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【言葉】「人から聞いたいい言葉って、聞いている人には分かっちゃう」~イチロー選手米国殿堂入り①
なんだかモヤっとする話題に事欠かない日本。いろいろと変わる時なんでしょうかね、政治もしかり、メディアもしかり、社会全体が何か変革をしていく、もちろんそれが良い方向であれば大歓迎なのですが、うーん、どうなんだろう?「夜明け前が一番暗い」という言葉があるとおり、今がそうであれば良いのですが・・・などと、なんだか浮かない空気を一気に吹き飛ばしたのがイチロー選手のアメリカ殿堂入りのニュースです。
惜しく満票ではなかったということですが、いやいや、殿堂入りってだけで快挙でしょう。野茂選手が道を切り開き、それから何人もの選手がアメリカに渡り、そしてイチロー選手がこのような栄えある栄誉に選ばれる。このあたりアメリカの「懐の広さ」が心地よいですよね、国籍云々関係なく、メジャーリーグで活躍した選手に贈る、というシンプルさ。きっと将来は大谷選手も続くのかな・・・という期待をついしてしまいますね。ということで今回はイチロー選手のインタビューを紹介していきたいと思います。
言葉は言い表せないほどの気持ちです
「振り返るとあまりにも多くの出来事があって。いいことだけではありませんでした。苦しいこともたくさんありましたけど、最終的にここに1歩ずつ近づいていった。そして、きょうこの日を迎えられたことは、ことばでは言い表せないほどの気持ちです」
あれだけのスーパースターでも、アメリカメジャーリーグの殿堂入り、というニュースは「言葉では言い表せないほどの気持ち」なんですね。それだけ野球道を究めた日本のサムライ、イチロー選手にとって栄えある、そして誇らしいことだったことが伝わってきますね。ちなみにイチロー選手の「言葉選び」って独特というか、非常にストレートなんですけど、実に温かいというか人情味のあるところが魅力だなと思っています。結構キツいことを言っているようで、でもしっかりそれは相手に対し考えられた言葉だったりしていて、本当に頭の良い方だな、と思います。
人の思いがこんなにも刺さるというか
「シアトルのファンの方々に対しては、2018年にシアトルに戻ってきたんですけど。その時に迎え入れてくれた温かい気持ち。これはもう、いろいろ今回振り返ってみたんですけれども、18年の開幕戦は僕のトップいくつでしょうかね、トップファイブに入るぐらいのハイライトでした。人の思いがこんなにも刺さるというか。自分がやったことというよりも人のその気持ちがすごくこの年になったからなのか、経験を経てなったのか、そこは分からないですけど、特別な関係になりましたね、あの2018年は」
イチロー選手にとっていろいろなシーンが思い出としてあると思いますが、この2018年にシアトルマリナーズに復帰したことが、人生のトップファイブに入るハイライトだったそうです。特にメジャーリーグでは自分たちの地元球団への愛情というのが格別であると思います、ニューヨークならヤンキースとメッツ、ロスならドジャースなど。そういう意味ではシアトル市民にとって大スターのイチローが帰って来る!となったら、そりゃ大歓迎ですよね。ちなみに現役引退を発表した東京ドームでの試合、ならびにその後のエンドレス会見も今や伝説ですね。トップファイブに入っていますかね?あとはWBCでの優勝シーンのイチロー選手も忘れられない名シーンですよね。
クーパーズタウンには現役の選手にもぜひ訪ねて欲しい
「もう1点いうと、現代に生きていると生活しているだけでストレス、特に今はそうですよね、生きているだけでストレスがたまる社会になりました。そういう中で野球だけの街があって、自分が現役でプレーしている選手が、過去の気持ちがいい思い出があって、またそこを再び訪れて、訪ねて、心が洗われるというか、そういう記憶もありました。だから僕はクーパーズタウンというのは、現役を引退してから行く場所というよりも現役中に行ってほしい場所なんですよね、経験上。今の選手たちにもぜひ、訪ねてほしい」
いい表現ですね・・・「過去の気持ちが、良い思い出会って、またそこを再び訪れて、心が洗われるというか・・・」というフレーズ。私にとってはどこだろう?皆さんにとってはどうですか?たしかに冒頭にも触れましたが、とにかくストレスフルな現代。だからこそ、自分にとってのこうした「心が洗われる場所」があるってことは素晴らしいですよね。ちなみに個人的にはこうしたイチロー選手のプライベート感あるコメント、大好きです(笑)。そして以下のトヨタ会長の「洒落」にも笑ってしまいました(笑)。
不完全であるのはいいな
「1票足りないというのはすごくよかったと思います。しかもジーターと一緒。これも数字的な話なんですけど…足りないものを、これって補いようがないんですけど、努力とかそういうことじゃないからね。ですけど、いろいろなことが足りない、人って。それを自分なりに自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思うんですよね。これとそれはまた別な話なんですけど、やっぱり不完全であるというのはいいなと。生きていくうえで不完全だから進もうとできるわけで。そういうことを改めて考えさせられるというか、見つめ合えるというか、そこに向き合えるのはよかったなと思います」
敢えて言わせて下さい。イチロー選手を選ばなかった1名!どや!このイチロー選手のコメント!(笑)。ちょっと卑屈な日本人的には、これはアメリカの(というか人間の)了見の狭さだと思うんですけど、どこかに「アメリカ人でもないヤツを満票なんかにするもんか!」という、気持ちが絶対になかったとは言えないと思うんですよね、もし逆の立場だったらそう思いますもん、器の狭い私なら(笑)。ですから、そういう世界で戦い続け、1票欠けたとはいえ、これだけの票を集めて殿堂入りですから、凄いとしか言い様がありません。そしてこの謙虚な素晴らしいコメント。これもまた「道徳」の教科書とかで使いたいレベルの名フレーズですね。
人から聞いたいい言葉って、聞いている人には分かっちゃう
「僕の中から出てくることばを選んでいました。じゃないと伝わらないから。人から聞いた、いい言葉とかいい話とかって、いいんだけど、それってこうやって公の場で僕の言葉じゃない言葉で話したとしても、聞いている人は分かっちゃうんですよね、不思議なことに。僕の中から湧いてくることば、それを表現しました。」
実は今回、この記事を読んでいて、一番刺さったのがここでした(もちろん他にもいいコメントがたくさんあるんですが)。先ほど、イチロー選手のコメントのことを触れましたが、まさにその根底にはこのような考えがあったんですね。やっぱり借り物の言葉や話だと、どこまで言っても「他人のもの」なので、相手にダイレクトに届いているようで、どこか届いていない。例えるなら、ある式典などで紙に書かれた文面を読み上げる人と、拙いかもしれないけど自分の言葉で相手に伝えようとする人、どちらが印象に残りますか、って話にも通じると思いません?イチロー選手は言葉を伝えるプロではありませんが、やはり記者とのやりとりに始まり、メディアでの伝播において忸怩たる思いもあったはず。そうなると「どうやって自分の本当の気持ちを伝えるか?」について考えていかれたのですしょう。そして到達したのがこの「僕の中から湧いてくる言葉」を伝える、ということだったのかもしれませんね。