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【映画】そんなに目くじら立てなくても~「スオミの話をしよう」鑑賞記

まずお断りしておきますと、私は大の三谷幸喜ファンです(笑)。ですので、三谷作品というだけで甘めの評価になっております。現在では自身のスキャンダル等により、新作が公開されなくなって久しいですが、ウディ・アレンの新作をファンが毎回楽しみにしている、といった感じです。ですので、ファンとしては今回の三谷ワールドはどんな感じだろう?と最早ワクワクしかないんです。というわけで、激甘映画批評、きっと三谷ファンなら分かってもらえる(はず)と信じてお送りしたいと思います。



まずは恒例のあらすじ紹介から

三谷幸喜が「記憶にございません!」以来5年ぶりに手がけた映画監督・脚本作品。長澤まさみを主演に迎え、突然失踪した女性と、彼女について語り出す5人の男たちを描いたミステリーコメディ。豪邸に暮らす著名な詩人・寒川の新妻・スオミが行方不明となった。豪邸を訪れた刑事の草野はスオミの元夫で、すぐにでも捜査を開始すべきだと主張するが、寒川は「大ごとにしたくない」と、その提案を拒否する。やがて、スオミを知る男たちが次々と屋敷にやってくる。誰が一番スオミを愛していたのか、誰が一番スオミに愛されていたのか。安否をそっちのけでスオミについて熱く語り合う男たち。しかし、男たちの口から語られるスオミはそれぞれがまったく違う性格の女性で……。

映画.comより抜粋

プロットだけでワクワクが止まらない(笑)

どうですか?すでに設定だけで「あり得ない」ですよね(まあ、もちろん日本中をくまなく探せば、そういう方も実際にいるかもしれませんが・・・)?ということで、ここはもう冒頭から三谷ワールドを楽しむに限るわけです。ここで、「いや、現実にはあり得ない!」などと目くじらを立てると、この世界を楽しめないわけでして・・・。いいじゃないですか、映画なんだから、娯楽なんですから。

三谷作品ならではの豪華キャストが繰り広げる爆笑コメディー!

三谷作品と言えば、今やほとんどの日本の俳優陣が「ぜひ出演したい!」とオファーを待ち焦がれているはずの、いわばステータスでもあると思います。だって、日本のトップ脚本家が自分を想定して「当て書き」をしてくれるわけですから、役者にとってこんなに嬉しいことはないでしょう、きっと。しかも、三谷作品では演技上手な実力派俳優しか呼ばれないですからね。そんなわけで、役者陣も楽しそうに演じていますし、普段、他の作品であればもっと大きな役を演じている役者さんが「チョイ役」で登場するというなんとも贅沢な演出も楽しめます。

今回はとにかく全編「長澤まさみ」を楽しむ映画です!

とにかく今回は長澤まさみさんの七変化を楽しむ作品になっています。コメディの上手な俳優さんは本当の演技上手だと思うんですが、これまで長澤さんの名コメディエンヌぶりをそれほど知らなかったので、思いっきりコメディに全振りしている姿は圧巻でした。5人の現・元夫の前でそれぞれ異なる人格を演じきり、なおかつ学生時代や母親役まで披露する大活躍。綾瀬はるかさんもコメディが上手ですが、綾瀬さんとはまた違った色気とか品を感じる長澤さんの今後も楽しみです。(ま、ここだけの話、三谷さんの前妻、小林聡美さんも名コメディエンヌでしたね。小林さんの場合、七変化はされませんでしたが、台詞の言い回しが独特で好きでした。)

芸達者俳優陣がこれでもか!と笑わせに来ます(笑)

そしてなぜか現・元夫たちによる「スオミさんマウント大会」が始まります。もうここは三谷作品の真骨頂!ワンシチュエーションで彼らの動きと会話が爆笑を生んでいきます。中でも真面目一辺倒の西島秀俊さん。彼自身は真面目に演じているんですが、その生真面目さが笑いを誘うというキャラクターがドハマりしていました。ちょっと見栄を張ってしまうところとか、あの神経質な細かさは奥さんから嫌われるよな・・・でも、本人は自覚がないから(むしろ奥さんのことを思っている)尚更質が悪いよな・・・という絶妙にダメな夫を見事に演じきっています。

その次に印象的だったのが、最初の夫役の遠藤憲一(エンケン)さん。コワモテの名バイプレイヤーですが、ここでも実力を存分に発揮し、場面をかっさらっていました。ちょいちょいと挟んでくる一言一言が絶妙すぎでした。(どうやら別の本で読んだのですが、ここは三谷監督が編集の際に、セリフの「間」を調整されたとか。そうした細かな演出によって笑いが増幅されるんですね・・・さすが!)


