【映画】音楽シーンは素晴らしかったんですが・・・「ボレロ 永遠の旋律」
ラヴェルと言ったら「ボレロ」。「ボレロ」と言ったらラヴェル、というくらい超有名な名曲。この曲の誕生秘話と作曲家ラヴェルの半生を描いた映画「ボレロ 永遠の旋律」が公開となり、先日鑑賞してきました。タイトルを見て頂ければすぐにお分かり頂けるかと思うのですが、音楽シーンは素晴らしかったんですが、肝心要のストーリーが・・・という感じでした。予告編が良かったので、期待しすぎたのかもしれません・・・。とはいえ、恒例ということで感想を書いていきたいと思います。
まずは恒例のあらすじから
少しずつ「ボレロ」が作られていく様子が分かる
工場の機械音、ジャズセッションでのサックス演奏などなど、あちこちからヒントを得て「ボレロ」を発想していった様子が丁寧に描かれていきます。ただ、あまり事前情報を得ずに鑑賞したので、回想シーンと現実シーンが交互に入れ替わる進め方になかなか慣れず、「今これは回想なのか?現実なのか?」と混乱しましたね、結構。ちなみに監督は黒澤明の「羅生門」にヒントを得て、敢えてこのような混乱させる演出をされたとか。
ドビュッシーと正反対のラヴェル
これは作品の中でも批評家がこの二人を上記のように評していました。私は音楽的なことは全く無知ですが、とはいえどちらもフランスの偉大な作曲家で、ラヴェルも「ダフニスとクロエ」とか「ラ・ヴァルス」など大胆で豪快な作品もありますし、ムソルグスキーの「展覧会の絵」をオーケストラ版に編曲も担当されており、しかも「ラヴェル版」の人気が高いとどこかに書かれていたように記憶しています。ドビュッシーも素晴らしい作品(私は「海」がベストです)が数多くありますし、何もこの二人を対立させなくてもいいのに、とは思いました(けど、そうなると映画にはなりませんからね・・・)。
絶対モテたでしょう!実際には
どこまで史実なのか、全く分からないのですが、この作品、ラヴェル以外はほぼほぼ彼を支えた女性陣が多数登場しています。それは最愛のお母さんであり、家政婦さんであり、生涯の恋人や「ボレロ」を依頼するバレリーナなどです。実際に演じている役者さんもそうですが、過去のポートレートなどを見てもかなりカッコいい外見のようですから、実際にはモテたんじゃないでしょうかね、分かりませんが。とはいえ、作品内ではあまり艶っぽいシーンもなく、非常にストイックかつ若干神経過敏なキャラクターとして描かれていましたね。そのあたりも実際に女性関係が派手だったというドビュッシーとの対比にもつながっているのかもしれません。が、見ていてなんだかじれったいシーンも多々ありましたね。
とはいえ音楽は最高でした!
・・・と、なんだか腐しているようですが、やっぱり「ボレロ」は素晴らしい。都合2回(オープニングを入れると3回)劇中で流れますが、聴き入ってしまいました。まあ、これが観たくて(聴きたくて?)見たようなものですから、ここが一番楽しみだったわけですが。ただ劇中、ラヴェルは「ボレロ」をなまめかしい演出で表現した依頼主であるバレリーナに激怒していたのですが、その曲をどう表現するかは依頼主次第ですからね。彼は音楽を提供して欲しいというオファーを受けただけですので、ここでキレるのは筋違いかなとは思いましたね。ちなみに私はバレエが門外漢過ぎるので、彼女の踊りが素晴らしいのか否かは全く分からなかったのですが(ちなみに二度目のバレエ演出もまた然り)・・・。
普通に名曲の誕生秘話に絞ってくれても良かったような・・・
ということでまとめなのですが、あまり奇をてらった演出や脚本ではなく、シンプルに名曲「ボレロ」が誕生するまでを丁寧に追っていくような内容でも良かったのにな、と思いました。もしかしたら、そうすると平坦で濃淡のないストーリーになってしまうかもしれない、ということで敢えて回想シーンを多用した作りになっていたのかもしれませんが、かえってラヴェルが神経質で若干風変わりなキャラクターとしての演出が際立ってしまったように思いました。
ちなみにかなり昔に見たので、印象しか残っていないのですが「愛と哀しみのボレロ」という作品でも「ボレロ」が印象的に使われていたのですが、さらにラストでのバレエと融合したシーンは非常に素晴らしかったことを覚えています。もしかしたら、そういう記憶が残っていて(ストーリーも「愛と哀しみのボレロ」の方がスケールが大きかったので)なんとなく比べてしまったのかもしれません。ということで、今回は★★★☆☆(星三つ)というところでしょうか。音楽シーンだけでも大画面で堪能できて良かったかなと。