかしながら」的につらつらとロシアを擁護する理屈を述べ始める。
アホだね。
他国への侵略行為は絶対的に悪なのだ。どんな理由があっても相殺されないのだ。
にもかかわらず、ミンスク合意がどうとか、メルケルがどうとか、挙句の果てにはロシアの残虐行為はゼレンスキー氏のせいだとか、まったくもってただの親露であり嫌ウクライナ、嫌ゼレンスキーであり、そんでもってただの反米なだけじゃないか馬鹿野郎め。
しかし、ロシアさんの意見なんてツッコミどころ満載だからね?
文化・歴史を無視して現状変更を試みているのはロシアに決まっているじゃないか? NATOやゼレンスキー氏じゃない。現実として他国に軍事侵攻したロシアが現状変更を試みているのだ。
現実として侵略行為を働いたのはロシアだ。仮定の妄想をしていても仕方ない、実際に侵略行為に及んだのはロシアなのだからそう言うしかないではないか。
ちなみに、アメリカのイラク侵攻も明確な悪。大量破壊兵器云々なんていう理屈は通用しない(実際、そんなものイラクにゃ存在しなかったし)、あれはアメリカの犯した最悪の罪。
もし、アメリカが悪を犯したのだからロシアの悪も相殺されるなんて考えているのだとしたらアホすぎる。自分が通り魔に襲われてナイフで刺されたのだから、自分も誰かを無差別にナイフで刺して良いのだ――なんていう理屈は成り立たないのと同様だ。
また、ミンスク合意を巡るメルケルの発言もプーチンのリアクションも、ロシアさんは全く理解できていない。曲解も甚だしい。
メルケルはドイツ紙のインタビューにおいて
「14年のミンスク合意はウクライナに時間を与える試みだった」
「14年から15年にかけてのウクライナ(の軍事力)は今ほどではなかった」
このように発言し、それに対してプーチンが
「(西側に対する)信頼はゼロに近い」
と言って反発した。
プーチン氏「西側への信頼はゼロに近い」 メルケル氏発言巡り | 毎日新聞 (mainichi.jp)
メルケルはなぜ時間稼ぎをしたかったかというと、ロシアを侵略する為の時間をウクライナ側に与えようとしたワケではない。ロシアは確実にウクライナへ軍事侵攻するだろうと危ぶんだから、苦肉の策としてミンスク合意の仲介をしたのだ。
ここではミンスク合意について詳しく扱わないが、あれはウクライナ側にとって最高に納得しがたい不利な合意となっている。それでもメルケルは、ウクライナにとって不利だろうがなんだろうが、合意を結んでおかないとヤバイと考えたのだろう。
そうして、プーチンがメルケルに対して怒っているのは
「ウクライナの軍事力を整えて我が国に侵攻させようとしたのか、けしからん!」
――的なものではない。
この辺りは国際政治学者の篠田英明氏のツイッターが分かりやすい。以下に紹介する。
……このように、プーチンが激おこなのは無駄な時間を過ごしてしまったと考えたことにあるのだ。
「んなことなら、早くウクライナに攻め込んでいりゃよかったぜ、チキショー!」
――というのが真意なのだ。
ていうかだね、ウクライナがロシアに対抗するための軍事力を整えていたことが一億歩譲って悪だったとしても、だからといってロシアの軍事侵攻が許される理由には全くならないし、ましてやロシア軍による残虐行為が許されるなんてことは絶対にあり得ない。
さらに、そんなロシア軍の残虐行為の全てをゼレンスキー氏の責任だとする輩が居るのだとしたら、ソイツの頭はネジが全て外れているか、さもなければ血も涙もない鬼畜か、そのどちからかだろう。
……かなり話しが脱線したように思うが、最後にもう一度確認しておこう。
他国への軍事侵攻は悪なのだ。一片の正義も存在しない。どんな理屈であれ許されるものではなく、どんな理屈であっても相殺されない。
軍事侵攻したロシアが悪であり、ウクライナが善なのだ。ウクライナに正義があるのだ。
「他国を侵略するロシアは悪い。でも、ウクライナだって悪い!」
こんな理屈は絶対に成り立たないのだ。
一応ウクライナを擁護するけど、本当はロシアが大好きでウクライナなんて大嫌いなのだ――的な「本音と建て前」なんてすぐに瓦解するのだ。
ロシアさん的な皆さん、馬鹿な偽善は気持ち悪いから即刻やめなさい。もっと勉強してくれたまえ。