「鎌倉殿」ファミリーが安定すぎた件

そしてスオミの現夫役の坂東彌十郎さん、刑事役の瀬戸康史さん、随所に出没する謎の女役の宮沢エマさん・・・なんとこのメンバーは大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条ファミリーを演じていました。そんな彼らですし、特に瀬戸さん、宮沢さんは最近の三谷作品に多数呼ばれており、最早常連。ということで、双方が三谷ワールドでの楽しみ方を熟知されているので、とにかく彼らが場面に出てくると必ず笑えるという感じでした。中でも瀬戸さんは役柄的に残りの全員がボケまくるので、それにちょいちょいツッコミを入れていくのですが、これがまた面白すぎました。といっても、別に特殊な言葉を挟むのでは無く、ボケ役が呟いた言葉を繰り返すだけなんですが、なぜか瀬戸さんが言うと面白いんですよね。そして彌十郎さんもよかったですね・・・どこか北条の「父上」的なテキトー感が好きでした(笑)。まあ、こうなると兄上(小栗旬さん)、姉上(小池栄子さん)にも登場願いたかったくらいです。

三谷作品ならではの「品」を感じる唯一無二の時間

三谷さんが幼少期から映画やTVが大好きで、特にアメリカ・ハリウッドの作品や海外(特に米国)のテレビシリーズのファンだったことは有名ですよね。そんなわけで、三谷さんの作品はどこかそうした海外テイストを感じることが多々あります。特に今回はご本人もインタビュー等で仰っていますが、メインの詩人の大邸宅などは日本臭の全くしない、アメリカンな雰囲気。調度品などもそうですし、何より「日本語」があまり登場しない(まあ、詩人なのでご自身の作品(←相田みつを風)の文字は度々登場しますが・・・)。私もそうしたテイストが好きなので、画面の随所までワクワクしながら観ていました。

長回しやワンシーンワンセットといった見せ方への好き嫌いか?

あとは三谷作品といえば「長回し」。たしかかつて「THE有頂天ホテル」では「長回し」が宣伝に使われすぎて、若干食指気味でした(だって、そうした映画のテクニックは観る人には関係ないですからね、正直)。が、今回は特に後半の長澤さんのシーンは圧巻です!これは長回しで一気に見せたからこそ迫力あるものになったはずです。たぶん、こうした見せ方への好き嫌いが、この作品に乗れるか否かの別れ道になったのかもしれませんね。もちろん私は大好きでした。

この作品にミステリーを期待しちゃったからか・・・?

そしてもう一つは、この作品が「古畑任三郎」的なミステリー作品だと思って観に行ってしまった方がいたのかもしれないということです。正直、ミステリー要素はそれほどなく、そうしたシチュエーションを楽しむ内容です。だから、本格ミステリーを期待した方にとっては、そちらの要素が全く無かった点で「話が違う!」となったのかもしれませんね。この作品は全編を通じて、「スオミさんを巡る、男たちの悲しいマウント大会」なので・・・笑。←でも、これが笑えるんですよ、本当に。

最後は往年のMGM映画の再来!華麗なるミュージカル

これまた賛否両論あるようですが、エンディングを締めくくる、ヘルシンキ連呼のミュージカルシーン。いいじゃないですか、これ。私は好きでしたよ。未だに頭にこびりついていますからね、「へ・ル・シンキ、ヘルシンキ・・・」。これはウディ・アレンの「誘惑のアフロディーテ」という作品のラストがいきなりミュージカルになるんですが、そんな演出を思い出しました。まあ、今回の作品の場合、もっとしっかりとしたミュージカルシーンで、それこそ往年のMGMミュージカル映画だったり、近年だったら「シカゴ」や「プロデューサーズ」のミュージカルシーンを彷彿とさせる無茶苦茶カッコいいエンディングだったと思います。男性陣もはっちゃけていますし、長澤さんは思いっきり可愛いですし。

まとめ~いいじゃないですか、たかが映画なんだから

「たかが映画なんだから」というのは、ヒッチコック監督が設定が現実離れしていることに不満を募らせたイングリット・バーグマンをなだめるために言ったとされる言葉です。でも、これって本質を捉えていると思いませんか?現実にはあり得ない、だとか、設定がおかしいだの、そんなこと、どうだっていいじゃないですか、たかが映画なんだから。細かいことに目くじらを立てるよりは、2時間気分良く画面上で繰り広げられる、日本屈指の名俳優たちの爆笑演技を見て、楽しい気分に浸る方がいいと思いませんか?なんせ今、日本で一番笑いにこだわっている監督と、彼の元に集まる一流のキャスト、スタッフ陣が集結しているわけですから。ということで、細かいことは抜きにして、ぜひぜひ爆笑の三谷ワールドを多くの人に楽しんでもらいたいと思います!









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