【本】戦う新聞記者の激動の日々~三枝玄太郎氏の「受難記」を拝読
今回は久しぶりに本の話題です。元産経新聞社会部記者で現在はYouTubeでもご自身の番組やその他様々な番組にも出演されている、三枝玄太郎さんの著書「メディアはなぜ左傾化するのか~産経記者受難記」がとても面白かったので、ご紹介したいと思います。
まずは要点を一気に解説!
この本のタイトルを読むと、ちょっと難しい話なのかな?と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。三枝さんの記者時代の様々なエピソードが紹介され、新聞報道などメディアで発表されるストーリーの「裏側」について書かれており、そのあたりがとても興味深かったです。また、産経新聞というと、右サイドと分類されることが多いですが、常にそうかというとそんなこともないようで、実際、内部の方でも考え方には様々あるようです。とはいえ「自由な社風」がとても良かったと三枝さんは仰っていました。
やっぱり「失敗談」の方が興味を惹かれる
これは三枝さんご自身で語られているのですが、エース記者として順風満帆だった・・・ということもないようで、本の中では様々な「失敗談」が赤裸々に書かれています。しかし、ここがまた親しみを持って読むことが出来た点だったと思っています。というのも、自分の成功話・自慢話のオンパレードだったら、読む気がしないじゃないですか!(笑)。どこまでいっても「オレは凄い(凄かった)」、あれもこれも「オレの活躍だ」的な「俺様本」・・・印象はあまり良くないですよね。三枝さんはどこまでいっても全力投球、猪突猛進タイプ。それゆえに時に暴走してしまうのですが、そこが人間味を感じる一面でもありました。
三枝さんと「青島刑事」が重なった
これはあくまでも私見ですが、この本を読んでいて記者時代の三枝さんが、どことなく「踊る大捜査線」で織田裕二さんの演じる青島刑事のような印象を受けました。それもだいぶドラマ時代の。ドラマでは刑事ドラマにあこがれ転職してきた青島が、硬直した警察組織の中で時に壁にぶつかり、また周りに支えられ成長していく物語だったのですが、まさに三枝さんもまさに青島くん状態。
常に「激アツ」な性格だったようで、あの手この手を工夫して取材活動を進めていくわけですが、時に危ない橋を渡ることも少なくなかったようで、会社の上司たちからは若干「鼻つまみ者」だったようです。しかし、一方で正直にまっすぐ事件を追いかけ、記事を作成するひたむきさに理解を示す上司たちもいたようで、彼らの存在に助けられた、と三枝さんは語っています。このあたりも「踊る」で言うと、いかりや長介さん演じる和久さんだったり、柳葉敏郎さん演じる室井さんのような「理解者」に恵まれたのと通じるなと思いました。
しかし、思わぬ挫折を味わうことに・・・
以下の内容については、著書の冒頭で触れられているので、簡単にご紹介します。こうして山あり谷ありながらも記者として奮闘していた三枝さんですが、会社から「肩たたき」に遭ってしまうのです。新聞業界自体が斜陽産業と言われて久しいですが、そんなこともあって大リストラを敢行したようなのです。さらには自社共に認める「問題児」であった三枝さんですので、その対象となってしまったようです。このあたりの描写も、まったく私のケースとは異なりますが、どこか通じる面を感じてしまい、他人事ではなく「自分事」として共感しまくりながら読んでしまいました。
ご本人は謙遜しますが、実は相当すごい経歴・実力の持ち主に違いない!
官公庁や産経ではない他の大新聞社が東大閥中心である中で、三枝さんは私大トップ卒。私からすると、どちらも超エリートだろう、という話なのですが、まだまだこういう一流企業、トップ国家公務員たちの世界では東大神話が強いそうです。そうした中で苦労されたエピソードも紹介されておりますが、いやー、三枝さんは本当にすごいです。というのも、退職後に宅建や行政書士など立て続けに資格を取得。そして本職での経験をもとにご自身でYouTube番組をスタート(しかも、ほぼほぼ毎日更新。この「継続力」にも脱帽です、ちなみに毎朝この番組を見るのが日課です、笑)。さらにはコメンテーターとしてその他YouTube番組にも多数出演・・・と、企業人としての生き方から飛躍し、活動の幅を広げているのです。そんな凄い人が現役記者時代のおもしろエピソード満載で赤裸々に書かれているのですから、面白くないわけがありませんよね。
熱く生きる充実した日々だったのでは?
このように、活動のフィールドを変え、生き生きと活躍されている今も三枝さんにとっては充実した日々だと思うのですが、記者時代、それも我武者羅だった若い時期もまた大変ながらも楽しかったのではないかな、とこの本を読みながら感じました。ですから、事件に関するエピソードも興味深いのですが、一人の仕事人が新人時代→中堅→ベテランという世代によっての移り変わる様子にもまた共感しました。
立場は変わっても、「記者魂」として常に熱いものを持ちながら現場に立ち続け、その頑固でまっすぐすぎる性格によって、社内に敵も多い一方、ベテランや腕の良い先輩たちからはしっかり認められている存在・・・。この生き方もカッコいいな、と思いました。私も三枝さんには到底足下にも及ばない存在ではありますが、どこか通じる面を感じることもあり、そのあたりもまたどの業界であれ、私のような40代、さらには50代の諸先輩方においては「共感ポイント」なのではないでしょうか。
実はもう一冊も購入済みです
三枝さんの勢いを感じるのは、なんと同時期にもう一冊リリースされているんです。その名も「事件報道の裏側」という作品です。こちらは未読のため、まだ感想を語ることは出来ないのですが、今からすでに読むのが楽しみになっております。ちなみに今回ご紹介した「メディアはなぜ左傾化するのか」ですが、三枝さんのエピソードは恐らくまだまだたくさんあると思うので、シリーズ化もできるのではないか?と勝手に期待しています。YouTube番組でお人柄を拝見すると、非常に気さくでエネルギッシュ。それでいて、ダメなものはダメ、とハッキリした性格のようにお見受けしました。これからのご活躍も楽しみです。ぜひ、三枝さんのYouTube番組を未見の方は、ぜひ一度見てみて下さい!