【言葉】「この世には命を懸けて戦うに足る尊いものがあるんです」ロード・オブ・ザ・リング~二つの塔より
前回に引き続き、映画「ロード・オブ・ザ・リング~二つの塔」にまつわるエピソードになります。前回は初4DXでテンションが上がり、しかも上映されたのが「スペシャル・エクステンデッド・バージョン」だったということも相まって、あれこれ感じたことをズラズラを書き綴った感じでした(懐かしすぎたんですよ・・・本当に)。今回は毎回感動して涙してしまう、ラストの名シーン&名台詞について語っていきたいと思います。
「この世には命を懸けて戦うに足る尊いものがあるんです」
ご覧になった方には最早説明不要な名シーンの一つですよね、映画のラスト、ゴンドールの要塞都市オスギリアスにて、指輪の魔力に侵されダークサイドに陥りそうになったフロドを体を張って助けたサムが、フロドに対して自分の気持ちを伝える感動のシーンです。中つ国で最強の力を持つ指輪を捨てるという誰もが成し遂げられないであろうミッションに挑む、中つ国の中でも最も弱い種族ホビットの二人。長くそして辛い過酷な道のりを、しかも本当に完遂できるかも分からぬ状況で、時に互いにぶつかりながらも(←ま、ほぼほぼフロドが指輪の影響でダークサイドに陥るんですが)献身的に支え続けるサムの心うちを捉えた名シーン&名台詞です。
2002年当時、丁度前年にアメリカ同時多発テロが発生し、何かと世界が不安定になっていた時期でした。たしかタイトルの「二つの塔」というネーミングに対しても、ニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーを想起させるから変更すべきだ、などという声もあったとか(もちろんピーターたちは変更する気は毛頭無かったそうですが)。そして今回(2024年)もまた世界を見渡すと、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエル情勢、中国による台湾有事、そして北朝鮮・・・と、相変わらず混沌としており、全く世界は変わっていないんだな、と呆れるというか、悲しくなると言うか・・・という気持ちになりましたね。
監督・脚本チームのコメンタリーを何度となく観ているのですが、たしかこのシーンも脚本のフィリッパ・ボウエンとフラン・ウォルシュが相当やりとりをしながら、ふと思いついた台詞をまとめていった、ということが語られていたように思います。監督のピーター・ジャクソンも含め、とにかく大の原作「指輪物語」ファンの3人なので、脚本作成段階のみならず、撮影中、そしてさらに1年後の追加撮影の時までずっと脚本を修正し、より良いものを作り出していったエピソードがあったように記憶しています。それだけ頭の中でずーっとブラッシュアップしていった結果、このような時を超えても変わらず感動を呼ぶ名シーンができあがったのでしょう。
この世には命を懸けて戦うに足る尊いものがあるんです
昨年末に観た、映画「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」以降、大東亜戦争、特に戦争末期の特攻隊に関する資料館などを回ったり、書籍を読んだり・・・と自分の中で興味関心を持つテーマとなっているわけですが、やや無理矢理なこじつけにはなりますが、このサムの台詞は、先の大戦を戦った兵士の方々が仰っていたとしても違和感ない、と言いますか、きっとそういうお気持ちをもって参加された方もいらっしゃるのかな、と思いました。そう考えると、西洋とか東洋とか、それこそ古今東西関係なく、人間の「心」の部分には共通点があるのかな、とも感じました。そもそも原作者のJ・R・Rトールキンは第一次世界大戦に従軍し、戦争の悲惨さを体験され、そうした経験も含めてこの物語に込めた思いもあるのだと思います。
誰もが辛く、逃げ出したい、そう思っている状況であったとしても、
この世の中には命を懸けて戦うに足る尊いものがある。
言うまでもなく、原作も最高に素晴らしいのですが、映画もまた原作の世界観を余すところなく映像に収め、さらに原作の雰囲気を崩すこと無く、こうしたドラマチックな名シーンを作り上げることができたからこそ、映画史に残る不朽の名作の一つになったのでしょう。まさに製作チーム(もちろんキャストもですが)の熱い思いの結晶と言えるのではないでしょうか。
最後に英語版もご紹介したいと思います。