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第2章: 「新たな仲間と最初の試練」
陽光学園での初めての授業が始まった。翔は、クラスメイトたちの中に座りながら、緊張でいっぱいだった。彼の周りには、それぞれ異なる異能力を持つ生徒たちが集まっている。斉藤直人も、その冷静な表情で一番前の席に座っていた。リナは翔の隣の席に座り、ニコニコと笑っていた。
「ようこそ、陽光学園へ!」
教師が教室に入ってきた。その姿は想像とはまったく違っていた。彼女は背が低く、どこか小学生のような外見だが、その目には知識と経験が詰まっているような鋭い光が宿っている。彼女の名前は、泉美先生。異能力「重力操作」を持つ、学園でも一目置かれる教師の一人だ。
「今日は君たちの初めての実技試験を行う。異能力者としての基本を確認するためのテストだ。安心しろ、難しいものじゃない。」
翔の心は不安でざわついた。実技試験。自分の「運の良さ」がどれだけ役立つのかまったく見当がつかない。周りの生徒たちはみな、実力を試されることに興奮しているようだ。斉藤やリナはもちろん、他のクラスメイトも自信満々だ。
「まずは、チーム戦だ。2人1組で、互いの力を引き出す試験を行う。」
先生の言葉に教室内がざわめいた。生徒たちはペアを組むため、周囲と目を合わせ始めた。リナが翔を見て、すぐに手を上げる。
「翔!私と組もう!」
「…いや、それは助かるけど、リナと組んだら完全におんぶに抱っこになっちまうじゃん。」
翔が苦笑いを浮かべると、リナはにっこりと笑って肩を叩いた。
「大丈夫だよ、力を合わせればいいんだから!」
翔は、どうせ自分の力では何もできないと半ば諦めていた。しかし、その時、後ろから声がかかった。
「白石翔、俺と組め。」
振り返ると、そこにはアヤカという少女が立っていた。彼女はこの学園に転校してきたばかりで、ほとんど話すことはなかったが、その異様な雰囲気は誰もが気づいていた。無表情で感情をほとんど見せない彼女が、なぜ翔に声をかけたのか、周りの生徒たちも驚いている。
「え?俺と?」
「問題ないだろう。お前の運を試してみたいんだ。」
アヤカの無機質な声に、翔は戸惑ったが、リナは頷いて背中を押してくれた。
「いいじゃん、翔!アヤカと組めばきっと面白いことが起きるよ!」
翔は仕方なく、アヤカの提案を受け入れることにした。こうして、実技試験のペアが決まった。
試験場は広いフィールドで、障害物やトラップが散りばめられている。課題は「フィールド内の旗を取り、ゴールまで持ち帰る」というもの。各ペアには一つの旗が与えられ、それを守りながら他のペアから旗を奪うのが目的だ。
「お前の能力は運がいいことだけだろ?なら、私は前線で戦う。お前は旗を守れ。」
アヤカは淡々とした口調で指示を出した。翔はそれに納得しつつも、自分にできることが少ないことに少し劣等感を感じていた。
試験が始まると、アヤカはすぐに動き出した。彼女の異能力は「空間操作」。一瞬で姿を消し、別の場所に現れるという、非常に強力な力だ。翔は彼女のスピードに圧倒されながら、なんとか旗を守る役割に徹しようとした。
その時、突然、翔の目の前に巨大な氷の壁が現れた。
「また斉藤か…!」
翔はすぐに理解した。斉藤直人がこちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。斉藤の氷の壁は、逃げ道を完全に塞ぐように作られており、翔は逃げ場を失った。焦りが広がる中、斉藤の冷たい声が聞こえた。
「お前の運、試してやろう。」
氷の槍が翔に向かって飛んできた。翔は反射的に旗を盾にしてその攻撃を防ごうとしたが、予想外のことが起きた。斉藤の氷の槍が、突然方向を変え、別の生徒に当たったのだ。
「なんだと…?」
斉藤は目を細め、驚きを隠せない様子だった。翔自身も状況がわからず、ただ運良く助かったことに感謝していた。
「これが…俺の運ってことなのか?」
翔が呟いたその瞬間、背後にアヤカが現れた。
「その運、どうやら本物のようだな。」
彼女は無表情のまま、斉藤の背後に瞬間移動し、あっという間に彼の旗を奪い取った。
「試合終了。私たちの勝ちだ。」
アヤカは淡々と宣言し、試験は終わった。翔は、自分が何をしたのかよくわからないまま、試合に勝利したことに呆然としていた。