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危機の時代にこそ増す「信頼・利他・互恵・徳」の重要性~大垣昌夫教授の考える「共同体メカニズム」

今回も引き続き「信頼・利他」にまつわるテーマで進めていきたいと思います。たまたま目に留めた雑誌記事を参考にしてまとめているわけですが、きっと気に留めたということにも、何かの「縁」があるんだと思います。第一は自分自身に不足しているスキルであること、そして二つ目には「今こそ、このスキルが世間一般で広まると良いのではないか?」と考えているんだと思います。ま、私なんぞが世間一般を語るなんて烏滸がましいにもほどがあるんですけどね(笑)。まずは自分のスキルアップのためにもこのテーマについて考えてみたいと思います。



「徳」とは信頼や利他性、互恵性による人格的な強み

信頼・利他性・互恵性信頼・利他性・互恵性なしに共同体メカニズムが働かないわけではないが、信頼や利他性や互恵性が増加していけば共同体メカニズムをさらに活発化するだろう。利他性・互恵性や他の人々からの信頼に値する信頼性を持って、共同体や社会に貢献する人格的な強みは「徳」と呼ばれる。

2024.12.3週刊エコノミストより抜粋

大垣教授によると「共同体メカニズム」とは、家族や地域などでの協力を基礎とした「少なくとも一人が自発的に協力を申し出て拒否されない仕組み」のこと。経済では「需要と供給を基礎とした価格の合意による『市場メカニズム』」と「合意なしに強制できる『権力メカニズム』」があり、これらと組み合わせることで参加者自らが人生の主役となり、良い影響力を周りに与えるのではないか、という考えだそうです。

なかなか難しいんだと思いますが、これら二つ(共同体メカニズムと権力メカニズム)の融合が出来れば、社会がもっとより良くなっていくような気がしますね。

マーティン・セリグマンの「ポジティブ心理学」

1998年に「ポジティブ心理学」を創設したマーティン・セリグマンは病理や人の性質の暗い面ではなく、人の良い側面や優れた側面を研究した。彼の第一の目標の一つは、徳の診断マニュアルの作成だった。セリグマンらは儒教、道教、仏教、ヒンズー教、アテネ哲学、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教での徳を調べ、多様な文化と歴史の中で、多くの徳が共通していることを発見した。

同上

「ポジティブ心理学」についてはいくつか著書を読んだ覚えがありますが、後半に書かれている古今東西の宗教において「徳」が共通している、という記述が面白かったですね。人間、どこで生活していても、コアの部分は変わらないのかもしれませんね。たしかに古典作品を読んで、今に通じる考えを学ぶことも多いですし。それに「ことわざ」についても日本のみならず、世界各地で似たような表現が用いられているなんて例も枚挙に暇がないですよね。


徳を獲得するためには実践が重要

徳を重視した倫理学のアプローチは徳倫理と呼ばれる。代表的な哲学者はアリストテレスで、得を獲得するためには理論を学ぶだけでなく、実践が重要であることを強調した。現代の徳倫理学の主要な哲学者であるジュリア・アナスは同様に実践が必要であることを強調し、徳倫理の幸福概念である「エウダイモニア」はすべての徳を完全にすることであるとしている。

同上

ちょっとこのあたりは少し難しいのですが、ここではシンプルにあの哲学者アリストテレスが「徳を積むためには実践が大事だ」と考えていたということに興味を持ちました。「論語読みの論語知らず」ではないですが、口ではなんとでも偉そうに語れても、実践が伴っていない人って世の中にごまんといますよね(自分もそうなっていたりして・・・)。すでに古代ギリシャの時代からそういうことが語られていたんですね。ちょっと話が飛躍するかもしれませんが、徳を積む≒EQを高める、ということにもつながるのではないでしょうか?

幸福になるには財産や地位よりも人間関係が重要

心理学者のマーク・シュルツらのハーバード大学の80年以上にわたる2000人を超える人生の追跡調査によると、幸福になるには財産や地位よりも人間関係が重要である。徳を獲得していき、より良い人間関係を作って深めていくことが幸福につながっていくと考えられる。

同上

正しくは「財産も地位も人間関係も」重要だ、ということなのかな、と思います、本音では。もちろん調査等ではこうした本音トークは難しいでしょうから、上記のような綺麗事になるのでしょうが、本当であれば人間は欲張りですから、あれもこれも・・・という感じなのかな、と思います。やっぱり財産が無ければ、何かを始めることが出来ませんし、地位が人を作る(逆も然り)ということもありますからね。と、同時に人間関係を維持する努力をする。これを怠ると、結果的に財産や地位目的で近づいていただけの空虚な人間関係になり、両者を無くした瞬間に離れていく・・・という悲しい結末になるのではないでしょうか。

サーバント・リーダーシップの重要性

共同体メカニズムの活用のためには支配型のリーダーシップよりも、リーダーが共同体のビジョンを明確にし、メンバー一人一人が貢献できるように奉仕し支援するサーバント・リーダーシップが有効であろう。サーバント・リーダーシップは謙虚にメンバーの声に傾聴する節制の徳や、メンバー一人一人を大切にする人間性の徳を持つことで、より良いリーダーシップを発揮できる。

同上

だいぶ以前からサーバント・リーダーシップの重要性は注目されていますよね、私もいくつか著書を読み、マネジメントの参考にしようとした時期がありました。本来、リーダーはこうあるべきだ、と思います。ただし、そのためには日々努力と研鑽が必要であり、サーバント・リーダーシップの真似事を行う上では、なかなか自分を律するというのが大変だと思いました。やっぱり数字目標だったり、日々の些末なトラブル云々で心が平常出ない場合、悲しいかな支配型リーダーシップが顔を出してしまうんですよね・・・情けないことに。絶対的に大事であることは分かっていながらも、なかなか実践の難しいサーバント・リーダーシップ。古今東西問わず、この手法で成功されたリーダーというとどなたになるのでしょうか?私にとってこうありたい、と思うリーダー像の一つです。

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